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勉強会と試験 ヒジリ視点

 参考書を買いに行った翌日から私達は放課後に自習室に集まって勉強会を開始しました。


「ところでレンは部活行ってるのか?」


「そうだわね、レンは成績は問題無いから特に問題なく参加だと思うわよ。」


「なので、レン君からナギちゃんの分の勉強資料も預かってるから安心してね?」


 私はカバンから預かっていた問題用紙を出してナギちゃんに渡すと苦虫を潰したような顔をしています。


「相変わらず勉強に関しては抜け目が無いわね。」


「それだけしっかりと見ているって事だと思うんだけどな……。」


「わ、分かってるわよ……ただプライベートでもそれ位気遣いをしてくれれば良いと思っただけだわよ。」


 その発言の時点でいつもの気持ちになるんだけど……タツミ君も微妙そうな表情をしていますね。


「で、俺はどんな感じで勉強を始めたら良いんだ?」


「えっと、昨日先に言っていた範囲の問題の模擬テスト部分はやってきた?」


「ああ、コレだな……しかし自己採点はしなくて良かったのか?」


「うん、大丈夫。私の方で見てから何処が分からないかを判断して要点をやっていこう。」


 そう言って私はタツミ君から問題集の模擬テストの答案を見ながら答え合わせをしたのですが……


 想像以上にヤバいです!


 何ですかこの答案は! 基礎の関数もヤバいですが、文章問題もどう読んだらこの解釈になるのですか!? 化学式もどうなっているのですか! どうやったら電子数を無視した結合反応を書いているのですか!?



「ヒジリちゃん? 顔が青いけど大丈夫? ん? ちょっと待って……流石に私でもこの答案はヤバいって分かるわよ。」


「え? 俺の回答ってそんなにヤバいのか?」


 私達の顔色を察したタツミ君が慌てた様子をしていますが……うん、これは想像以上だったよ……レン君はもしかして分かってて私に回したのかな?


「少なくとも、私よりバカって事は確定してるわね。私でもこんな回答しないわよ……」


「な、お、お前な……そこまで言う必要あるか? って……本当にナギって勉強出来ないのか? それ位言うなら俺よりは出来るって事だろう?」


「あのね……いくら私でも赤点常連まではいかないわよ? 目標が高いから無理にでも勉強してるのよ! 赤点回避レベルのアンタと一緒にしないでくれる!? と言うか出来ないって誰が言った!?」


「え? そんな事をヒジリが言うと思うか?」


「レンの奴ぅぅぅぅ!? 後でとっちめるわよ!」


「と言うか……随分二人の息が有ってるように感じるんだけど……本当にこの前が初対面なんだよね?」


 あまりの掛け合いの噛み合い方に、本当に知り合って間の無い物なのか?もしかしてあの時タツミ君が私に声をかけたのも、実はレン君とナギちゃんが仕組んでいた事なのではないのかと疑うレベルです。


「ん? 何と言うか、レンとノリが近いから合わせやすいだけよ? 流石に小学校からの腐れ縁だけあってノリとツッコミの呼吸は似ているわね。」


「俺はどっちかと言うとツッコミ役の方だと思うんだが? アイツはボケて来る確率の方が高くないか? むしろ真面目にやっている事に対してのツッコミが多い気もするが。」


「ああ、確かにそうだわね。真面目に言ってるんだろうけど、他の人から見たらボケてるのか? って言いたくなる奴よね? とても良く解るわよ。」


「良かった、同じ感覚の持ち主に会えて一安心したぜ。」


 二人は何かに同意しながら頷いていますが……物凄く自然に話が勉強から脱線したよね?


