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恨みっこ無し

 私達が再び向かい合って席に座ると、ユキちゃんは真剣な表情で話し始めました。


「先に確認するけど、ヒジリちゃんは本当に工藤君と付き合ってないのかしら? 付き合ってるなら私は綺麗サッパリ諦めるわ。」


「つ、つつ、付き合ってません!」


 それを聞いてユキちゃんは安心した表情をすると話を続けます。


「二人きりで図書館で勉強会をしてたから付き合ってるのを隠しているのかと少し疑ってたの。と言うか中学の時に二人は接点が無かったでしょ? それが急に高2になってから友達繋がりとは言っても一緒にお勉強をしているとなれば何となく好意が有るのには気づくわ。」


「え? そ、それだけで?」


「いや、普通に気が無い人と一緒にお勉強会なんてする? 実際に何度も断られている私が良い例じゃない? それなのにヒジリちゃんとは勉強会をするんでしょ。」


「ね、ねぇ? それって自分から負けを認めている様に聞こえるわよ?」


 即座にナギちゃんがツッコミますが、まるで空気の様にスルーしながらユキちゃんは話を進めます。


「私だって気のない異性相手と一緒に勉強なんてやらないわ。可能性としては元から親しい友達か、どちらかに好意が有るかよね?」


 テーブルに肘をついてユキちゃんが詰め寄って来ますが、ここで違うと言うのは色んな意味でダメな気がしました。


「そ、そうだね。ユキちゃんが素直に話してくれているのに私が誤魔化すのは良くないよね。」


 私は大きく息を吸い込んで緊張した心を落ち着かせます。


「そうだよ、私もタツミ君の事が好きだよ。中2の時からずっと。」


「そうなの、偶然ね。私も同じ頃だわ。でも工藤君の近くでヒジリちゃんを見た記憶が無いんですけど?」


「ま、まぁ……影から見ている事しか出来なかったから。」


「そう言いながらも情報集めはしっかりやってたわよね? それこそユキが何回もフラれる情報も確実に集めてたわね。それこそ中2の1学期の屋上からね。」


「え? な? 何で知ってるの!?」


 私が俯いて自信なさげにしていると、ナギちゃんがフォローを入れてくれましたが、ちょっとそのフォローの内容は問題有りだと思うのですが?


「そりゃ、ヒジリちゃんの情報収集能力を持ってすればね余裕だわね。その差が今の現状だと思った方が良いわよ。」


「な、なるほど。情報を制する者が勝つと言う事ね。だけどまだ勝負は終わって無いからね!」


「まぁ今までの経緯はそれとして、ユキはどんな風にタツミ君に紹介してもらいたいのかしら? 流石に何かしらのプラン位は考えているわよね?」


 ナギちゃんとユキちゃんがお互いに何か妙なもので張り合っていますが……当事者は私の方なんだけどなぁ……と言うか既に会わせる予定に移行するんだね。


「えっと……ゴメン。何も考えて無かったわ。そもそも二人とそれなりに仲良くなれるのか分からなかった事も有るし、普段からそんなに計算ずくで動く方じゃないから。」


「「え!?」」


 まさかのノープランでの接近だったのですか? と言うか可能性に気が付いたから行動を起こしただけという事ですか? 何と言うか、ユキちゃんの行動力の高さに唖然としてしまいました。


「と言う事で、これからどうやって知り合うか3人で考えましょうか!」


「ねぇ……私、この光景にデジャブを感じるわよ?」


「う、うん……まさか自分の事をどうするかと同じ内容で他人のをやる事になるとは私も思って無かったよ。」


 私はため息をつきながら2年前のあの日、初めて3人が知り合った日を懐かしく思い出しました。


 しかし、違うとすればユキちゃんは恐れずに突き進んでいると言う点が私と決定的に違う所でしょう。


「とりあえず、今紹介するにしても、一番無難なのは勉強会からだろうけど……ユキの成績ってどれ位なのかしら?」


「ん? この前の模試ではほぼ平均点ね。偏差値51、得意科目は現文、古典で、苦手科目は物理と化学ね。」


「完璧に文系だわね。そうなると勉強会をやるとしたらの立ち位置は……微妙だわね。」


 ナギちゃんが少し頭を抱えながら考え込んでいます。こういう時のナギちゃんの思考速度は物凄く早いので頼りになるのですが、それを勉強でも発揮してくれると嬉しいんだけどなぁ……。


