インハイ予選
本日はインハイ予選当日です!
お約束どうりに私とナギちゃんは補助員で会場に来ております。
「流石に暑いわね。熱中症だけは気を付けましょうか。」
ナギちゃんは持参した団扇を仰いでいますが……可愛らしい扇子とからなら良いのですが、何と言うかお祭りで配られている様な団扇を持ち込んでいます。
流石にそれは止めておこうよ……レン君が遠目でも判る位ドン引きした顔をしているよ?
「ナギちゃん。ハンディファンが有るから一緒に使おうか? 流石に団扇は補助員の時は使えないし。」
私は親が持たせてくれたハンディファンの予備をナギちゃんに渡すと、物珍しそうに早速使い始めました。
「へぇ、意外とコレって風が強いわね。電池式だからバカにしてたけど、捨てたもんじゃ無いわね。」
ん? 電池式と言うだけで使って無かったのでしょうか? 初期の奴は効率が悪かったとお父さんも言っていたから、ナギちゃんのイメージは初期型の当時のままだったのかな? と言うか今使っているのは充電式だよ?
「最近のはミストが出たりと便利だよ? 熱中症予防にも良いからってウチの親が予備まで渡して来るから、今日はそれ使って良いよ。流石に団扇はレン君も引いた眼で見てたよ?」
「な!? べ、別に素の行動を見せてた方が良いじゃない。後でこんな筈じゃ無かったとか言われる方が嫌だわよ。」
ナギちゃんは照れ臭そうにしながらレン君の方を見て睨んでいますが、それに気が付いたレン君に手を振られると顔を赤くしながら軽く手を振ってます。
だから早く付き合っちゃいなよ!
「確かに今更だよね、ナギちゃんってレン君の前だと完全に素で行動しているもんね。」
「ちょっとヒジリちゃん! それってどう言う意味!」
私が呆れながら言うと、ナギちゃんは赤い顔のまま抗議してきます。
「そのまんまの意味じゃないかな? レン君もネコ被る様な女子は苦手とか言ってたんでしょ?」
「う……それはそうだけど……」
「ただ、団扇はもうちょっと可愛い扇子とかに変えた方が良いと思うんだ。ちょっとおっさん臭いよ?」
私の『おっさん臭い』発言にナギちゃんが驚愕の表情を浮かべてショックを受けていますが……気付いて無かったのかな?
「流石にそれは気を付けるわ……気付いたら教えてね?」
若干涙目になりながらナギちゃんが言って来ましたが……この子も色恋沙汰には今まで縁が無かったと言う事なのでしょうか?
いや、今更ですね。全員恋愛下手なのは明白ですから……。
そんなやり取りをしているとスマホにメッセージが届いていました。
『大会終わったら、勝っても負けても反省会と言う事で学校の駅近くのファミレスに行くと言う事になったから、そちらも上手く誘導してください。』
ふむ、ファミレスですか……チョイスがイマイチな気もします。二人ともお互いの好意は気付いているのですから、後押しする様な場所の方が良いのではないでしょうか?
初対面とか顔合わせが目的ならそれで良いかも知れませんが……この二人の場合はその段階を越えているので、いつもの会話で終わりそうな気がします。
タツミ君も恋愛下手なのがこの時点で理解出来ました。私達全員恋愛下手だ……これはさらに厄介ですね。私も人の事言えませんけど。
ん? でも待ってください。このタイミングで二人を合わせると言う事は、同行する私達も会うと言う事ですよね?
今回の補助員もタツミ君からの提案だったので、私がここに居る事に不自然さは無くなっています。なので私のストーカー行動は知られないと言う事です。
さらに、タツミ君からの提案で偶然バッタリとファミレスでレン君とナギちゃんが会わせるならば、そのまま私とタツミ君が知り合いになれると言う事です。
コレならこれからタツミ君とのコンタクトも不自然にならない様に取れると言う事になります! 何と言う逆パターンのラッキーでしょうか!
