三上さんの襲撃
その日の放課後、私とナギちゃんは三上さんに誘われ……もとい、拉致られて駅前の喫茶店に連行されました。
「そう言う事で、お昼にお願いした事はどうかしら? もちろん協力してくれるわよね!?」
向かい合って座っていますが、かなり顔が近いです! 圧が凄いんですけど! そして隣に座っているナギちゃんの不機嫌さが怖いです! 不機嫌モードを隠そうともしていません!
「何で私達が協力すると思ったの? そもそも了解しましたと言った記憶も無いわよ?」
「1回だけで良いのよ! 流石に名前を覚えられないままフラれ続けるのだけは納得出来ないのよ!」
「だからと言って何で私達が協力する流れになるのよ!?」
「だって火神さんは六波羅さん経由で工藤君と知り合ったんでしょ!? だったら私もその方法ならいける筈じゃない!」
「それで私達のメリットは何かある訳? 何で無償でアンタの手伝いをしなくちゃいけないのよ!」
ほぼ至近距離の位置で睨み合いながらナギちゃんと三上さんが言い合いっていますが……私帰って良いかな?
「だから別に六波羅さんに言ってないから! 火神さんにお願いしているのよ!」
「だから私が言ってるんだわよ! ヒジリちゃんなら押しに弱くて頷くしか出来なくなるわよ!」
「押しに弱いって失礼じゃないかしら? そう言うのは優しさと言ってあげるのが友達だと思うんだけど?」
「言い方を変えて誤魔化すんじゃないわよ!」
え〜っと……何か酷いこと言われてるよね? 段々とボロクソに言われている気がして来たんだけど?
「そもそも知り合いレベルのアンタをどうやって紹介しろって言うわけ? 無理が有り過ぎるわよ。」
「だったら今から友達になりましょう? と言う事で今から友達らしく色々とおでかけしましょ!」
「「え?」」
突拍子も無い提案に私とナギちゃんが固まると、三上さんは含み笑いをしながら席を立ち上がると私達の手を引きました。
何ですか! この人強引さが凄いです! ナギちゃんもそこそこ強引だと思っていましたが、それ以上の強引さを持っています!
そのまま私達はよく行くショッピングモールへと連れて行かれました。
逃げようと思えば逃げれたのですが、私と三上さんが同じクラスなので、どのみち避けれないと判断したナギちゃんが諦めて、2人だけにするよりはと今一緒に行く事になったのでした。
確かにこの押しの強さの前だと、私1人ではとても太刀打ちできそうに有りません。ならばナギちゃんが居るうちに対処する方が無難でしょう。
出来るならタツミ君に紹介すると言う提案は受け入れたく無い気持ちの方が強いのが事実です。
「さぁ着いたわ! まずは小腹が空いたからスイーツから行きましょうか!」
颯爽と先頭を進んで行きますが……プランも全て三上さん主導で進んでいるのが不安です。
しかし、私はともかくナギちゃんも振り回される勢いで連れ回されています。
3人でクレープを食べたり、小物ショップでアクセサリーを見ながらウィンドウショッピングをしたり、ゲーセンでぬいぐるみを狙った後にプリクラを撮ったりしました。
「はい、コレがさっき撮ったプリクラね。うんうん、全員分のマスコットキーホルダーを獲得した甲斐があったわ!」
三上さんは満足そうな笑顔でこちらを見てきます。
いつの間にかナギちゃんも流されて楽しそうにしています。三上さんの相手の懐に入る技術の高さには圧倒されます。
「ねぇ、そろそろ打ち解けて来たと思うんだけど、良い加減に名前呼びにしない? ユキって呼んでちょうだい。」
その屈託のない笑顔にナギちゃんも反応に困っています。三上さんが素直に楽しんでいるが伝わって来るので無碍にできない様です。
「ぐ……い、良いわよ……何と言うか、ここまで毒気を抜かれると警戒しているこっちが悪者みたいだわよ。」
