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あらゆる傷を癒やし、失われた肢体さえも再生させるという古代文明の秘宝「命の水」。
アリアナはその伝説に、最後の希望を託した。
人跡未踏の原生林に踏み入り、襲い来る魔獣の群れを爆裂魔法で塵に変えながら、彼女はついに神話の深淵に眠る遺跡へと到達した。
しかし、玉座の如き祭壇に安置されていたのは……。
「……え、ウソでしょ。そんなはずがないわ」
期待に震える指で取り上げた聖なる容器には、一筋のひび割れが走っていた。
かつて奇跡を湛えていたであろう至宝の中身は、数千年の歳月の果てにとうに流れ出し、跡形もなく蒸発していたのだ。
「一滴でいい……。たった一滴、底に残っていればいいの。……ああ神様! 私は鼻を削がれたあの日から、一度だって貴方を呪わなかったのに! 奇跡を信じて、ここまで這い上がってきたのに! ……空っぽ。本当に何もないのね。私の人生と同じだわ」
周囲を見渡せば、国を興せるほどの財宝や、伝説級の魔剣が転がっている。
だが、アリアナにとってそれらは、道端の石ころ以下の価値もなかった。
「これじゃない……。私が欲しかったのは、こんなガラクタじゃないっ!!!」
◇
未知の遺跡の発見という歴史的快挙は、冒険者としてのアリアナの地位を不動のものとした。
冒険者ランクはついにSランクに到達。
ギルドの英雄。生ける伝説。
しかし、降り注ぐ賞賛の声とは裏腹に、彼女の心は底なし沼へと沈んでいく。
冒険者になった当初、彼女は信じていた。
最強になれば、何かが変わる……と。
力がすべてを解決し、いつかこの「穴」さえも埋めてくれるのではないか……と。
だが、強さを積み上げれば積み上げるほど、突きつけられるのは残酷な真理だけだった。
「結局、いくら強くなっても、失ったものが戻るわけではないんだわ。そんな単純なことに、今さら気づくなんて……」




