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登校時の一時

 もうすぐ完全に散りそうで儚さを残す桜に目を奪われつつ、俺はいつもの通学路を一人で歩いていた。いつもならそろそろレンと遭遇する頃合いなのだが、今日は何故か居なかった。


 そう思った次の瞬間、俺は衝撃的な現場を見つけた。


 レンを見つけたので後ろから声を掛けようとすると違和感に気が付いた。そう、隣に例のお団子頭の女の子がいる!? それも結構気さくに話しているのだ。


 俺は何か信じられないモノでも見ているのだろうか? 取りあえず少し後ろを付けて様子を見てみよう。と言うかアイツ普通に仲良く話してるじゃないか!


 そして六波羅さんの方をよく見ると、ホワイトデーにレンが送ったであろうシュシュが巻かれていた。やっぱりレンの意中の子は六波羅さんで間違いない様だ。


「インハイ予選はどう? 自信が有るの? 流石にそろそろレギュラー狙わないと大学は推薦狙えないわよ?」


「だから俺は別に推薦を狙っている訳じゃない。普通に勉強もしているだろう? むしろナギはどこの大学に行くつもりなんだよ? そろそろ絞らないと間に合わないぞ?」


 ほほう、既に六波羅さんとはお互いに名前で呼び合う仲なのか。って本当にコイツ付き合って無いのか? 距離感も何と言うか……恋人の距離感じゃないのか?


 そんな事を思っていると、六波羅さんは悩み込んだ顔をしてからレンの方を向き直し、何かひらめいた様な顔をした。


「じゃあ、レンが行こうとしている大学教えてよ。そして、私もそこに行ける様に勉強を教えてくれない?」


「お前な……、今から俺に追い付く気かよ。せめて火神に教えて貰えよ。」


 レンが面倒臭そうな顔をしているが、いつもの本気の拒絶の表情では無いのが分かる。これは珍しい事も有る物だ。


「コイツ……普通はそこは二つ返事でOKと言う所でしょうが!」


 そう言うと女の子はレンの脇腹に横から拳を入れた。結構強めにいったな……。よくアイツ怒らないな……今までのレンからは全く想像が出来ないな。


「お前な……、ドSの性格は仕方ないとして物理的にドSになるのはやめてもらえますか?」


「何を言ってるのよ、デレの部分をスルーするからツンの部分が飛んで来るんでしょうが!? いい加減学習しなさいよ!」


「お前、自分でツンデレ言ってんじゃねぇよ。そう言うのはこっちが言うもんだろうが!? そして地味に痛いぞ。」


 何だろう? こいつら付き合ってる感じしか受けないんだが? 一連のやり取りも夫婦漫才か痴話喧嘩にしか見えないんだが? これは俺も声を掛ける雰囲気じゃないな……。

 

「女の子に叩かれて痛いとか言わないの! もうすこしデリカシーと言う言葉を覚えたらどうかしら?」


「そこは、ゴメンね? 痛かった? とか言って謝る所じゃ無いのか?」


「あー、そうでしたね。どうせ私はおしとやかじゃありませんから!」


 そこまで言うと女の子の方はそっぽを向いて頬を膨らませている。今時あんな怒り方をする高校生が居るのかと思ったが、彼女なりの愛情表現のようにも見えたのだった。


「別にそこまで言ってないだろうが、機嫌直せよ。」


 レンが困った表情で顔を覗き込んでいる。そして思うが、ヤッパリ距離感近いよな? どう見てもアレは恋人の距離感だと思うんだ。


「だったらちゃんと最初の質問に答えなさいよ。真面目に聞いてるのに。」


 あらら、女の子の方も照れて余計にそっぽ向いてますよ。何だか邪魔したい気分になって来たんだが、絶対恨まれるから辞めておこう。


「大学か? 真面目にまだ考えてないんだよな。学部はある程度決まっているけど、家から通える範囲が理想的かな?」


 レンは姿勢を直して両手を頭の後ろに組んで空を見上げながらつぶやく様に言いだした。実家暮らし前提なのかよ……。


「人に言っておいて、まだちゃんと決めて無かったの?」


 女の子の方も呆れ顔になっている。その様子を横目で見たレンは質問を始めた。


「ナギは近くの大学が良いのか? それとも都会の方へ行くのか?」


「私は自分の学力に有った所かしら、学部はまだ決めて無いけど現実的な選択肢から自分の理想に近い所を探してみるつもりよ。」


 そのセリフを聞いて、レンは少し溜息をついてから女の子の方にしっかりと顔を向けて真面目な表情になる。


「上手く伝わらない様だからハッキリ言うが、俺はお前が行く大学と同じところか近い所に行くつもりだ。だからどこら辺に行くのかと聞いたんだが?」


「ぇ? それってどう言う……?」


 女の子は足を止めて鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔をしている。俺も思わず足を止めてしまった。多分女の子と同じ様な顔をしている自信が有る。


「……だから、お前との友達付き合いを大学行っても継続するならその方が良いだろう? スマホだけで繋がってるのは友達とは言わないだろうが。」


 おい! 何でそこでヘタレるんだ! 今のはさり気無い告白の流れじゃ無いのか!


 流石にその子はお前に気が有るのは俺でも解るぞ!? 顔を真っ赤にして照れてる場合じゃ無いと思うんだが!?


「友達ね……はぁ、レンにしては頑張った方かしらね。まぁ今はそれで良しとしましょう。」


 女の子は大きなため息をついたかと思うと、前を向いて再び歩き出した。レンも気まずそうに横に並ぶように歩き出す。


「でも、選択肢の幅が増えやしたいから勉強は教えてよね。……私のせいでレンの選択肢が減るのは嫌だから。」


「勉強は教えてやるよ、って最後に何て言ったんだ? 小声過ぎて聞き取れなかったんだが?」


 うん、そこは聞き取れない様に言ったんだと思うんだがな。お前はフラグをへし折る気か? そのフラグを大事にしろよ。


「良いのよ! 別に聞こえて無くても! 取りあえず部活が無い日は頼むわね。少しでも成績を上げたいから。」


「そ、そうか? 分かった。」


 顔を真っ赤にして言ってますよ。この子完璧にツンデレだな。まぁレンも嬉しそうだし親友として応援しようじゃ無いか。


 しかしこの女の子結構攻めてる気がするが……レンも鈍感系を演じているのか? 何と言うかもどかしいなこの二人は!


 こうなったら、やはりお節介かもしれないが火神さんとやらとコンタクトを取ってこいつ等をくっ付けよう作戦を敢行するべきだな。


 ん? お節介すぎるって? まぁからかって遊ぶ目的も有るんだがな! あ、もちろんレンの方だけの限定です。女子はからかっちゃダメです。


 そんな事を考えながら俺は学校に向かったが、その様子をさらに後ろから見ている人が居ようとは気付かなかったのだった。

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