三上 悠輝
このお話は例外的に三上さん視点でのお話になります。
私はメンタルが強いと言われているようだけど、それは中学に上がってからになるわ。それまでの私は何事にも慎重で失敗を恐れては行動しない、今思うと本当に情けない自分だった。
中学生になって、スポ少からやっていたバドミントン部に入部した。もちろんスポ少では目立たずにやって来たのだけど、中学は素人ばかりの集団だったので嫌でも目立ってしまったの。
先輩とは言っても中学から初めた上に部活と言う独学で指導者が居ない中での活動だから当然自分よりも下手だった。
もちろんそれは嫉妬の対象になり、間もなく私は部活に顔を出さなくなった。陰湿な嫌がらせを受ける位なら逃げた方が良いからね。
放課後はまっすぐ家に帰ると親が心配するので、仕方なく他の部活を見て回りながら時間を潰すのが日課になってしまったの。
そんな日々を送っていると偶然にも、転機となる機会が訪れたの。その日は天気も良くて散歩しながら剣道部の練習場の近くで油を売っていた時だったわ。
「タツミ、お前もう少し加減したらどうなんだ? 流石に先輩のメンツをつぶし過ぎると後々面倒にならないか? 色々裏で嫌がらせしようとしているぞ? まぁ6年もやって来た俺達と中学から始めた先輩じゃ勝負にもならないが。」
「レンか、心配してくれるのは嬉しいが、俺達の目標は先輩に媚びを売る事じゃ無いだろう? それに嫌がらせするって事は自分が小さいと逆に示している様な物だろう?」
「そうだけど、相変わらずムキになって頑張っているけど、お前兄貴に追い付くのは諦めたとか言って無かったか?」
「頭ではそう思っているんだけどな……、でも結局は竹刀を握っている時は目指してしまっているんだ。届かないと解っていてもやらざるを得ない。その度に剣道が嫌いになっちまうんだけどな……。」
「結局、辞めたくても辞めれないってか? 相変わらずだなぁ。まぁ俺も無理とは分かっていても龍一さんの様になるのを諦めるかと言ったら別だもんなぁ……。」
「お互いに面倒な奴を目標にしちまったな。剣道を嫌いになる位に強い人を。」
「そうだな、でも嫌いだけど捨てれ無くなっちまったもんなぁ……。」
そう言って二人は笑い合っていた。
辞めたいのに辞めれない? どう言う事なのかしら? 嫌ならやめてしまえば良いじゃ無い。無理をしてまで嫌な事に何故に向き合うのかしら?
今の私の様に逃げれば良いじゃない、逃げる事は別に悪い事じゃ無い。自分を守る為には大事な事だと思うの。
そう言えば気になる事を言ってたわ。
『目標は先輩に媚びる事じゃ無い。』
私は何でバドミントンをしていたのかしら? 目標は何だったの? 思い出してみましょう。
彼が剣道を辞めない理由はきっとその原点が理由なのよね。だから迷わずに媚びを売る事も無く、逃げる事もしない。目標に届かなくて嫌いになる位なのに諦めきれない情熱はどこから来るのかしら?
興味を持った私は彼の事を少し調べてみたけど、情報はあっと言う間に集まった。何やらお兄さんが有名過ぎて、過分な位に情報が集まったわ……お兄さんの方の情報が。
でも、その間に私は自分を見つめ直す時間が出来たのも事実だったわ。毎日誰かに比べられ続ける日々はとても辛い事だと思うの。それに比べたら私の環境はどれだけ恵まれているのかしら?
