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人数の増えた作戦会議

 午後になり、私達は待ち合わせしていたショッピングモールのフードコートに向かうと、既に席を確保してユキちゃんがコチラに気付いて手を振ってくれていました。


「ヒジリちゃん、こっちよ。ってあれ? 誰か一人増えてる?」


「あ、こちらの方はタツミ君のお兄さんの友人の『八雲 颯太』さんって言うの。ちょっと今回の件でアドバイス貰えればと言う事で、一緒に来てもらったの。」


 軽く紹介すると、ユキちゃんはソウタさんの服を一通り確認してからTシャツの部分に目が止まっています。ヤッパリそこ気になるよね。


「ええっと、初めまして。私の名前は『三上 悠輝』です。宜しくお願いします。」


 ユキちゃんも微妙そうな顔をしながら立ち上がって挨拶すると、ソウタさんも軽く自己紹介をして全員が席に着きました。


「ところでソウタさん……で良いのかしら? そのカマチョとか書いてるTシャツって普段から使ってるのかしら?」


 流石に容赦無く初っ端からブッコんで来ました! 何となく予想は出来ていましたけど、大丈夫かなぁ……


「ん? ああ、他にも色々有るけどその時の気分で使っている。なので今日の気分はこれです。」


「ソウタさん……初対面の女性に普通に言ってる時点で引かれますって。むしろ合コンとかもそのノリなんですか?」


「当り前じゃないか、後から思っていたのと全然違うとか言われる方が面倒臭い。だったら最初から自分の素で話した方が良いだろ? 別に化かし合う為にそういう出会いの場を求めているんじゃ無いからな。」


 私とタツミ君が呆れていると、ユキちゃんだけは少し違ったリアクションをしています。


「まぁ確かに、正直でありのままを最初から見せるのは大事よね、良く解るわ。後から後出しの様に嫌な面とか癖を暴露されても、『嫌われたく無かったから』とか言う奴より全然信用できるわ。」


「お、話が分かる子で良かったよ。あ、でも犯罪者にはなりたく無いので未成年は対象外だからな?」


「勝手に変な方に話を持って行かないで! 別にソウタさんに惚れるとかなんて有りませんから。ただ、考え方には賛同できるってだけよ。」


「まぁ、最初から感性が違い過ぎると言う事で話にもならないよりは全然助かるな。で、相談者ってのはユキちゃんだっけ? この子の事なのかい?」


 私とタツミ君が即座に打ち解けている二人に呆気に取られていると、ソウタさんがコチラに話しかけて来ました。


 しかし、陽キャ同士での相性なのでしょうか? 気安く話す様になるのが早いですね、そう言えば私も珍しく人見知りを発動せずに話せている様な? これがソウタさんの持つ雰囲気と言う事なのでしょうか?


「いや、ユキも協力者です。昨日から参加してもらったので今日は二人にどうしたら良いかの相談も兼ねています。」


「ナルホド、改めて宜しく。ではどういう状況なのか聞いて良いかな?」



 そうして私達は昨日ユキちゃんに話した事をソウタさんにも説明すると、途中からソウタさんも同じく微妙そうな表情になって行きました。


「なぁ……もうそれ結婚前提のお付き合いじゃねぇの?」


 うん、ユキちゃんと同じ意見が出て来ました。喰いつく様にユキちゃんも自分の意見を述べて二人が意気投合しています。


「と言う事で、しっかりくっ付けちまおう作戦をしていた訳なんですが……取りあえず、ユキのお母さんは何て言ってた?」


 話が終わって、改めてタツミ君がユキちゃんに聞くと、呆れた表情で話し始めてくれました。


「ヤッパリ、いびつな関係に見えるって。二人の話だけを聞くと問題が有るのはナギの方じゃ無くてレン君の方じゃないかって。いや、ナギも言い切らないのが悪いかも知れないけど、それでもかなり近い事は言ってるのにちゃんと返事をしないのは何か理由が有るんじゃないかって。」


