作戦会議
『と言う事で、同じクラスの三上さんをナギちゃんとレン君をくっ付ける作戦に引き入れようかと考えたんだけど良いかな?』
『二人の事を知っていて、尚且つ押しが強いのか……いざと言う時に強引に進めてくれる可能性も有るなら良いかもな。』
『うん、私達もそんなに押し引きに詳しいわけじゃ無いから、むしろ三上さんの様な人が居たら効率的に進むかもと思って。』
『了解、では今度の土曜日の午後にでも何処かで会って話してみよう。』
『ゴメンね、ありがとう。』
帰宅した私はすぐにタツミ君とスマホで連絡を取り、ナギちゃんとレン君をくっ付ける作戦に巻き込む形で紹介する事にしました。恐らくユキちゃんの押しは強いでしょうから私も油断は出来ませんが、ある意味自分の退路を塞ぐつもりで頑張るしか有りません!
『ところで……ヒジリと同じクラスの三上さんって誰?』
あ~ヤッパリ予想どうりの返事が返ってきました。図書館で一緒に半日いたのにまだ覚えられて無かったんだ……。
『うん、会った時にしっかり紹介するね。』
『了解、すまないが頼む。』
うん、紹介した時のユキちゃんが膝から崩れ落ちる姿が目に浮かびますね……何でこんなにも覚えてもらえないんでしょうか? 不思議過ぎます。
――――――――――翌日―――――――――――
「と言う事で、土曜日の午後って大丈夫かな? 少し本題からは外れるけど、実はあの二人をくっ付ける目的で私達は知り合ったの。だからそこにユキちゃんも加わると言う話で進めて良いかな?」
「了解したわ。しかし……見ててじれったい事をしていると思ったけど、ヒジリちゃんよりもナギと鳴海君の方がもっと上だったのね。」
「ところで、ヤッパリ移動しない?」
「何でよ? 別にやましい事をしてないし、聞かれたくない話はちゃんと声量を考えるから大丈夫よ。」
昼休みに私とユキちゃんは初めて教室で机を向い合せてお弁当を食べているのですが、周りの人達からの視線が気になります!
恐らく学内有数の陽キャラであろうユキちゃんと、同じく学内屈指の人見知りの私の組み合わせが珍し過ぎたのでしょうね……だから屋上か非常階段でってお願いしたのに!
「ううぅぅぅ……こんなに見られてると生きた心地がしないよぅ……。」
「ヒジリちゃんは元が良いんだからもう少し堂々としなさいよ。そうすればもっとモテる様になるわ。間違い無くね!」
「別に興味が無い人に好かれても迷惑なだけだよぉぉぉぉ……好かれるのは本命だけで良いです。」
半泣き状態でお弁当を食べているとユキちゃんが複雑そうな顔をしています。
「確かに……私もモテたとしてもその相手が良い男じゃ無かったら嫌よね。それに私も告白された事は有るけど、どれも微妙だったからその考えは正しいと思うわ。」
「何でそんなに微妙そうな表情なの?」
何か私の言う意味合いとは違う意味で言ってる気がします。聞き返すと遠くを見る眼で外を見てます。
「そうね、学内で有名なストーカーとか、ネクラ男とか、下ネタ全開のウザい男子からのラブレターを下駄箱に入ってた時の衝撃がね……どう対応するのが正解か解らなくてしばらく動けなかったわね。」
「えっと……普通の人はいなかったの?」
「ふふふ……ホラ、私ってリアルラックが低い様でね。普通の男子は逆に陽キャラ過ぎて近寄って来ない様なのよね。でも今更自分の性格を変える事も出来ないしね。」
哀愁を漂わせていますが、私と真逆過ぎて理解するには苦労しそうな気がします。
「ところで、昨日のナギが言っていた私の過去の情報も含めて随分と調べていた様だけど、どこまで知っているのか教えてもらって良いかしら?」
「え? ええっと……どこから話した方が良いかな?」
「最初からね、その代わり私が知っている話も全部話すからここはお互いフェアに情報を交換しましょう。出来ればどこに惚れたのかも聞きたいわ。」
ん~ユキちゃんの場合は当たって砕けろが多すぎて情報が有るとは限らない気がするのですが……もしかしてと言う事も有りますから、話して差支えの無い範囲で話す事にしましょう。
と言うか最後にサラッと爆弾置きましたよね? え? それ今話さなきゃいけないんですか?
「分かったけど、あくまで私が知ってて話しても問題無い範囲だけだからね? 流石に本人の同意無しに話せない事も有るから。」
「まぁ、昨今のコンプライアンスを考えてもそこは仕方ないから話せる範囲で良いわ。後、私に関わる所は遠慮無く言って頂戴。第3者視点の感想も欲しいから。」
さて、どこから話したものでしょうか? 取りあえず最初から話しす事にしました。
「とりあえず……私がタツミ君を知ったのが中学2年の中総体予選で、偶然に剣道の試合の見学に行った時に一方的に彼を知ったの。」
「見学? あ、そうか。ヒジリちゃんは文化部だったからか。」
そして私はユキちゃんに同時の思い出を話し始めました。
彼の剣道の真っ直ぐさを見て興味を持った事。
自分が真っ直ぐに生きなさいと言われた様な気がした事。
翌日から学校で彼の事を調べ始めた事。
彼女は居ないと言う事。
お兄さんから剣道を教わっていると言う事。
お兄さんが剣道では有名人と言う事。
女子からのお誘いはお兄さんへの連絡手段の為と思い込んでいる事。
ユキちゃんが屋上に呼び出したけど、勘違いでフラれた事。
勉強は苦手だと言う事。
再三、勘違いでユキちゃんがフラれたと言う事。
名前も書かずにバレンタインチョコを渡した事。
そして今年、ナギちゃんとレン君をくっ付ける為に声をかけられた事。
最後に、未だにユキちゃんが名前も顔も覚えられて無い事。
大雑把にユキちゃんに話していくと、途中から顔が微妙に青くなっているのが分かりました。
「な、何と言うか……知り合いもせずにそこまで調べたの? す、凄いわね、ちょっと反省するわ。私ももう少し人を調べる様に努力しないとダメね。と言うか……私のくだりは必要だったかしら?」
感心している所がどこなのかちょっと聞きたいですが、自分の事も教えて欲しいと言ったので苦情は受け付けません。
「まさかのお兄さんネタでの勘違いだったのね……お兄さんが居る事位は知っていたけど、まさかそんな風になっているとは思わなかったわ。と言うか、バレンタインにチョコ渡したのに何で名前書かなかったの?」
「え? だって見ず知らずの人から、いきなりチョコを貰ったら怖いと思わない? それに下手に名前を書いたらまたお兄さんへの連絡手段と思われてダメだと思ったし……後は、私が恥ずかしかったから……。」
「押しが足りない! と言いたいけれど……だからこそ上手く行ったのかしら? でも工藤君はその相手がヒジリちゃんとは知って無いんでしょ? 早く言ったら?」
不思議そうな表情でユキちゃんは言って来ますが、流石に変わり者と思われて今の関係がギクシャクするのは嫌ですから言いたくありません!
「それは、機会が有ればと言う事で……それよりも、ユキちゃんが好きになったキッカケと知っている情報を教えてもらって良い?」
これ以上は危険と感じて話題をユキちゃんに変えますが、正直ここまでフラれても諦めないユキちゃんの理由が気になったので早く聞いてみたいです。
「ん? 私? それはね……」
そして私と似た様な一方的にタツミ君を知ったユキちゃんの昔話を聞きながら、初秋の風が吹き込む教室の昼休みは過ぎて行ったのでした。




