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二度目の参考書買い

 今現在、俺達はショッピングモールの書店に来て参考書コーナーを見ているのだが……


「え、えっと……これはどうかな? どの位理解出来そうかな?」


 そう言ってヒジリが俺に参考書を見せて来た。うん、別にこうやって色々と自分に合った勉強道具を探すのは良いんだ。


 だけど、何故2人だけになった!? レンとナギはどこに消えた! はたから見たら完璧にデートじゃねぇか!


 いや、別に嫌ってわけじゃ無いんだよ? でもそう言う噂とか流れたらヒジリに迷惑をかけるんじゃとか心配するわけだよ。


「タツミ君? 聞いてる?」


 俺が悶々と考えているとヒジリが不服そうな表情でこちらの顔を覗き込んできた。


「あ、ああ、スマン。ちょっと考え事をしていた。えっとコレだな。」


 何と言うか……たまにドキッとする様な行動をとって来るのが心臓に悪いのでやめて欲しい。はたから見たら余計に勘違いされるぞ?


 俺は顔が赤くなるのを自覚しながらヒジリが出してきた参考書を見て目を通す。


 しかしこの子は微妙に距離感が近い気がする。人見知りで友達がナギとレンしか居なかったと言ってるから人付き合いの距離感が下手なのか?


 ヒジリも俺が微妙に照れているのに気が付いたのか、慌てて離れて俯いてしまった。


 やっぱりそうだよね?


「ヒジリ、あんまり距離感が近いと勘違いされるぞ? 別に俺は彼女とか居ないから構わないが……ヒジリがそう噂されると困る相手とかいるんじゃ無いのか?」


「あ、あわわ、そ、そそそん、そんな事……き、気を付けます……後、別に私友達少なから噂になっても困る事は……無いと思うかな?」


 後半の言葉はだいぶ小さかったが……


「好きな人とか居ないのか? 俺と噂になったら大変じゃないのか?」


 そう言った瞬間にヒジリの顔どころか耳まで真っ赤にしてうつむき始めた。


「い、いや……そ、そう言う人は……(居るけど……目の前に……)」


 うん? 居ないのか? まぁ居ないなら困る事は……いや、普通にあるだろうが!


 普段からつるんでいたんなら気にされないが、急に俺と行動し出したら間違いなく疑われるだろう。


 まぁこの場にレンとナギが居れば、3人の中に俺が混ざっただけになるのだが……いかんせん、最近は一緒に登校までしてしまっている。


 あの時は、前日に素直に賛辞を贈られた事に浮かれて変な約束をしてしまった。


 今思うと本当に後先考えずな行動をしてしまったものだと少し考えてしまったが……まぁ困らないなら良いんだが、本当に勢いって怖いな……。


「スマン、話が逸れたな。 気を取り直して選ぼうか。」


 流石にこの気まずい空気が続くのは遠慮したいので、本来の目的に戻ることを提案すると、ヒジリは慌てて頷いて参考書と問題集を選び直し出した。





「取り敢えずは……基礎的な事を重点的にして基礎点をしっかり取る方向で行きましょう。今回のテストは何とか凌いで、次の期末までに平均点を取れる様に教えていくね!」


「お、おう……よ、よろしく頼む。」


 何だろうか? いつの間にかテスト対策の筈なのに次の期末試験の話にまでなってしまった!?


 何故こうなった!? 別に俺はそんなに勉強したく無いんだが! 確かにケガしたから推薦での大学は怪しいよ?


 でもね、別に就職でも専門学校でも良いと思っていたんだよ。剣道をこの先続けるのかだって怪しいのに……


 いや、あの人に会うまでは……そう思っていたが、チャンスは後一年。全ての大会が終わるまでに会えなかったらそこまでの縁だったのかも知れないが……


 でも、少しでも前向きな気持ちになる感情をくれた、あの人に会いたい。その感情は燻り続けているのは間違い無かった。


 と、まぁそんな俺の感情は置いておいて、今の問題は勉強会ってテスト終わっても継続なのか!?


