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昼下がりの密談

 失敗した……時間が無かったとはいえ、いきなりあんな誘い方をしたら不審者じゃ無いか。


 俺は頭を抱えながら約束場所に指定した非常階段口の階段に1人で腰をかけて待っていた。


 今朝のレンと六波羅さんの様子を見て若干イラついていたのも有るが、丁度廊下を歩いていたら火神さんが目の前で教室に入って行くのが見えた。


 2人は一緒に登校して来ているから、今は完全に火神さんが1人なのは確実だ。ならば相談を持ちかけるなら今しかない。


 昼になればいつも六波羅さんと一緒に行動をしているのを知っているからだ。たまにそこにレンが混ざる事が有ると言うのも知っている。


 今こそ千載一遇のチャンスと思って声を掛けに行ったが……色んな意味で失敗した!


 これで不審者と思われてナンパ野郎とか伝聞が広がったら確実に残りの高校生活が色んな意味で終わる!


 本気で火神さんが来なかったら、俺の高校生活が終わる! お願いですから来て下さい! 俺は神に祈る様に目を閉じて待っていた。


 キィィィィ


 俺は後ろの扉が開く音を聞いて振り返ると同時に腰辺りまで伸びた長い髪の少女の姿が見えた。


「あああ、あの……相談って、ななな、何でしょうか?」


 俺はその姿を確認して安堵のため息を吐いた。本当に良かった。


「本当に来てくれるとは……ありがとう。あのままだったら変人扱いで高校生活が終わる所だった。」


 俺の心配していた事を伝えると、火神さんは不思議そうに首を傾げていた。と言うか顔がビックリする程に真っ赤になっているのに気が付いた。


 俺何かしたっけ? もしかして何か変なこと言った?!


「あ、あの……緊張してる? 言っておくけど本当に相談事があって……何と言うか急に話しかけてゴメン。驚いたよな?」


 変な緊張がこちらにも伝わってきて何と言うか上擦った声になっている。それを察してか火神さんも余計に変な緊張をしているのが伝わって来た。


「い、いえ……た、確かに驚きましたが、と、ところで相談って、なな、何でしょうか?」


 思いっきりどもってますね……そりゃそうだよな。でも初対面の人の呼び出しに来てくれる位だから根はとても優しい子なんだろうな。


 ちょっとおとなしめの性格っぽいが、落ち着いた雰囲気で綺麗なロングの黒髪……よく見たら結構好みのタイプなのでは? そんな邪な考えが少しだけ横切ったが、本題を忘れてはいけない。


 しかし、何と言うかこの場面だけ見たら本当に告白のシーンだよな、まぁ言ったところで絶対に断られるのが目に見えているから言わないけどな!


「改めて自己紹介をしようか、俺は2年1組の『工藤 辰巳』で剣道部だ。『鳴海 蓮』とは小学校から長い付き合いでね、今回はアイツの恋路にちょっかい……では無くて手伝いをしたいんだ。」


 簡単に事情を説明すると、火神さんも相変わらず緊張した面持ちで自己紹介を始めた。


「ええ、えええ、えっと、私は6組の『火神 聖』です。ど、どど、どうぞ、よよよ、よ、宜しくお願いします。あ、あああ、あの、ひ、人見知りなんで……なな、な、慣れるまでは気にしないで下さい……」


 う~ん、人見知りと言うレベルなのだろうか? どんだけ対人スキルが無いんだこの子は? ちょっと色んな意味で不安になって来たぞ。別の協力者を探した方が良いかな? でも今更後には引けない、話を始めよう。


「えっと、簡単に言うと。レンの気になる子が『六波羅 凪』さんって事は分かったんだが……あ、名前の情報はクラス分けの時の着席順で調べました……変なストーカーとかじゃ無いからな!」


 慌てて不審者になる様な情報をどうやって調べたかを伝えると、火神さんはキョトンとした顔でこちらを見ていた。まるで「それ位普通じゃ無いの?」と言いたげな表情なのが逆に気になった。


「も、もしかして私の名前もそうやって調べたの?」


「あ、火神さんの名前もそれで調べた。勝手に調べて申し訳ない。」


「あ、良かった。そっちから調べたのね……」


 ん? 何か別の方法でも調べられた様な口ぶりに聞こえたが、つぶやく様に言っていたので聞かなかった事にしよう。


 と言うか他の方法って何か別の接点が有ったのだろうか? もしかしてレン絡みでそっちから逆に聞く事が出来たと言う事か?


 でも俺から火神さんへの接点って何も無いから調べるも何も無いだろう?


 取り敢えず今は考えても仕方ないので本題に戻そう。


「あ、それで本題なんだけど……レンの奴って六波羅さんの事を確実に好きだと思うんだが、火神さんはどう思う?」


「え、ええ、えっと……く、工藤君はどこでその事を知ったの? 私の方から詳しく話す様な内容じゃ無いというか……か、勝手に話して良い様な内容じゃ無い様な……」


 困った様な表情を浮かべながら茹でタコの様な真っ赤な顔でうつむいている。


 うん、初対面の人とは顔見て話せない程の人見知りなのか? 何と言うかこれはこれで可愛いと思えるが……この様子だと友達出来るのか不安になる子だな……。


 おっと、脱線しがちだが……確かに探る様な言い方はダメだな。俺の方が持ちかけているのだから、俺から知ってる事を話すのが筋だよな。


「そうだな、俺から持ちかけた話だからな。俺が知っている範囲の話をするな。その上で火神さんがどこまで話せるかを決めてくれ。」


 俺はそう決めて勝手にホワイトデーの話を基本にして知っている事を火神さんに話し始めた。


 中学の卒業式の件から、プレゼントを一緒に選んだ事などを伝えた。


 途中何度か驚いた様な呆れた様な表情をくり返している。コロコロと変わる表情は見ていて面白かった。


 今は俺が一方的に話しているだけだけど、こういう風に女の子と話すのは久方ぶりな気がする。何か今更緊張してきた。


「という事で、俺が知っているのはコレくらいだ。流石の俺でもレンが六波羅さんに好意を抱いているのは解ると言うのが現状だな。後は今朝は一緒に登校しているのを見たが……もう夫婦漫才じゃねーかアイツら!」


 話しているうちにいつもの口調に戻ってしまったが、火神さんも落ち着いて来たのか段々とタコの様な赤から今はイカの様な綺麗な白色の肌の顔がよく見えた。


 よく見ると本当に端正な顔だちと綺麗な肌をしているな、それに何と言うか落ち着かせる雰囲気をもっている。


 自然に色々と気軽に話せたと思うが、不慣れな俺がこう話せるのだから、この子は何と言うか独特な雰囲気を出す子なのかも知れない。


「と言う事で、ここまで話して火神さんが話せる範囲で構わないので、話しを聞かせてもらえないだろうか? そしてあの2人がお互いに好意があるならくっ付ける手伝いをして欲しい。」


 俺の出来る事はしたつもりだ、後は火神さんの番だ。彼女が何と言ってくれるか俺は緊張して待つ事になった。


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