その後の帰路
あの後、私達は学校でコンタクト取ることなく帰路につくことになりました。
私の方はナギちゃんと放課後に合流して一緒に帰る事になったのですが、昼の出来事が有ったのでどんな表情で話せば良いのか悩んでしまいました。
「ヒジリちゃん? 何か様子が変だわよ? 大丈夫?」
ナギちゃんが何処となくぎこちない私の表情に気が付いたのか様子を伺って来ました。
「え? そうかな? そ、そんな事無いよ?」
「そう? まぁ良いけど、そろそろインハイ予選だけど今回も補助員やるんでしょ? レンからの情報だとタツミ君は復帰したらしいから今回は出てくるかもよ?」
「本当!? 久しぶりに試合が見れるかも知れないんだね!」
私はナギちゃんからの情報を聞いて久しぶりに見れるかも知れないと解ると、自分でも判る位に表情が笑顔になったのでした。
「ふふふ、楽しそうね。レンも出れるかどうかは部内選抜でどうなるか次第とか言ってたから、まだ確定じゃ無いけど楽しみになるわね。」
そう言いながらナギちゃんも笑顔で歩いています。と言うか……ナギちゃんもレン君の試合を見たいんだよね? 言葉には出さないけど態度に思いっきり出てます。
「ナギちゃんもレン君の試合が楽しみのようだね。今回は二人ともレギュラーで出れると良いね。」
茶化す様に少し意地悪く言うと、ナギちゃん照れながらも素直に首を縦に振りながら答えて来ました。
「そりゃそうだわよ、ヒジリちゃんと一緒。好きな男が活躍する所は見てて楽しい物じゃない?」
「ナギちゃん……段々とストレートに言うようになって来たよね?」
私が少し呆れながらも、羨ましい態度を取れるものだと感心してしまいました。私は恥ずかしくて言えない自信が有ります、単純に性格の差なのでしょうが羨ましいと思ってしまいます。
「レンの場合は奥手過ぎるのよ! だからもうちょっとストレートに攻めてみる事にしたのよ。」
拳を固めながら天を見て何かを誓っている様なポーズを取っていますが……だったらホワイトデーにヘタレて義理とか言わなければ良かったのに……。
え? 自分はどうなんだと? アーアーキコエマセンー。
「そう言えばレン君からのお返しのシュシュは何と言って渡されたの? 告白系とかは無かったの?」
「あ~、あの時は……。」
ナギちゃんが微妙そうな表情で語り始めたのですが、要するにレン君もヘタレていつもの様に夫婦漫才を展開する事になった様です。
「だって普通はあの中身見たらなんか言うわよね!? 何でスルーする上にお返しが黙って『コレ、お返し。』しか言わないのよ! せめて気の利いたメッセージかカードを添えるわよね!」
えーっと、バレンタインのチョコの中はハート型なのに『義理だけどありがたく食べなさい!』のメッセージカードを入れた人に言われたくは無いと思うよ?
ここばかりはレン君に同意したいけど、女の友情の為に黙認しましょう。
「まぁ、普通は有ってもいいかもね。でも可愛いプレゼントを選らんだと言う事で許してあげたら? と言うか本当に二人とも素直じゃ無いんだから……。」
私が呆れながら言うとスマホに通知が来た音が響いた。
「珍しいわね? お母さん辺りから?」
お互い普段は鳴らない通知音が聞こえて物珍しそうな表情になります。私達のスマホの着信がある場合は大体レン君からのグループチャットか、親から位です。
そこ! 友達居なさ過ぎとか言わない様に! 二人とも気にしているんですからね!
「え? あ、ゴメン。ちょっと急いで家に戻らないといけないみたい。お母さんが用事有るって。」
「あ、そうなのね。解ったわ、気を付けて帰ってね。」
「ゴメン、またね!」
私はスマホをコッソリと確認して慌ててカバンに戻すと、ナギちゃんと別れて素早く駅に向かいました。通知はお母さんからでは有りませんでしたが、最優先事項の連絡が来たのでした。
『今日は病院に行く日で、部活を休むのでどこかで落ち合わないか? 最初は情報量が多いから直接話した方が良いと思うんだがどうだろう?』
家に帰ってからゆっくりスマホで連絡を取り合うと思っていたのにいきなりコレですか!? 何と言うか傍から見たらデートの待ち合わせの約束をする様な気分で緊張してしまいます!
でも、落ち合うとしてもナギちゃんやレン君に遭遇しない場所って……家の近くの駅前位だよね? 私とタツミ君の最寄り駅は同じなのは知っているし、レン君とナギちゃんは最寄り駅が全然違う場所です。
『私の家の最寄り駅が、前沢駅と言う所なのですがタツミ君の家の最寄り駅はどこでしょうか? ナギちゃんの最寄り駅が湯沢駅なので、レン君の最寄り駅と被らない駅で落ち合いませんか?』
私は答えを知っているのに敢えて知らないフリをしてメッセージを送りました。まぁ結果は解っているのですがね。
『偶然だな、俺も前沢駅が最寄駅なんだ。そこの東口側で落ち合おう。17時頃には病院から帰れる筈だから、少し待っててくれ。ちなみにレンは水沢駅だから会う事は無いだろう。』
予想どうりの答えが来ました。待ち合わせまでは少し時間が有りますから一度家に戻って荷物を置いてきましょう。今日はインハイ予選の補助員用の資料も貰ったから一度置いて来ないといけません。
私は足早に駅へと向かいました。
そしてその時、私は気付いてしまったのでした。
インハイ予選で補助員をやる場合、間違いなくタツミ君と鉢合わせてしまう事に。そして補助員の話は受けてしまっているので断れない事も。
そして今回の場合はレン君にもナギちゃんにも相談できない内容な上に、マスクや帽子で誤魔化そうにも知り合っているので確実に気付かれます。
あれ? もしかして私最初から結構なピンチに陥ってませんか?
どうやって誤魔化しましょうか!? たまたま補助員を受けたのが今回だけだったとウソをつくべきでしょうか? でもその場合、実は……とネタバラシになった時に嘘つきのレッテルが付いて来ます。
でも正直に言い過ぎるとずっと見てきた事がバレると同時に、バレンタインを渡していたのが私では無いかと言う疑問に直結する可能性も有ります。
どこまで話すべきかの匙加減が判りません!
こういう場合は……どうしましょうか……もうなる様にしかなりませんよね! 真実だけを話しつつも一部隠して伝えるしか有りません! ヤバそうな時はレン君とナギちゃんの話題に切り替えましょう!
そんな事を考え込んでいるうちに私は自宅に着いたのでした。




