祭りの後 男性側
「で、わざわざ人の教室にまで来て聞くと言う事は、見てたって事だよな?」
レンと一緒に教室で弁当を食べながら夏祭りの話題を振った途端にコレだ。
「流石に誘導してやったんだから感謝はしろよ? ヒジリの説得が無かったらナギは絶対に迷子センターに行かなかったと思うぞ?」
ジト目で睨みながら文句を返してやると少し気まずそうな表情をしていた。
「それは、否定できないな……最初に俺からも提案したんだが、却下されたからな。アイツ小柄なとこを気にしてるから子ども扱いされるのを極端に嫌がるんだよな。」
「まぁ、言葉次第だよな。迷子センターじゃ無くて合流所とか、待合待機所とかに名称変えれば良いのにな。」
「タツミにしては結構まともな事言うな……火神にでも入れ知恵されたか?」
「何で俺のまともな意見は全部ヒジリからの入れ知恵扱いになるんだよ? 俺が言うと変か?」
「ああ、鳥肌が立つくらいには変だ。」
真顔で言われると少し殺意を覚えるんだが、一発殴って良いだろうか?
「よ~し、右と左どっちで殴られたい? 選択肢位はやろう。」
「ボウリョクハンタイー。高校生にもなってそのノリは痛いから止めておけ。」
「レンのそのノリも充分痛いと思うんだがな?」
「で、結局お前達って進展してるのか? あの後告ったりして無いのか?」
「は?! ゴッ! ゴボッ!?」
しばらくして急に会話を蒸し返すと盛大に吹き出してくれた……おい、俺の顔にかかったお前の食べかすをどうしろと?
「きったねぇな! 急に噴き出すな!」
「お前が急に変な事聞くからだろうが!」
言い争いが続きそうになったが、周りからの視線に気が付いて俺達は再び小声での会話に戻る事にした。
「流石に意中の子と二人で夏祭りに行って、何も有りませんでしたは通用すると思うか?」
「いや、お前も知ってる様に迷子でそれどころじゃ無かったんだよ! あの後もナギが小柄なせいで人混みに流れされまくってな……。」
レンが頭を抱えながら困った表情をしているが……
「え? 手を繋いで行動してもダメだったのか?」
「おい、お前……覗いてたのか?」
あ、言っちゃった。まぁコイツから詳細を聞くには黙っている訳にもいかないか。
「ええ、ストーカーばりに影から見させてもらったぜ。」
「ストーカーって……お前ら似て来たな……。」
「ん? 似て来た?」
「あ、ああ、何でもない。つーかどこまで見てた? 素直に言うなら今なら許してやる。」
ふむ、何か隠そうとしている様だが……まぁその部分は後で確認することにしよう。問題は如何にレンから情報と今のコイツの考えを引き出すかだな。
「誘導した後、俺達もコッソリと迷子センターの影から無事に合流できるかまでは見ていたんだよ。そしたらレンが手を差し出す姿を目撃した訳だ。」
「絶対に仕返ししてやるからな……覚えてろよ? で、その後は?」
「流石にそれ以上は無粋だからやめておいた。それに、」
「それに?」
「お前達が行こうとしたのは本会場の方だろ? 人が多すぎてヒジリの体調が悪くなった場合に対処できないし、体力的にキツイと思って人が少ない方に移動したんだ。」
ん? 何でレンは鳩が豆鉄砲を喰らった様な表情になっているんだ? 魂が抜けて無いよな?
「タ、タツミが……相手の体調を気にしてエスコートだ……と……?」
「おい、何かとても失礼な事を言って無いか? 流石に体が弱いと言っている子をあんな混雑している場所に連れて行く訳にも行かないだろうが。そもそも屋台巡りも人が少ない方を選んだつもりだ。」
そこまで言うとレンは机に突っ伏してしまった。何でコイツはこんなにダメージ受けているんだ?
「お~い? どうしたレン?」
「タツミにデートプランで負けるとは……屈辱だ……。」
う~ん……あの後も何かやらかしたのか? と言うかデートプランって言ったよなコイツ。もうお前ら付き合ってんだよな?