別に誰かに比べられて卑下される事も無い、自分から面倒事からは逃げて人とは上辺だけで付き合う。戦う事もしないから自然と周りに流されて自分の信念も信条も無い事に気が付かされたわ。
私は緩やかに自分を自分で甘やかして、自らの首を締めていたのでは無いかと思うようになったの。
彼は環境に屈する事無く戦い続けていたのでしょう。自分では意識していなくても悩み、傷付きながらも前に進んで、後悔しながらも誇りをもって前に進んでいる。
私は逃げ続けても誰にも責められなかった。
いや、誰も《《責めてくれなかった》》と言う事に気付いたの。
それがどれだけ自分を成長させないのかを痛感したわ。私の思考は子供のままだと気付かされた。このままでは温室育ちの花として生きて行くしかない。世間の理不尽にさらされた時に私はすぐにへし折れてしまうでしょう。
悩まずに戦う事も大事なのでは? よく漫画であったケンカしたからこその友情見たいなモノも有るかも知れないし、無いかもしれない。
でも今の一歩を踏み出すのを辞める理由を考えてはいけないと思えるようになったの。
そして私は1カ月ぶりに部活に顔を出した。先輩達の「来やがった」と言う顔は今でも鮮明に覚えている。そして私は彼女達に言ってやったのも覚えている。
「私の目標は平穏な部活をする事じゃないわ。勝つ事を楽しむのが目標なの。嫌がらせを考えるよりも自分が強くなる方法を考えたらどうですか?」
もちろんその後、先輩に引っ叩かれたのは言うまでも無い。モチロン相手のプライドをへし折る一言も添えてあげた。
「口と実力で勝てないからって暴力? 情けない。子供が口喧嘩で負けた時と同じね。」
そこまで言われた先輩は更に殴りかかって来たが私は毅然としてそこから逃げなかった。そして他の生徒が呼んだ先生が来て止められた。
私は厳重注意だったのが納得いかない、だって私は殴っても蹴ってもいないのに。
先輩は暴力行為がハッキリと見られたために部活をクビになった。不祥事として大会に出れないのは学校的に困るらしいとの事だとか言ってたわ。
そうして私は逃げずに居場所を作ることが出来た。先輩達にイジメられていた人達と一緒に前向きな部活動の場所を作り出すことが出来たの。
その後、私はイキイキとする様になったと両親に言われたわ。どれだけ以前の私は引っ込み思案だったのかしら?
そして私を変えるきっかけを作ってくれた工藤君に私は告白しようと、2年生の1学期の終業式に手紙を机に入れて、放課後に屋上で待っていた。
しかし、何故かそれはお兄さんへの伝言のお願いと勘違いされて、告白する間も無く終わってしまったわ。
その後も何度かアタックを試みるも、タイミングが悪いのか全部失敗してしまう有様なの! そして何故か顔も名前も覚えられてない! タイミングがそんなに悪いの!?
一度だけ三上の苗字で呼ばれたのも、手紙を書いて入れた時だけだった! あの時は名前を書いていたから呼んでもらえたけど、次からは苗字すら忘れ去られていたんですけど!
でも諦めないわ! 彼に彼女が出来たと聞くまでは何回でも挑戦するのよ。だって戦わない事を選んだら、その時点で終わりなのだから。
チャンスを伺いつつも夏休みに気まぐれで近所の図書館で勉強をしている時に信じられないものを見たの。
たまたま同じクラスの火神さんを見かけたので声を掛けたの。誰かと来ている様だからいつも一緒にいる六波羅さんかと思ったらそこに現れたのは工藤君だったわ。
工藤君が女の子と2人で勉強しているわ! 前に私が誘った時は完璧に拒否され続けていたのに!
これは一体どういうことかしら? この2人は付き合っていたの?
私は無言で火神さんを呼び出して詳しく話を聞かせてもらったけど、まさか友達経由という方法があったとは気付かなかったわ。
よし、ならばこの際は火神さんに協力をお願いしてでも私を認識してもらわないと! そう決心してその日は一緒に勉強を勝手にする事にしたのだけど……その日以降に2人を見る事は無かったの。
そして2学期が始まり、私は覚悟決めていつもあの2人が居るであろう屋上へと向かった。
「ねぇ、火神さん。お願いがあるんだけど、私を工藤君に紹介してくれないかしら?」
もし、火神さんが恋のライバルになるのだろうなら余計にもなりふり構っていられないわ。
せめて負けるにしても名前位は覚えてもらわないと負けた気にすらならないわ! だったら最低限として知り合いになってやるわ!
火神さんと六波羅さんは微妙そうなを表情してるけど、私も引くわけにはいかないのよ!
やらないで後悔するよりも、やって後悔する。それが今の私のモットーなのだから。