「な、なぁ……勉強会ってずっと継続するのか?」


「え? じゃあ、次の期末の時はどうするの? 基礎を押さえながら積み重ねていかないと、3年生で積んじゃうよ?」


 ヒジリは何を言っているの? と言った真顔の表情で聞いて来たのだが…。正論すぎてグゥの音も出なかった。


「そ、そうですよね……毎回迷惑を掛ける訳にはいかないよな……」


「だよね? 今回みたいにギリギリになって毎回慌ててたら、本当に留年しちゃうよ? だからナギちゃんも普段からレン君に教わっているんだよ?」


 ヒジリは少し怒った表情で片手を腰に当てて、少し前屈みで人差し指を立てながら詰め寄ってきた。


「そ、そうだな……頑張って時間を作るのでお願いします。」


 もはや逃げ道は無くなった。逃げればレンとナギにも追われるのが確定だ。特に部活が一緒のレンからは絶対に逃げられない。


 そんな事を思っているとヒジリがおもむろにスマホを取り出して何やらメッセージを確認し始めた。


「あ、後、レン君から今連絡があったけど……成績がヤバい人は今日からテスト期間終わるまで部活禁止で、赤点取らないようにって顧問の先生から言われたって……」


 何? 二週間の間缶詰で勉強しろと? この命令は1組の奴らの絶叫が聞こえて来そうな気がするんだが?



 ピロン



 時間差で俺にもレンからの通知が届いた。何故に俺の方が後なんだ?


『火神から聞いているだろうが、そう言う事だから。しっかりと火神先生の指導を受けて赤点を回避するように。俺はナギの方で手一杯なので2人で頑張れよ。』


 うっわ〜普通は教えるなら同性同士じゃねぇの? もうお前ら付き合ってます宣言しろよ! だったらこのペアリングも許してやるよ!


 そもそも女性耐性が無い俺が2人きりで勉強会だと!? お前は俺を殺す気か! どうしたら良いんだよ!


 ん? いや、冷静に考えたら普通に勉強するだけだよな? やましい事なんて無ければ何も問題ない筈だ。


 俺は気を取り直してヒジリの方を見て決意を新たにしようとすると、視線の先には各教科の参考書と問題集を持ったヒジリがにコレでもかと言う笑顔で待っていた。


「取り敢えず、オススメはこのシリーズだね。合計で結構行くけど……手持ちが足りないなら後日また買いに来る?」


 そう言われて、俺は財布の中と睨めっこするが……勉強の為と言えば、親父はともかく母さんは笑いながらもお金を出してくれるだろう……取り敢えず手持ち分で買えるだけでも買っておくか。


「取り敢えず買える分だけ……」


 俺は優先と言っていた現文を中心に買うのを選ぶと、残りを棚に戻そうとした。


「じゃあ、残りは私が立て替えておくね。時間が勿体無いしね。」


 そう言って足りなかった分の参考書と問題集を持ってレジへと進んでいく。


「え? えええ!? ちょい待て! 何でそんな金を貸す様な事をホイホイとするんじゃない! 母さんに言えば本代は貰えるから後で買いに来るから辞めなさい!」


「ん? だって時間無いし、それにタツミ君は真面目だから返してくれるって信じてるし。」


 不思議そうに返事をして来たヒジリだが、俺は逆にこの子は大丈夫なのか? と不安になってしまう。


「何で、この前知り合ったばかりの男を信用出来るんだよ? 今後ヒジリが騙されないか不安になるぞ?」


「だって、タツミ君の剣道見てれば分かるよ。正直で真っ直ぐだもん。性格がよく出ていると思うよ。」


 な!? それだけで信じるのか? いや、確かにちゃんと返すよ? でもその……何と言うか……


「さぁ、早くお会計して勉強を始めよう!」


 とても楽しそうな表情でヒジリはレジへと向かう。俺は自分が照れているのを自覚しながらも、頑張って気付かれない様に後ろをついて行くのだった。


 







 



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