両手を上げて降参するようにナギちゃんが声を上げました。私も同じ感想だったので黙ったまま頷きました。
「負けたわよ。で、ユキはこの後どうしたいの?」
「え? いいの? 良かった~。じゃあ、二人の事は名前で呼ぶわ。宜しくね!」
言うと同時に三上さん……いえ、ユキちゃんは私達の手を握って来ました。何と言うか……コレが陽キャと言う人なのでしょうか? かなり羨ましいです。
「ええっと、よ、宜しくね。ユキちゃん。」
「宜しくねヒジリちゃん! 一年の時は二人に断られたから、あの後少し悩んでいたんだけど、こんなに良い人達ならもっと早く声をかければ良かった!」
かなりはしゃいでいますが……本来の目的はタツミ君に紹介してもらう事だよね? 何か今は打算無しに私達と仲良くなれた事を喜んでいる様に見えます。
「ね、ねえ? 喜んでいる時に悪いんだけど、ユキって本来の目的忘れてるわよね?」
「え? 本来の目的……? あ! 二人と遊ぶのが楽しくて、つい忘れてた! てへ。」
てへって……リアルで言う人初めて見たかもしれません。ナギちゃんは動じる事無く話を進めて行きます。
「それで、私達はどんな事をしてあげたら良いのかしら?」
「とりあえず、普通にお友達として紹介して欲しいわ。その上で名前さえ覚えてもらえれば、後は私の方で何とか口説き落として見せるわ!」
自信満々で語っていますけど……口説ける自信が有ると言ってるのがあながち自信過剰にも思えないのが怖い所です。
「ちなみに確認するけど……もし、工藤君が別の誰かを好きだった場合はどうするの?」
「ん? その時はこっちを見てもらえる様に努力を続けるだけよ! だって結果が出ている訳じゃ無いじゃない。だったら可能性を信じて努力した方が全然建設的だと思うから。」
あまりにも前向き過ぎる発言にナギちゃんも私も呆気に取られてしまいました。何と言う鬼メンタル的発想でしょうか。この考えなら何度アタックに失敗しても諦めない訳です。
「じゃ、じゃあ、諦める事が有るとしたらどんな時になるの?」
「ん? そうねぇ……流石に浮気とかはゴメンだから、工藤君に彼女が出来たら流石に諦めるわね。他人の彼氏を奪うっての前向きな生き方じゃないと思うから。」
「前向きな生き方?」
意外な言葉が返って来て私が聞き返すと、ユキちゃんは照れ臭そうに頬をかいています。
「生きて行動するなら、何か意味の有る物にしたいの。行動の結果が誰かの悲しみや負の感情を起こす生き方は好きじゃないの。どうせなら自分の行動が前向きで誰かの為になる様に生きて行きたい。だから私としてはこの考えだけはしっかりと守りたいの。」
「だからタツミ君に彼女が出来たら諦めるって事?」
「そうよ、横恋慕なんて相手にも悪いし自分もみじめったらしくなるでしょ? だから工藤君に彼女が出来たら全力で応援するわ。例えその相手がヒジリちゃんだったとしてもね。」
「え? ええぇ!?」
「何でそこで赤くなるのよ。まぁ、この際だからハッキリと話した方が良いわね。」
妙なカウンターを食らって私が赤面すると、呆れたナギちゃんがフォローを入れる様に近くのフードコートに座る様に促して来ました。
「大丈夫よ、ヒジリちゃんも工藤君の事を少なからず意識してるって事でしょ? だったら正々堂々勝負するだけよ。私としてはどっちが勝っても負けても恨みっこ無し。だってもう友達だからね。」
「え? 知ってて近づいて来たの!?」
私が驚きを隠せないでいると、ユキちゃんは平然とライバル宣言と友達宣言をしてきました。この子の思考回路はどういう構造をしているのか全く分かりません!
「まぁ、座ってゆっくり話しましょうか。」
ユキちゃんは座って私達を待ち構えている様な表情でこちらを見ていました。




