白痴
蜃気楼
という名で呼ばれていた色街に
夜の虹が架かって照れていた
だれかのおはこが耳障りな雑音に聴こえ
ふと過去の
醜聞まみれの人生を想い出させる
夜のうわさばかりがまるで
SNSのように拡散する街
なぜこんな風になってしまったか
この硬いほおにこれから
やさしい風の奏でる微笑みは
いつまで待っても吹きはしないか
そんな簡単に語るなと教えられた
絶望という言葉の意味を問う
おき捨てられたおとといの
流木みたいな悲しみをどうすればいいのか
いったいどうすればいいのか
造られたしあわせがガラクタにみえる街
優雅に羽ばたく白鳥たちが闊歩する夜
彼女のことを《最果て夢》と呼んではダメか
朝になればカラスが出て
蜃気楼の夜の虹のなれの果てを啄むだろう
僕は誓おうきみよ、白痴のきみの瞳を守る
折れることない意志でありつづける