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レン君のホワイトデー

 本日は3月13日、まだこのクソ寒い中、俺れ家のコタツで寛いでるつもりなのだが……真正面に招かれざる客が居た。


「という事でお前も今後のために付き合え、さぁ行くぞ。コタツから出るぞ。」


「嫌だ、何で俺が付き合う必要がある? それにホワイトデーのお返しをしないといけないのはお前だけだろうが?」


「じゃあお前は例の子に出会えた時に何のお返しの準備もしないと言うのか? ただでさえお前は三年分のお返しが溜まっているんだ! 3倍返しの約束で行けばもうすぐ10倍を超えるぞ!? 20倍まで行ったらお前は耐えられないぞ!」


「どこの漫画の何の技だよ! そもそも手作りチョコに値段つけて3倍返しって基準が意味不明なんだよ!」


 俺たちの口論が続いていると部屋から父さんが顔を出してきた。


「タツミ、これで買って来い。父さんは二日酔いで頭が痛いんだ……レン君。こいつを連れてってくれ。」


 そう言って俺に千円札を渡すと青い顔のまま再び部屋に戻っていった。


「アレは早々に家を出た方がよさそうだな。」


 レンが気の毒そうに言うが……俺が一番関係無いと思うんだが? でも拒否権は無い様子なので諦めてコタツから身を乗り出すが……親父よ、今時千円は安過ぎないか? 電車賃で下手すりゃ消えるぞ?



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「で、いったい何を送ろうとしてるんだ? ある程度の当ては有るんだろうな?」


 レンに聞いてみるが目が泳いでいる。これはマジで考えがなくて困ってたな?


「何か良いアイデアはないか?」


「どんな相手なのか分からないのに俺が選べるわけがないだろう? 特徴とか好みとかは?」


 俺の質問にレンは困ったような顔をしているが、説明が難しいのか?


「写真とか無いのか? そこまでの仲なら1枚くらいは有るだろう?」

 

(写真は有るんだが……アレには火神も写ってるから見せられん! 困った!)


 レンは何かを考え込んでいるが……まさか写真すら無いのか? しかしコイツにチョコを渡しそうな人って誰なんだ?


 そう言えば1人だけ思い当たる人がいたのを思い出した。


「もしかして……卒業式でお前を迎えに来たお団子頭の子か?」


「え? タツミが一度だけで人の顔を覚えているだと!?」


 思いついた事を言ったが、レンが酷くビックリしているのはどうかと思う。俺だってたまには覚えてる事もあるぞ?


「それにお前始業式の日に俺と別れた後話し込んでただろ?遠目だけど見えてたぞ?」

 

 俺の続くセリフでレンの表情がさらに驚きの感情を膨らませていた。


 おぃ、流石に人の事を何だと思っているんだ? 親友が卒業式に女の子と待ち合わせていたらその相手の顔くらいは少しは記憶に有るものだろうが?


「お前は俺を何だと思っているんだ? 流石に勉強は苦手だけど、対人関係までバカじゃないぞ?」


「いや、タツミは基本的に人の顔を覚えないだろうが! どうした急に!? 熱でも有るのか!?」


「お前な! それは兄さん絡み限定だ! あんな集団のことを一々覚えていられるか!」


 追っかけ集団の事なんか覚えていられるか! それと自分の周りに関係ある人を覚えるのは全然違うだろうが!


 全く、レンは俺の事をどう認識しているのだろうか? 流石にこれは怒っても良いのでは無いだろうか?


「お前は言う程に人の顔を覚えてないぞ……コレだから鈍感男は……」


 レンが小声で何か呟いた様だが、人混みの喧騒で微妙に聞き取れなかった。


「何か言ったか?」


「いや、何でもない。それより顔を覚えているならイメージし易いだろう。タツミはどう思う?」


 うーん、顔は思い出せても性格が悪わけじゃ無いからな……と言うかコイツの意見は無いのか? もう少しヒント出せよ。


「ちなみにその子の好きなキャラクターとか趣味とかは知らないのか?」


「そうだな……女子らしい趣味は聞いた事無いな、弟の影響でゲーム好きで、格ゲー以外は大体やるそうだ。ちなみにオンラインではガンシューティング系が好きらしいな。」


「……ホワイトデーにモデルガンなんか送ったらそのまま脳天ぶち抜かれそうだな。」


「流石に俺でもそんな事はしねぇよ!?」


 流石のレンもこの選択肢は消してたか、まぁ色気も何も有ったもんじゃ無いからな。


「それじゃそこの店に有る様な物はどうだ?」


 丁度目に入ったショップの展示を見て指さすと、そこには女性向けの小物が揃っているお店が有った。


「あの子ってお団子ヘアーにしてるけど特にバレッタとかシュシュみたいな物は付けてなかっただろ? そう言うのはどうだ?」


「あー、言われてみれば癖毛のせいで髪を纏めるのが大変だからお団子ヘアーにしているだけ、とか言ってたからアクセサリー系を付けているのは見てないな。」


「あそこなら男だけで見ても変な視線で見られる事はないだろう? 無難そうなら行くぞ。」


 レンの反応を見てから2人でそちらの店の方へと移動すると、店員さんが最初は訝しそうに見て来たが、すぐに何かを察したのかこちらへ向かってきた。


「彼女さんへのプレゼントですか?」


「ああ、まぁそんな所ですね。髪をお団子に纏めている子なんですが、何かその時に使えそうなのはありますか?」


「お団子ヘアーですか、そしたらシュシュの方が良いかも知れませんね、あとは気分転換に髪型を変える時に使う物も良いかも知れませんよ?」


「癖毛で大変と言ってましたから、そんな子でも使えそうな物ありますか?」


 店員さんとレンの話が勢いよく進んでいく。これは俺が来る必要があったのだろうか?


「お兄さんもプレゼントですか?」


「あ、いえ……」


 別の店員さんに声を掛けられて違うと言おうとしたが……店員さんの後ろに男が居たら変態扱いされる物が見えて咄嗟に答えるべき返事をした。


「そうです。彼と2人で一緒に探していたんですが、髪の長い子なのですがバレンタインのお返しに何か良いアクセサリー有りませんか?」


 うん、店の奥の方に気がついてなかったが、これは男が入って来たら定員さんも訝しがる訳だよ! この状況だと俺も同じと言わないと変態扱いが確定される!


「そうですね、普段何かつけてらっしゃるのですか?」


「いえ、綺麗な髪なので普段は何も付けてないですね。そう言う子にはどんなのが良いでしょうか?」


 俺もウソとスラスラとついて接客してもらう。もはや理想の彼女の前提で話を進めよう。予算を先に伝えると定員さんも親身に探してくれている。


 何かゴメンナサイ……商品は買うので許してください。


「タツミ、決まったから会計してくるな……ってお前も何で買って……」


 レンがプレゼントを決めて俺の方に来たが余計な事を言いかけたので素早くレンの口を塞いで黙らせた。


「レンも決まったか! さぁ早く買って明日どうやって渡すか考えようか!」


 俺はレンに店の奥を見るように視線を送ると、レンもすぐに察して足早に2人で会計を済ませて店を出た。


 定員さん達から見たら俺達は不審者だっただろうな……今日がホワイトデー前日では無かったらもっと危険な視線を送られていただろうな。


 見送ってた店員さん達の笑顔がどっちの意味の笑顔だったかは当人しか知らないだろう。


 俺とレンは気まずそうな表情で帰路についたのだった。


 と言うか……この髪飾りどうしよう? 身を守る為に買ったが……使い道がねぇぇぇぇ!



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