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夏祭り 追跡せよ

 私達は夏祭り会場に到着すると、さっそく屋台を色々と巡りました。射的をやったり、金魚すくいや輪投げなど懐かしい遊びをしつつ、途中でたこ焼きやら、カキ氷等も堪能しました。


 私もお金を出そうとしましたが、タツミ君が出させてくれませんでした。


「もしヒジリに出させたら兄さんに何を言われるか分かったもんじゃない。」


 と怯えた表情で言われたので素直に従う事にしました。と言うか何でそんな表情になるのでしょうか? もしかしてお兄さん付けて来てないよね!?


「そろそろ会場の方に移動しましょうか? 人混みが酷くなるとバテちゃいそうだから。」


「そうだな、では食料と飲料はしっかりと確保して行くか。」


 そう言ってタツミ君は更に焼きそばやら飲み物を追加で購入しています。ヤッパリ男子は食べる量が違いますね、去年ナギちゃんと来た時に比べて食べ物の量が倍以上有る気がします。


「さて、では移動するか。」

「うん、行こう……か……。」


 タツミ君に返事をしようとしたその時だった。背後に見覚えのある人物が通り過ぎたのが見えたのでした。


「どうした?」


「今……レン君が一人で後ろを通り過ぎた様な……?」


「え? レンが一人で?」


 タツミ君も振り返ると、何やらキョロキョロとしているレン君の姿が見えました。コレはもしかして?


「ねぇ、もしかしてナギちゃんとはぐれたのかな?」


「ヤッパリそう思うか? 他にレンと一緒に夏祭りに来る奴が居るとは思えないからな。」


 連絡が取れないのか、レン君はスマホを見ながら焦った様な表情をしています。


「スマホで連絡が上手く取れて無いって事は……ナギちゃん小柄だから人混みに埋もれているのかな?」


「あ~、確かにナギは小柄だからこうなると見つけるのが苦労しそうだな。」


 逆にレン君は人より背が高いので良くも悪くも目立ちますからね。すぐに発見出来ましたが、ナギちゃんはどこに行ってしまったのでしょうか?


「声をかけてみる?」


「いや、待て。ここは影からサポートするぞ。」


 タツミ君が何かを思いついた様な表情を浮かべています。


「ここで上手く二人を合流させれば、今度ははぐれない様にと手を繋いだとなる気がしないか? それ位はいい加減進んでいるかもしれないが、ひとつのキッカケになると思わないか?」


「あ、ナルホドね。確かにあの二人が手を繋いでいる姿をまだ見た記憶はないかも……」


「それに、この夏祭りと言う特殊な環境だ、上手く行けば雰囲気に流されて付き合い始めるとかも有り得るんじゃないか?」


「うん、確かに可能性はあるかも知れないね。やってみようか。でもどうやって?」


 私の同意を得て、タツミ君がニヤッと笑っています。この表情はナギちゃんやレン君が悪だくみしている時の顔を一緒ですね、何をするつもりなのでしょうか?




―――――――――――――――――――――――――



「もしもし、ナギちゃん? 今どこに居るの? 遠目にオロオロしているレン君が見えたんだけど? 一緒に来てたんだよね?」


「ヒジリちゃん? 何でレンが居たら私も一緒だと思うの? いや、間違ってはいないわよ……」


 少しだけ不服そうな声がしましたが、すぐに照れながら肯定してきました。恐らくレン君との合流を優先したいから認めた気がします。


「で、今どこに居るの? 多分近くに居るとは思うんだけど人混みに紛れちゃってるんだよね?」


「うぅぅぅ……小柄なせいで完璧に埋もれているわよ……。」


 ヤッパリそうだったのね……ナギちゃんの身長は下手したら小学生でも通用するから埋もれたら見つけるの苦労するよね。

 

「取りあえず、近くに何か見える?」


「レンにも同じ事聞かれたけど……屋台が並んでいるだけだわ。しかも似通った屋台が多いから特定が難しいわ。」


 困り果てた声が聞こえてきます。これはもう最初から最終手段が正しいでしょう。


「よし、花火会場に向かって来てたのなら、屋台の並びの途中で迷子センターが有ったから、そこで落ち合う方が良いと思うよ? レン君の位置的にもそこまで遠くない筈だし。」