「なぁ、お前らヤッパリ付き合ってるんだろ? 普通は付き合って無いとデートプランとか言わないだろうが? ついでに言っておくが、俺はヒジリに普段の勉強のお礼で誘っただけだからデートとは言わん。」
「いや、男女が二人で出かけるのはデートだろ? ん? そもそもデートの定義ってどこからなんだろうな? タツミは何処からだと思う? お前の定義だとデートではない、ならこれは失敗に入らない? いや……そうじゃないが……何と言えば良いんだ?」
いや、何を急に哲学を語る様に言いだしたんだコイツは? そんなに大失態を曝したのかコイツは?
「お~い? お前あの後に何をやらかしたんだ?」
「お前の予想どうり人が多すぎてな、手を握っていてもはぐれそうになるから近くに引き寄せたんだが……」
うん? 少し予想出来て来たが……ちょっと殺意が湧いて来たぞ?
「今度は人混みで密着し過ぎてな……体力は削られるわ、精神的にも大変だったわ……そんなこんなでやっとの思いで花火を見たんだが……疲れすぎてムードもへったくれも無かったんだよ。」
「精神的に大変だった部分を少し詳しく聞こうか?」
「いや……ナギの外見を見たら……今の話で分かるだろうが?」
ふ~ん……殴っていいですか? いや、殴っても許されるよな!? 男的にはそれはご褒美じゃ無いのか? 何言ってるんだコイツは!
「何だよその目は、あのな……お前と違って俺はそんな下心全開じゃ無いんだ? ちゃんと順番を守ってお付き合いしたい派なんだよ。だから俺には色々と刺激が強すぎて思考が回らなくなったと言うか。」
「要するに煩悩にまみれ過ぎてどうしたら良いか解らなくなったと?」
こいつもこいつなりに色々と考えているのだろうが……まぁ、そこまで考えていると言う事はナギの事をしっかりと大事に考えていると言う事なんだろう。
「取りあえず、ナギを家まで送るので精一杯だったんだよ。俺よりもナギの方がもみくちゃにされてたから疲労が酷かったしな。」
何かの同意を求める様に視線を向けて来る。だからデートプランで負けたとか言ってたのか。
「まぁ、またリベンジしろ。今度は相手の特徴を把握したうえでプランを考えてやれ。つーかもう付き合ってるんだよな? いい加減認めろよ?」
「だから付き合って無い……と言うかどうしたら良いものやら……」
コイツはどういう風にナギを考えているのだろうか? 好きなのは見ていて解るしナギの方も好意を持っているのは理解できる。
それでもレンがその一歩を踏み出さない理由は何か有るのだろうか? それとも2次元に慣れ過ぎたせいでヘタレとなっているだけか?
「それよりも……タツミこそ、火神と何か進展は有ったのか?」
「ん? いや、普通にお礼として楽しんでもらっただけださ。まぁ俺も楽しかったけどな。」
「ふ~ん、でもタツミにしては火神に随分と積極的な様に感じるが? いつもなら勉強会も時期が終われば全部断ったりしてたくせに。」
ニヤニヤしながらレンが聞いて来たが……言われてみると確かに、試験前は俺からお願いしたからだが、夏休みとかに誰かと勉強会やろうと言われて応じた記憶は無かったな。
「確かにな……多分、ヒジリと会うのは楽しいと思えるからか? いや、楽しいとは違うな……何だろう? 落ち着く?」
言葉にしてみると難しい、でもしっくりと来る答えでは無かった。
「お前、火神の事を好きになったんじゃないのか?」
「え? 俺が?」
どうなのだろうか? この何とも言えない感情が好きと言う気持ちなら、俺は同行どうしたら良いのだろうか? バレンタインの子の事を考えると、何か自分が不誠実な人間の様な気がして来てしまった。
俺の気持ちを少しだが前向きになるキッカケをくれた人を知らないまま、ヒジリを好きになる。それは自分の中でけじめみたいな物が付いていない気がしたのだ。
「どうした? 急にそんな難しい顔をして?」
「え? あ、いやちょっとな……」
俺の感情が顔に出ていたのだろう。難しい顔をしていた様だ。そしてレンは知っているので少し今の気持ちを聞いて貰おうとしたが、レンも自分の事で大変だろうと思って聞くのを辞めた。