「二人じゃ無くてレン君の方に問題があるの?」


 私が不思議そうな顔をしていると、ソウタさんも頷いてる様子です。


「恐らくその意見は正しいな。俺だったら同じ大学行きたいから勉強教えてくれとか言われたら、どんな意味か位はすぐに察するが……ちなみにタツミ君。レン君と言う友達は浮気する様な器用な奴なのか?」


「いえ、それは無いです。基本女性関係にはクソ真面目です。そもそも2次元信者だったアイツが初めて異性として興味を持ったのがナギです。それに俺と話している限り他の女性の影なんて全くと言っていい程見当たりません。」


 タツミ君の意見を聞いてソウタさんとユキちゃんが考え込んでいます。確かに私達は二人から直接話を聞いているので、そういう発想になる事自体有りませんでした。と言うか有ったら人間不信になれますけどね……


「ねぇ、ヒジリちゃん。ナギはレン君以外に興味有りそうな男子とか居るの?」


「え? 見た事無いかな……ユキちゃんもこの前見た通りレン君への愛がちょっとと言うか……かなり重いの分かったでしょ?」


「確かにそうね……それにあの子の場合は一途過ぎると言うか下手したらストーカーになりかね無さそうだしね。」


 ウッ……すいません、ストーカー行為していた女がここに居ます。


 そんな私の表情を察したのかユキちゃんが慌ててフォローを入れようとしていますが、この場では下手な事も言えないのでどうしようと言った表情をしています。


「ふむ、だとしたらそのレンと言う奴の情報がもっと知りたいかな? タツミ君から見てのレン君と、ヒジリちゃんやユキちゃんから見てのレン君を正直に教えてくれないか?」


 真面目な表情でソウタさんが情報を集めて考え始めました。


 小学生の頃からタツミ君と剣道をしている事。

 照れながらもそれなりに好意は示している事。

 肝心なところでヘタレる事。

 その他、今までの色々な昔話をタツミ君が包み隠さずソウタさんへ説明しました。


「ふむ、何となく解って来たかな……ちなみにレンの剣道の試合の動画とか有るか? 剣道ってのは結構本人の性格が反映されるからな。」


「え? 颯太さんって剣道やっていたんですか?」


 ユキちゃんが意外そうな表情をしています。


「ああ、公式戦でうちの兄さん相手に黒星付けた事が有る位だからな。」


「え!?」


 タツミ君の説明に今度は私が驚いた声を上げてしまいました。あのお兄さんの負け試合なんて本当に片手で収まる位しかないと聞いていたのですが。


「そんなに二人とも驚かないでくれよ……一応これでもインハイもインカレも上位だし、優勝経験だって有るからな? まぁ、就職したらそんな肩書なんて何の役にも立たないけどな。」


 ソウタさんは自虐的な笑いをしていますが……そう言えば何の仕事をしてるのかしら? 剣道とは無縁の仕事なのでしょうか?


「役に立たないって……じゃあ今の仕事は何をしているの?」


 ストレートにユキちゃんがツッコんで来ました! 本当にこの子は物怖じしない子です!


「俺の仕事はフリーライターをしている。金が無くなったら実家でバイトしたりしてな。」


「実家でバイト? 実はお坊ちゃん?」


「いや、どっちかと言うと坊さんだ。実家は寺だよ。ただ家は兄貴が継ぐから俺は気ままな次男坊さ。だが、その分説法とかの座談会に強制参加させられてきたからそう言うのも少し慣れているだけだ。」


 意外な話過ぎて私は固まってしまいましたが、この人の懐にスッと入って行くのはそう言うので慣れているからなのでしょうか?


「だったらカウンセラーになった方が良かったんじゃないですか?」


 タツミ君が言うとユキちゃんも同意しています。


「人の職業にとやかく言う気は無いけど、何故かフリーライターよりはそっちの方が向いている気がするわ。」


「そうか? 俺はこの仕事気に入っているぞ? まぁそこは人の感性次第だからな。さて、本題に戻ろう。レンの試合動画誰か持って無いか?」


 そして私とタツミ君はお互いに持っている試合動画を見せる事にしました。



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