「ま、迷子センター!? た、確かに有ったけど……さ、流石に抵抗が有るわよ。」


 小柄な自分へのコンプレックスなのでしょうね、迷子と言う言葉に抵抗が有るようですが……ナギちゃんの胸元見れば誰も子供なんて思わないから! と心の中で叫んでおきます。


「花火始まるまで時間が無いよ? 花火が始まったら音でさらに合流が難しくなると思うから。レン君には今タツミ君が話しているから急いで移動して。」


「わ、解ったわよ……じゃあ、レンへの連絡をお願いね。そ、それと……ヒジリちゃんも頑張りなさいよ?」


「え? あ、ええっと……が、頑張ります……。」


 電話が切れるとタツミ君の方を確認します。向こうも誘導は問題無く進んだ様で親指を立てて合図しています。


「さて、俺達も移動するか。」

「そうだね、行こうか。」


「「迷子センターに!」」


 タツミ君の発案ですが二人をコッソリと付けて上手く行くか見守ろうと言う事になりました! まぁ私達の会っている本来の目的がコチラと言う事も有りますが、私的にも興味が有ったので承諾したのでした。




 そして私達は屋台の影から迷子センターが見える位置に待機して二人を待ちました。念のためお面を買って顔を隠しています。こんなお面を買ったのはいつ以来でしょうか? 少し楽しくなっています。


 迷子センターには既にレン君が待機しています。しばらくしてナギちゃんの姿が見えてきました。私は二人の会話が聞こえつつも見つからない適度な距離を、物と人を利用してタツミ君を先導します。


「全く……アレだけ離れるなと言っていたのに。」

「悪かったわね……小柄だからすぐに見えなくなっちゃうのよ。」


 珍しくしおらしく謝っているナギちゃんは珍しいですね。その姿を見てレン君が少し戸惑っているのが分かります。いつもならもっとこう、ギャアギャアと騒ぎ合うのに違うのですから。


「いや、悪いのは俺の方か。慣れない浴衣で動いているんだもんな、俺がもっと気を掛けるべきだったな。スマン。」

 

「え、あ、そ、そんな事無いわよ。私もちょっと考え事をしちゃってて、気付いたらはぐれちゃったから……別にレンが悪い訳じゃ無いわよ。」


「お前が歩きながら考え事なんて珍しいな? 火神ならしょっちゅうだが。」


 ちょっと待ちましょうか? 私はそんな妄想族では有りませんよ? 流石にはぐれる位まで妄想の世界に入り込みませんからね? え? そんな事無いって? アーアーキコエマセン。


 タツミ君もそんな目でこっちを見ないようにして欲しいのですが……お面に隠れてますけど雰囲気で伝わってきますよ? あ、気付かれたと思って目を逸らしましたね……後で少し問い詰めたいと思います。



「さあ、早めに行かないと混みだして余計にはぐれちまうからな。行くぞ。」


「ねぇ、はぐれない様にはしてくれないのかしら?」


 ナギちゃんが照れ臭そうに言うと、レン君は頬をかいてからゆっくりと手を差し出しました。ナギちゃんも意味を察してその手を取ります。


「良く出来ました。しっかりと離すんじゃないわよ?」


「そもそもはぐれるんじゃない。全く手のかかる奴だ。」


「……本当に、手放さないでよね。」


 小声でナギちゃんがつぶやいていましたが、レン君には聞こえてなかった様です。


 いや、私達が聞こえてるんだから聞こえている筈です。知らんぷりしてますね。


「アレは……酷いヘタレだな?」

「ヘタレ過ぎよね?」


 いや、ヘタレ具合は私達も人の事言えないけど、ナギちゃんがあそこまで勇気を出して言っているのに!?


「まぁ、レンに今度は迷子にならない様に手でも繋いでおけと言った効果はあった様だな。」


 タツミ君が呆れ顔で言っていますが、ナイスアドバイスでしたね。少しは進展したのでは無いでしょうか?


「さて、俺たちも行くか、これ以上は野暮ってもんだな。はぐれない様にしてくれよ?」


 そう言うとタツミ君が手を差し出してきました。意味理解するのに少しかかりましたが、すぐに私も手を差し出しました。


 多分私達の顔は見せれない位に赤かったでしょうが、お面で隠しながら花火会場へと向かいました。




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