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3回目のバレンタイン

 本日は2月13日! 明日は高校最初のバレンタインです! 本日のクッキング会場にはゲストのナギちゃんが来ております!


 え? どこの料理番組かですか? 会場は私の家ですが、ナギちゃんと明日の為のチョコを一緒に作ろうとなったのです。


 でもね、ギャラリーのお父さんとお母さんが台所の影からこちらを見ているので集中できません! ここは料理番組じゃ無いのでギャラリーは不要なのですが!


「お父さん、お母さん。視線が気になって集中できないんだけど?」


「「お構いなく」」


 両親は口を揃えてそう言うと、その場から動く様子を見せませんでした。本当にこの両親は過保護なんだから……聞いていたナギちゃんも呆れています。


「何と言うか……ヒジリちゃんのご両親って過保護? 視線が凄いわね。」


「う~ん、お友達を家に呼ぶ事が初めてなのも有るかも?」


 私の発言を聞いてナギちゃんは驚いた顔でこちらを見て来ました。


「え? 私が初めてなの? 小学生の時とかは?」


「そもそも体が弱かったから、誰かと一緒に遊ぶと言う事自体が少なすぎたのよね。」


「何と言うか……私がお友達1号みたいな扱いなわけね、何となく解ったわ。まぁ光栄に思っておくわね。」


 私が自虐気味に言うとナギちゃんは複雑そうな表情をしていました。普通の子ならここで沈黙になるのでしょうが、ナギちゃんは良くも悪くもストレートに物を言います。私の場合はそんなナギちゃんだからこそ気軽に付き合えるのでとても助かります。


 こう考えるとグイグイ来るナギちゃんと私は相性が良いのだと改めて思います。


 タツミ君はどんな感じで会話をするのでしょうか? レン君と気が合うのだから似た様な感じなのかしら? 最初は流石に緊張して私みたいになったりして? いや、それとも最初からお兄さんがらみと警戒されて会話にすらならないとか?


 いや、普通に知り合えれば問題無く話せる筈です! しかしよく考えるとタツミ君が女子達と話している姿ってほとんど見た事が無いのでイメージが出来ません。何故にそう言う状況なのかレン君に後で確認してみましょうか。 


「おーい、ヒジリちゃん。妄想の世界から帰って来なさい~?」


「え? 別にそんな事無いよ?」


「ウソ言いなさい。さっきから湯せんのチョコが溶けてるのに混ぜて無いわよ? 早く牛乳入れないと石の様なチョコになるわよ?」


 そう言って指摘されたボールの方を見てみるとチョコの水分が抜け過ぎているのが見えて、慌てて牛乳を入れてかき混ぜました。


「相変わらず妄想にふけると周りが見えなくなるわね……頼むから料理中はやめてよ?」


「あ、ご、ごめんなさい。確かにちょっとボーッとしちゃってたね。」


「ちょっとじゃなくて、思いっきりでしょうが。」


 ナギちゃんは呆れた顔をしながらも手だけはしっかりと動いていた。手つきも慣れたもので結構慣れているのでしょうか?


「しかし、ナギちゃんって手つきが慣れているよね? 普段からお菓子作りとかするの?」


「ん~慣れていると言うか、うちの親って共働きな上に放任主義だから料理とかは自分で覚えないといけなかったと言うか……」


 困った様な表情で返事が返って来きましたが、内容を聞いて何と返して良いか悩んで固まってしまいました。


「あ、いや。別に育児放棄とかじゃなくて、帰りが遅いとご飯が中々食べれなくて、それでお腹が空いて我慢出来なくて自分で作って先に食べてたってだけだわ、それに弟も居たからあんまり遅くなるとね。」


 いや、お腹空いて待てなくてって部分はどうなのでしょうか? ご両親の帰って来る時間帯にもよりますが、食いしん坊で待てなかったのかどちらなのかな? 


「ん? ナギちゃんって弟君居たの? 初耳なんだけど?」


「あれ? 言って無かった? 私のゲーム趣味は弟がやっていたのを付き合いで一緒に遊んだら、私の方がハマってしまったって……」


 ナギちゃんがそこまで言いかけて完全に固まってしまった。ふ~ん、そう言う事ですか。


「ねぇ、それってレン君に言った内容よね? 私は聞いて無いんだけど?」


 私のジト目の質問にナギちゃんの顔は急に赤くなっていく。


「あ、あれ~? ヒジリちゃんもその時居なかったっけ? あ、あははは、ま、まぁ気にしないで。」


「別に構わないけど……そっちも上手く行くと良いね。レン君は2次元を卒業して3次元に戻って来そうなの?」


 ナギちゃんがレン君に好意が有るのは既に分かっている事なので、私もリアクションを楽しみながら少しだけ意地悪く言うと、少し難しそうな顔をしています。


「そこは解らないわね。結局は『3次元に興味を持てるような人が居なかっただけ』とはレンは言ってたんだけど、少しは期待しても良いのかしら?」


 う~ん、それってほとんどナギちゃんに興味を持ったよって言っている意味だと思うんだけど? 今までの二人の行動で別に気になる人が居ると言うならば私は見てみたいです。


 むしろコレで他の本命が居たら、私は絶対に人間不信になれる自信が有りますけどね!?


「いっそ踏み込んだ方が早いんじゃない? レン君も満更じゃなさそうだしね。」


「聞いてみたいけど……もし違ったら今のこの楽しい関係が崩れちゃうじゃない? そう考えると何となく怖いと言うか何と言うか……。それにホラ、私ってこういう性格だから男受けが良くないと言うか……」


 私はシレッと言うけど、万が一にでも違ったら私達の関係がどうなるかを考えてナギちゃんは行動を移しきれてない様子です。


 言いたい事も解りますが、ナギちゃんも結局の所は私と一緒で自分に自信が無いのかも知れないと思いました。


 根底には広い意味での友達付き合いが上手く出来なかったと言う時期がお互いに有るので最後の最後で自分に自信が持ち切れない。そんな心に刺さった不安と言う名のトゲがいつも邪魔をしてくると言う感覚が何となく解る気がしました。


 だったらレン君が告白する様に仕向けるしか無いですね。でもよく考えたらレン君も行動は男前なのに彼女が居ないと言う時点で奥手なのでしょうか?


 そう考えるとやっぱり私達全員が恋愛下手だと再認識させられてしまいます。


 でもこの二人はお互いに好意が有ると解っている私が居るのですから、何とかしてあげないといけませんね!


「大丈夫だよ、ナギちゃんの良い所が分かればそこが好きって言う男子も居る筈だよ? もっと自分に自信を持って!」


 そう言って私は再び手を動かし始めました。ナギちゃんも一瞬ポカンとした表情を浮かべた後、頷いてお菓子作りを再開しました。





 その後、私は今年のメッセージを何にしようか悩みましたが今年もシンプルにしました。


『大会に出場して活躍する姿を楽しみにしてます。』


 秋の姿は見れなかったけど、絶対に戻って来ると私は信じてます。何か有ったのかも知れないけど、タツミ君なら乗り越えて来ると自分勝手に信じて。



 え? ナギちゃんはどうなったですか? あの二人は……相変わらず素直になれないまま甘酸っぱい雰囲気で義理と言って渡してました。


 中身を見たら、絶対義理じゃ無いだろう! ってツッコミが飛ぶようなチョコなのですがね……。まぁそれも二人らしくて良いのですが。




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