「ちなみにヒジリちゃんは工藤君に教えていると言ってたわよね? ヒジリちゃんの成績ってどれ位なのかしら?」


「え? わ、私はやや文系が得意なだけで……あんまり得手不得手は無いかな?」


「ちなみにヒジリちゃんのこの前の模試の全国偏差値は55だったわよ。ユキよりも確実に教える側だわね。でもタツミ君で精一杯な状況なのにさらにユキまで教えたらヒジリちゃんが大変だわね。」


「ぐ……そ、そんな事言うけどナギはこの前の模試での成績はどうなのよ?」


 ユキちゃんが悔しそうな表情で言い返して来ましたが、最近のナギちゃんは勉強を頑張っているので前よりはだいぶ良くなっている筈ですが……


「全国偏差値50だわよ……と言うかこの学校全国平均でも校内だと中の下位って納得いかないんだけど? ユキもそう思わない?」


「あ~、それは同意するわ。私も学校内だと平均よりやや下って感じだから解るわ。所で工藤君と鳴海君はどんな感じなの?」


「多分どっちにも衝撃を受けるわよ。」


 邪悪な笑みを浮かべてるけど……最早ユキちゃんのリアクションを楽しんでるよね? 先程から会話のテンポと言うか言葉と同時の体の動きを見ていると、本当に息がピッタリだと思います。


「レンの偏差値は64ね、私に教えながらも少しづつ成績を上げているとか、ある意味呆れて来るわね。ちなみに私はレンに勉強を教えてもらう前は偏差値46だったから教えるのも上手なのは間違いないわね。」


「え? 64!? それは何と言うか……少し分けて欲しいと思う位ね。と言うかナギは鳴海君に勉強を見てもらってたのね、成績が上がるなら私も見て欲しい気がして来たわね。」


「ダメだわよ? レンに手を出そうものなら即刻排除するわよ?」


 急に真顔になってナギちゃんが返して来たのでユキちゃんが驚いて固まってます。そして私の方を見て小声で苦情を伝えて来ました。


「ね、ねぇ、ヒジリちゃん。ナギと鳴海君って付き合ってるなら言ってよ……変な地雷踏んじゃったじゃない。」

  

「えっとね……ナギちゃんとレン君は傍から見てると付き合っている様に見えるんだけどね、付き合って無いの。」


「へ?」


 ユキちゃんが間の抜けた返事を返して来ました。うん、普通の人ならそのリアクションになるよね!


「要するに友達以上恋人未満な関係なんだって。レン君がヘタレているせいも有るけど、ナギちゃんもたまに素直じゃない所も有るから中々進展しないんだよね。」


「ヒジリちゃん!」


「そしてナギちゃんはとても嫉妬心が強い子なので、レン君に色目を使って近づくと噛みつかれるから注意してね?」


「流石にさっきの一言で理解出来てるわ。と言うか、そこまでの嫉妬心を出す位まで好きなのに付き合って無いって……鳴海君がヘタレてるって言ってたから鳴海君も別にナギの事を好意的に思っているんでしょ?」


 既にナギちゃんは顔を赤くしながら俯いて居ます。が、今後の為にちゃんと説明しておきましょう。


「そうね、だから周りからはバカップルって言われている位に知っている人達からは公認の仲なんだけどね。」


「結構押せ押せの感じの性格に見えるけど……意外とナギって見た目通りに可愛い所有るのね!」


「意外って何よ! 失礼だわよ!」


 ふむ、これはこれでユキちゃんは良い協力者になる可能性が有りそうですね。むしろこのネタで知り合わせた方が良い気がしてきました。


「とりあえず、今日はもう遅くなって来たから帰ろうか、ユキちゃん連絡先交換しよ?」


「あら、そうね。じゃあまた明日ね。」


 私達は連絡先を交換して帰路につきました。


 意外だったのはユキちゃんの最寄り駅は私と違う事でした。確かにコレなら一緒に通学している所を見られる可能性は低かった訳だと納得しました。


 さて、ここからは私とユキちゃんとの勝負の始まりになりますね。でもこの恋の勝負だけは譲る訳には行きません! 勝っても負けても恨みっこ無しですが、負ける気は有りませんからね!

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