「ナギちゃん、手が止まってるよ……終わらない場合はレン君に言うからね? ホラ、タツミ君も。次のテストはこの模擬テストの中から似た様な物が出て来る筈だから、一緒にどこが解らないのか深堀して行くよ?」


「うへぇ……了解しました。」


「あ、ああ、宜しくお願いします。先生……。」


 各々返事をして各自の勉強に取り掛かる事になりました。私は取りあえず比較的点を取りやすい所を重点的に教える事にしました。





「なぁ……何でここの文章がこういう意味になるんだ?」


「コレは、他の人の作品からの言い回しを流用してるんだよ? だから前文にその作者の名前が有るでしょ?」


「いやいや、その作者の作品を誰もが読んでるとは限らないのに? そんな問題出すのか?」


「いや、有名どころの話と言うか……名言くらいは入れていた方が良いと思うよ? 社会人になってからもそういう言い回しって大事ってウチのお父さんも言ってたよ?」


 問題文とにらめっこしながら文外に有る答えに苦戦をしています。まぁこんな問題は極稀ですけど……こういう問題の方が地味に配点が高い時が有って厄介なんだよね。


「ふ~ん、言い回しねぇ……私が知っているのは京都の『お茶漬け食べますか?』位かしら? あ、他にも『月が綺麗ですね』も有名ね。」


「あ~アレは有名よね。と言うかどうしてそういう解釈になるのか私も不思議なんだけどね。」


「おぃ、ナギは自分の方に集中しろよ? 一人の世界が耐えられないのか?」


「その通りだけど何か文句ある? そっちは2人で楽しそうだけど、こっちは一人で黙々とやっているから気が滅入るのよ!?」


「いや、それで八つ当たりされても困るんだが? こりゃレンも苦労してそうだな……。」


「何を!?」


「二人とも静かに! ここは自習室だよ!?」


 すぐに会話が弾んで騒がしくなるのはどうにかならないかしら? しかしタツミ君が私達になれるのが随分と早い気がしますが……やっぱり潤滑剤としてレン君が居るからと思ってましたが、ちょっと違う気がします。


 多分、人同士のフィーリングが近いのかな? そんな気がします。


「わ、悪い。しかし、さっきナギが言っていたのはどういう意味だ?」


「ああ、『お茶漬け食べますか』は京都地方限定で『帰れ』という言い回しなんだって。『月が綺麗ですね』は……あな……」


 ちょっと待って!? 流石に説明でも本人の目の前で言うのは無理が有ります!!! ムリムリムリムリ! ちょっとナギちゃん! ここは助けて下さい!?


「あな……? 何だ? 穴で終わる訳じゃ無いだろう?」


 タツミ君が不思議がった表情をしてきますが、言えない! いや、言いたいけど今は無理! 顔が赤くなっていくのが自分でも分かります。


 そして横目でナギちゃんに助けを求めようとしますが、ニヤニヤとこちらを見ています。まさかコレが狙いですか!? それだとしたら策士過ぎませんか?!


「あ、貴方への宿題です! おうちに帰ってから調べてみて下さい。そう言う事も勉強のクセをつけるには良いと思いますから。」


「ん? そうか、分かった。じゃあ次の問題に行くか。」


 そう言ってタツミ君は普通の表情で次の問題へと取り掛かります。隣で物凄く微妙そうな表情をしているナギちゃんには、後でレン君に言って課題を増やしてもらう事にしましょう!


 いや……むしろ良くやったと褒めて甘やかしそうな気もしますね……いや、多分する。これでは効果が有りません。


「ナギちゃん、後ですこ~しお話良いかな?」


「え? あ、はい……。」


 ちょっと声色を変えて怒ったフリをしながら声を掛けました。一瞬ビクッとしていたのでこの方が効果が有ったようですね。


 しかし……私の関係を進めてくれようとしているのは助かるのですが……今みたいなキラーパスは危険なので勘弁して欲しいです。





 そしてそんなこんなで、タツミ君は平常点をもらって何とか赤点を回避することが出来る点数を取ることが出来ました。


 でも、夏休みは勉強も頑張らせます! 流石にアレはダメです! そしてこの夏休みでもう少しだけ距離を詰めれる様に頑張ると心に決めたのでした。

 



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