初詣
高校に入って最初の元旦を迎えました。今日はタツミ君の誕生日です。お祝い出来る様な関係に早くなれます様にと神社でお願いをしております。
「お願い事は終わった?」
隣りで一緒にお願い事をしてたナギちゃんが声を掛けて来る。その隣ではレン君も何か必死そうにお願い事をしている。
「うん、相変わらずだけどね。神様はいつになったら機会をくれるのかしら?」
「それは自分で掴まないといけないと思うんだけど……、機会よりも性格をもっと積極的になります様にの方が良いんじゃないかしら? 神社の神頼みはお願いを叶えてくださいじゃ無くて、叶える努力する自分を見守っていて下さいと言う意味よ?」
ナギちゃんは呆れた顔で言って来るが、性格なんてそんな簡単に治りませんから! でも確かに、強引にレン君経由でタツミ君を誘った方が早い気もして来ました。
「まぁ、そう言うな。結局あいつは学校以外は放課後も含めてずっと兄貴の大学の所でトレーニングしている様だからな。正直俺も学校でしか会って無いから遊びにも誘えないんだよ。」
レン君も困ったような顔をしている。流石にこればっかりは手の打ちようが無い。しかし、こうも会えないのは本当に世の中には縁と言うものが有って、巡り合わない人は絶対に巡り合えないのだろうか? と思ってしまう。
「まぁ、そんな中でもクリスマスに三上さんはタツミを誘って玉砕してたな……、最近はあの子玉砕慣れして来てないか? まぁ断る理由も稽古が有るからで即断してたけどな。それ以前に告白されてる自覚も無いから顔すら覚えてないようだが。」
「別に意味で顔をそろそろ覚えてあげたらどうかしら? と言いたくなるわね。」
レン君の話を聞いてナギちゃんが呆れた顔になっている。私的にはそれでも立ち向かっていく三上さんの行動力は凄いと感心してしまう。
ん? ちょっと待って。顔を覚えられていないの? 三上さんが?
「顔を覚えられてないの?」
意外な事実を今知った。一番最初の中2の屋上では三上さんの名前を呼んでた気がしますが……もしかして手紙に名前が書いてあったからそれだけ覚えてた?
「ん? 知らなかったか? タツミの奴は人の顔と名前を覚えるのが物凄く苦手なんだ。逆にすぐ覚える人は直感でこの人とは長い付き合いになると思うそうだ。」
「で、実際に長くなってる人は?」
本当なの? と言う顔でナギちゃんが確認を取ってみると、まぁ予想どうりの答えが返った来た。
「初対面で完全に覚えたのは俺だけらしい。むしろ俺も最初は病気か何かを疑った位だが、多分あいつは自分の人生に関係ない物や人に興味を持たないようだ。」
「そのセリフだけ聞いてると奇人か変人かひねくれ者にしか聞こえないわね。」
内容を聞いてさらにナギちゃんが呆れていく。確かにレン君の言っている部分だけを切り抜けばそのように感じてしまうだろう。
「まぁ博愛主義の逆なんだろう? その代わり大事と思った物や人は誰よりも大事にしていると思うぞ?」
「その大事にされている友達様は、今現在も部活を休んでいる理由を教えてもらって無いのよね?」
レン君のフォローに鋭い返しが突き刺さった。見るからにレン君がへこんでます。その様子を見てナギちゃんがちょっとあたふたしてます。
「そんなに落ち込まないでよ、傷ついたのならゴメン。」
ナギちゃんがちょっと顔を赤くしながらうつむきがちに視線だけレン君に向けて謝ってます。横から見ててもちょっと可愛いです。
「どうした? ドSのお前が謝って来るとは……そして何でそんなにしおらしい態度を取ってくるんだ? もしかしてデレを覚えてツンデレになる気か!?」
「あ、ああ……アンタは! 真面目に謝ったのに損した!」
ナギちゃんは怒ってレン君の横腹にパンチをお見舞いして先に進んでいきました。流石にこれはレン君が悪い。普通に照れていれば良いのに。
「レン君、ワザと言ったでしょ? さり気無く顔が真っ赤だよ。」
「悪かったな、ガキ臭いと思うだろ?」
レン君は照れ隠しをする為に言っていたのだ。素直になれば良いのにこの二人は最近はいつもこんな感じだ。
「別に変に慣れているよりは良いと思うよ。二人とも私の事をとやかく言えないね。もうちょっと素直になれば良いのに。」
「素直になる、か。何と言うか最初が悪友みたいな感じだったから加減が良く解らねぇんだよ。だからつい余計な一言が出ちまう。」
ヤレヤレ、ここでも青春が始まってますね。何となくと言うか、露骨なので気が付いてましたがお互いに今の関係が崩れる事を怖がって踏み出せずにいるのでしょうね。
「別にレン君はナギちゃんを嫌いじゃないんでしょう?」
「当り前だろうが、嫌いだったら友達付き合いなんかしない。」
「じゃあ、どの位意識してるの? 素直に答えてくれたら協力するわよ。」
少しじれったくなったのでストレートに聞いてみました。まぁ答えは普段の態度を見ていれば分かるんですけどね。
「それって言わなきゃダメなのか?」
「そのセリフが答えと受け取って良いかしら? 言うと関係が変わっちゃうからその返事になるんでしょ?」
そう言うとレン君は顔を赤くしながら黙っている。この沈黙は肯定と受け取るべきだろう。
「多分、ナギちゃんも同じ事を考えているわよ。だから最近はおしとやかに振舞おうとしてるんでしょ? レン君が言った好みのタイプになれるように。」
「それってさっきのデレの部分か?」
そう言うとレン君は頬をかきながら困ったような顔をしている。
「急に態度が変わると反応に困っちまうんだよな。」
「でもデレの部分が可愛いと思ったんでしょ?」
再び、沈黙する。目が泳いで顔を赤くしている時点で答えは肯定だろう。この二人はもうちょっと素直に感情を言葉にすれば良いのに。
「まぁ、ゆっくりでも良いんじゃない? でも可愛いと思ったら素直に言って貰った方が女の子は喜ぶよ。」
そう言って私は少し先を怒って歩いているナギちゃんの隣に駆け寄って行く。
今のこの二人を見ていると、あの夏の日に私を応援したいと言ってくれた二人の気持ちが少しだけ分かる様な気がして来た。
上手く言葉には出来ないが純粋で前向きな感情を見ていると自分の心も前向きになれる様な気がしてくる。誰かの綺麗で青臭いと言われるけど目を離せなくなるような輝きを持ったこの瞬間を眺めていたくなったのだろう。
二人も少しづつ関係が変化していくだろう。私のこの青い春も長くは無い。私もどこかできっかけが無くても踏み出さなければならないだろう。踏み出さずに後悔だけはしたくない。
そう思ってスマホのあの夏の日の二人の写真に目を移す。今度はちゃんとした恋人としての写真を必ず記憶に収めるために決意を新たにするのでした。




