第11話:十五の星々と、個性豊かな面々
試験を終え、俺たちが案内された「第一クラス」の教室は、他のクラスに比べて人数が少なく、静謐な空気が流れていた。
この学校の「第一クラス」は学年を問わず、スキルの適性や魔力の質が近い生徒が集められる少人数制のクラスだ。現在は俺たちを含めてちょうど十五名。一学年から六学年までが同じ屋根の下で学ぶ、兄弟のような、あるいは徒弟制度のような不思議なコミュニティだ。
教壇に立ったのは、黒い制服を隙なく着こなした男――ヴォルガン先生。
かつては王の守護者『王域守護八法』の候補にすらなったというこの国屈指の実力者だが、その威圧感を今は優雅な微笑みの下に隠している。
「さて、全員揃ったな。今日からこの十五名が家族だ。まずは自己紹介から始めよう。上級生から、新入りに手本を見せてやってくれ」
その言葉を合図に、教室の空気が動き出した。
1. バルト・ガンドール(六年生)
「俺が最年長のバルトだ! スキルは**『剛体』**。見ての通り、体には自信がある。困ったことがあれば俺の背中に隠れな!」
(ヒルス評:絵に描いたような熱血筋肉先輩だ。暑苦しいが、このクラスの防波堤としては頼りになりそうだ)
2. レイラ・ウィンディア(五年生)
「……レイラです。スキルは**『絶対零度』**。あまり近づきすぎると、凍えてしまうから気をつけて」
(ヒルス評:銀髪のクールビューティー。言葉は冷たいが、新入生を気遣う優しさが微かに透けて見える)
3. エルナ・ルミナス(四年生)
「エルナよ。スキルは**『精霊の囁き』**。風がいろんなことを教えてくれるの。……ふふ、今年の新入生は、なんだか面白い音がするわね」
(ヒルス評:出た、金髪エルフ美少女。前世のファンタジー好きの血が騒ぐが、その微笑みはどこか全てを見透かしているようで油断できない)
4. ジーク・フレイム(四年生)
「俺はジーク! スキルは**『爆裂』**だ! パーッと派手に行くのが好きなんだ。よろしくな!」
(ヒルス評:バルト先輩とは別のベクトルで騒がしい。クラスのムードメーカーといったところか)
5. ユーリ・クロム(三年生)
「ユーリです。スキルは**『解析』**。皆さんのスキルの効率的な使い方を研究するのが趣味です。後でデータを取らせてくださいね」
(ヒルス評:典型的なインテリ眼鏡。味方なら心強いが、秘密を抱える俺にとっては天敵に近い)
6. メイ・リン(三年生)
「メイ・リンよ。スキルは**『瞬歩』**。……ヒルス君、さっきから姿勢が全く崩れないわね。あなた、何かやってる?」
(ヒルス評:小柄な武闘派美少女。勘が鋭すぎる。この国で「武術」の概念に一番近いのは彼女かもしれない)
7. テオ・アース(二年生)
「テオだ。スキルは**『地形改変』**。……まあ、庭いじりみたいなもんさ。よろしく」
(ヒルス評:二年生にしては達観している、落ち着いた職人肌の少年だ)
8. リプリー・バブル(二年生)
「リプリーだよー! スキルは**『拘束泡』**。ふわふわの泡で包んじゃうからねっ!」
(ヒルス評:常に落ち着きがない、お転婆な少女。シャボン玉の弾ける音が心地いい)
9. カイン・シャドウ(二年生)
「……カイン。『影縫い』。……終わり」
(ヒルス評:影が薄いどころか、本当に背景に溶け込んでいる。忍者のような雰囲気だ)
10. ソフィア・ヒール(二年生)
「ソフィアと申します。スキルは**『神聖光』**。怪我や悩みがあれば、いつでも相談してくださいね」
(ヒルス評:このクラス唯一の良心に見える。聖母のような微笑みだが、魔力の純度は化け物級だ)
ここから、今年異例の数で入った新入生の番だ。
1. アルド・イグニート
「アルドだ。スキルは**『暗黒物質』**。……父は『王域守護八法』だが、俺は俺の力でこの国の闇を統べる」
(ヒルス評:名門の重圧を背負った孤高の天才。一見傲慢だが、その眼差しは誰よりもストイックだ)
2. ゼクス・ボルト
「俺はゼクス! スキルは**『雷霆』**だ! 一番強い魔法は雷だって、俺が証明してやるよ!」
(ヒルス評:自信に満ち溢れた、典型的な「主人公」タイプの少年。眩しすぎる)
3. マリエル・テラコッタ
「マリエルです。スキルは**『ゴーレム』**。この子はポチ、私の親友なの。よろしくね」
(ヒルス評:傍らの石の犬を撫でる姿は年相応に可愛いが、そのゴーレム、硬度が鉄並みじゃないか?)
4. カイ・グラビティ
「カイだ。スキルは**『引力』**。重力に従うのは退屈だろ? 俺が世界をひっくり返してやるよ」
(ヒルス評:不敵な笑みを浮かべる反骨心の塊。この国の「平和」に馴染めなそうな匂いがする)
5. リナ・フォルトゥナ
「リナ・フォルトゥナです! スキルは**『清流』**。少しでも皆さんの助けになれるように頑張ります。」
(ヒルス評:俺の自慢の幼馴染。緊張しているが、その声には特訓で培った自信が宿っている)
最後に、俺が立ち上がる。
「ヒルス・ノーブルグレンです。スキルは**『反復継続』**。同じことを地道に繰り返すのが得意です。王様への感謝を形にできるよう、皆さんに追いつきたいです」
(自己評:よし、完璧な「謙虚なモブ」を演じられたはずだ。……が、ヴォルガン先生の目が笑っていないのが気になる)
「いい自己紹介だった。個性こそがエデンの宝だ」
ヴォルガン先生がパン、と手を叩く。
「さて、座学はここまでだ。第一クラスの最初の伝統を行おう。……外へ出ろ。お互いのスキルを実際にぶつけ合う『親睦の実技』の時間だ」
穏やかな言葉とは裏腹に、先生の魔力がピリリと教室を震わせた。
エルフ、守護八法の息子、そして隠れチートの俺。
この十五人が織りなす「学校生活」は、一筋縄ではいかない予感がした。