『了解しました。こちらも誘い出しますね。試合頑張ってください。』
そう返信して私はナギちゃんと補助員の集まりへと移動しました。
目的とはかなり違った方向ですが、タツミ君と不自然無く知り合えました。
ナギちゃんとレン君は協力するとは言っていましたが、中々上手くいきませんでした。けど結果として二人の行動のお陰で知り合えたと言う事は、人の縁って不思議だなと思い知らされます。
「ナギちゃん、大会終わったら学校の帰りにどこかに寄って行かない? 折角だから今日の事を少し語り合いたいな。」
「ん? 別に良いわよ。今日はレンがレギュラーで出るようだしね。後半からはタツミ君に切り替えて秋に備えて実戦を積ませるって聞いてたから、二人の批評をするわよ。」
んんん? それは初めて聞きましたよ? 相変わらず二人だけの会話が増えて来てますね。少しイジケちゃいますよ?
「私、それ聞いて無いんだけど?」
「え? アレ??? ご、ごめんなさい! ヒジリちゃんに伝え忘れてた! タツミ君とレンの二人とも鍛えて秋に備えるから、タツミ君も今回は補欠で登録されているけど確実に後半で出番が有るわよ。」
うん、そもそも、まだプログラムやメンバー表を補助員としてもらって無いから知らないんだけどね? ナギちゃんから次々とボロが出て来る気がします。
もうね、本当にサッサとくっ付いちゃってください! 単に惚気話を隠しながらされる気分になります!
「ナギちゃん……普段レン君とどれくらい話しているの?」
私がジト目で問いただすと、焦った表情で頬をかきながら目が泳いでいます。
「え? あ、最近は登校時間が一緒になり易いからその時とか……夜に勉強をスマホで聞いたり……。」
声がドンドンと小さくなっていきます。が、この時点で相当会話と言うか、仲が進展してますよね?
「ふ~ん、で、土日はどうしてるの?」
私の言葉にビクッと体を跳ねる仕草をすると、気まずそうに両手の人差し指を合わせてモジモジしています。
「え、え~っと……ほら、私の成績ってギリギリじゃない? だから部活が終わった午後はレンの家で勉強を見てもらってます……。」
え? は? はいぃぃぃぃぃ!? それっておうちデートじゃないですか! 何ですかこの二人は!?
「ねぇ、本当にレン君と付き合って無いの? 怒らないから言ってごらん。今なら何が有っても許すからね? 正直に話そう? ね?」
「え? ちょっと、何? ヒジリちゃん!? 顔が怖いわよ! 笑顔なのに目が笑って無いわよ!? そんな表情初めて見た!」
私の目は笑って無いらしいですね。うん、正直に話したら元に戻ると思うよ? そこまでの関係で付き合って無いとか……ねぇ? 皆さんどう思います?
「普通は付き合っても居ない男子の家にお邪魔したりしませんよ?」
「え? そ、そう言うもの? ほら、中学の時はよく3人で勉強会してたじゃない?」
「あくまで3人だよね? 今は2人でだよね?」
私の言葉で急に何かを理解したのかみるみる顔が赤くなっていきます。
「あ、いや、だってレンのお姉さんが遊びに来てって言うから、勉強会と言う事でちょくちょくお姉さんとも会ってたりしてるから……。別に、本当にレンとはちゃんと付き合って無いわよ!?」
お~っと……既にお姉さんまで味方にしていると言う事ですね。
既に外堀から埋めていますねこの子は……天然でやっているんだとしたら恐ろしいです。
と言うか『ちゃんと付き合って無い』と言う表現も如何な物なのでしょうか?
「分かったけど……言い方気を付けた方良いと思うよ? 『まだ付き合って無い』の方が誤解を受けないと思うなぁ……。」
そう指摘して私は補助員の点呼に向かいました。ナギちゃんは一人でしまったと言う顔をして顔を余計に火照らせながらゆっくりと歩いてきました。




