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滝の裏の秘密基地

作者: TOMMY
掲載日:2025/11/12

「……まさかな」

僕はつぶやきながら覗いた。

唖然として、口が勝手に開いた。

目の前の光景を理解するのに、少し時間がかかった。

もしやと思って来てみれば、滝の裏には、文字通りの秘密基地があった。


滝の轟音に負けじと、心臓が激しく打ち鳴らす。

湿った空気の中、僕はおそるおそる足を踏み入れた。

天井は低く、水滴がポタポタと落ちている。

懐中電灯をつけ、壁をなぞる。

金属製の棚がずらりと並び、そこにはノートや配線、古びた地図が詰まっていた。


ノートにはびっしりと暗号のような文字。

銅線で繋がれた装置の先には、マイクのような部品がある。

地図の上では赤い線が幾重にも交差していた。

まるで、何かを記録しようとしているかのように。


全身の皮膚が波立つ。

僕はリュックを降ろし、カメラを構えた。

──ガタッ。

奥から物音がした。


息が止まる。

汗の一滴が頬をゆっくりと滑り落ちる。

見つかれば捕まるかもしれない。

身体は硬直し、視線すら動かせない。

無限の時間が過ぎたように思えた。


やがて、震える指先がわずかに動く。

僕は懐中電灯を正面に向けた。

そこには、ひとつのスピーカーがあった。


古びた黒い箱。

ケーブルの先が床を這い、先ほどの装置へと繋がっている。

僕が立ち上がると、「ガタッ」とまた音が鳴った。


「……ははっ、子供騙しかよ」

思わず声が出た。


──次の瞬間、スピーカーが答えた。

「あははっ……子供騙しかよ」


笑いが反響し、空気が震える。

その瞬間、視界がゆらりと歪んだ。


金属の棚は木製の玩具棚に、天井は青空の模様に、

冷たい空気は柔らかい陽だまりに変わっていく。

そこは、楽しげな子供部屋だった。


僕は目を見開いた。

今の変化……僕の“声”がきっかけだった。

胸の奥で何かがざわつく。

「これは……」


恐怖が首筋を撫でる。

「ひっ」

思わず、息を呑むような声が漏れた。


スピーカーが反応する。

「ひっ……」と怯えた声が返る。

その声が空気を震わせ、部屋の色がみるみる褪せていく。


壁がひび割れ、青空は黒く溶け、家具は歪んで形を失った。

古びた人形がこちらを睨み、影が壁から這い出してくる。

ひとつ、またひとつと、恐怖が形を取っていく。

光が、音が、匂いが、僕の怯えに合わせて脈動していた。


僕は悟った。

この部屋は、僕の声で世界を描いている。

笑えば笑いが、怯えれば恐怖が、形になっていく。


最初に見た“秘密基地”も、たぶん、僕が作ったものだ。


──もう、何も言えなかった。

沈黙だけが、ゆっくりと部屋を飲み込んでいく。

息をするたび、闇が形を変えていった。

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