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高一の新人戦

「ナギちゃん、ナギちゃん。」


「ん? なあに?」


「何でタツミ君は出て無いのかしら?」


「分からないけど、レンも何が起きているか分からないって言ってるしね。」


 私とナギちゃんは補助員をやりながら、目の前で行われている秋の新人戦を見ていた。今回のメンバー表にタツミ君の名前は無かった。インハイ予選での試合を見れば補欠くらいには入っても良さそうだったのに。


「夏休み明けてからの部活も来なくなってると言ってたし、詳しい事情はタツミ君も話してくれないって言ってるから、レンもお手上げの様ね。」


 ナギちゃんは肩をすくめて八方塞がりな状況の様に言ってきた。確かに幼馴染のレン君にまで言わないのは不思議だし、スポーツ推薦で部活に参加しないのに問題になって無いと言う事は先生は知っているのだろう。


「まぁ、別口で考えられるのはレンが意図的に内緒にしてるって所かしらね。」


「レン君がわざわざ内緒にしてるって事?」


 情報提供の仲間関係なのに敢えて内緒にする程の事が起きているのだろうか? だが、友人と私達とどちらを優先するとしたら明らかに前者だろう。


 なので、もしそうだとしてもレン君を責める気にはなれない。


「可能性は確かに有るわね。でもそこまでして知られたくない事なのかしら?」


「きっと、何かしら有るのかもね。でもナギちゃん、ここぞとばかりにレン君をいじっちゃダメだからね?」


「え? 隠してるなら吐かせる位にイジメないとダメじゃない?」


 何故にいじるからイジメに変化したのだろう? ナギちゃんはレン君限定で本当にドSになる。どんなイジメをするのか聞いてみたい気もしますが聞いたらダメな気がします。


「で、誰をイジメるって? このドS変態が。」


「あら、珍しく上手い返し方をして来るじゃない。後で覚えておきなさいよ、その呼び方はちょっとムカつくから。」


 レン君が試合の合間で暇なのだろう、こちらに声を掛けに来たのだった。ナギちゃんはコードネームが変更されそうで不満そうな顔をしている。


「おー怖い怖い。で、何だって? 別にお前たちに秘密にしている事は無いぞ。」


「タツミ君が出てない理由も、練習に来てないのも全く知らないの?」


 意外な返事に私はつい聞き返してしまった。この質問も既に何度もしていたのに。


「大会当日でも先生は内緒だから教えられないの一点張りさ。推薦入学者が部活に来ないのも大問題だが、先生が納得していると言う点で皆が不思議がってるのさ。」


「先生が噛んでいるなら、それこそもっと上からの圧力と言う事かしら? それとも信頼の厚い人が後ろに居るって事?」


 ナギちゃんが疑問の中の答えを探そうとしているが、恐らく後者の可能性が高い。その正体も何となくだが察しが付く。


「またお兄さんが後ろに居るっぽいわね。」


「多分な。コーチとは知り合いっぽいから、その繋がりは否定できないが一体何を隠しているのか分からん。」


 レン君とナギちゃんが二人で推理を進めている。多分間違いないだろうが、部活の仲間にまで隠すのだから恐らくケガとしか思えない。


 推薦者がケガで部活を続けられない場合は一般に鞍替えする必要が有るからです。もしくはその部活のマネージャーとして活動になりますが、普通の生徒と同じ学力を急に要求されてしまいますからね。


「ヤッパリ考えられるのはケガよね。大丈夫かしら。」


 ポツリと呟くと、二人は思ってはいたけど口に出してなかっただけの様で言葉を詰まらせてしまった。


「あ、ごめんなさい。縁起でも無い事言っちゃって……。」


「良いのよ、ヒジリちゃんが一番心配しているのは分かっているから。」


 ナギちゃんが気を使って優しく慰める様に声を掛けてくれた。本当は基本的には優しいのだ。


「その優しさを俺にも出してくれないかね?」


「却下、優勝する位しないとレンは褒めるに値しないわ。」


 うん、レン君だけは何故か優しさの対象外なのが謎なんだけど……。


「ハイハイ、では出来るだけ頑張ってきますよ。応援だけはしておいてくれよな。」


 そう言ってレン君はチームメイトの方へと戻って行った。うちの高校は推薦で集めているだけあってレギュラー争いは大変の様だが今回は一年生なのにレギュラーで出場しています。


「さてさて、レンの高校デビューをしっかりと見てやりますか。」


 ナギちゃんは楽しそうにレン君の後姿を眺めていた。本当にこの子は素直じゃないんだからなぁ……。私に気を使っているんなら気にしなくて良いのに。


「何だかんだ言って、やっぱりナギちゃんってレン君の事好きなんでしょ?」


「え? そ、そんな事無いわよ。ただ趣味の話がよく合うとか、は、話してて楽しいとかは有るけど、そそ、そこまでは……。」


 うん、私の特徴のどもり方をしないで欲しいです。皆が勘違いします。しかし趣味が確かにお互いとあるオンラインゲームが一緒だったと言ってましたが、そこでもお話してるんでしょうね。


「ゲーム内でも会話してるんでしょ? もうだいぶ距離は詰まっているんじゃないの? それともナギちゃんは別に本命が居たりするの?」


 私はわざと白々しいフリをしながら聞いてみる。ナギちゃんのリアクションを楽しめる珍しい機会だ。


「べ、別に本命なんて……、ただよく話はしてるけど……そもそもあいつは2次元専門なんでしょ? それに自分は年下好みだとか言ってたし。」


 ナギちゃんはうつむきながら指をモジモジさせて小声でつぶやいている。うん、いつもと逆のパターンだ。でも何だろう、見てて楽しい! これがいつもナギちゃんが感じてた感情か!


「それは建前じゃ無いの? と言うかレン君の具体的な女性の好みって聞いた事あるの?」


「確かに言われてみれば、具体的な事は聞いた事無かったわね。」


「では私の方で確認してみようか? 参考までに男性はどんな女性がタイプなのか? というお題目とかで。」


「ヒジリちゃん、それは良いんだけど……楽しんでない?」


「そんな事無いわよ。ただいつもナギちゃんがこんな感じで楽しんでるんだな、ってのは何となく解ったわ。」


 そう言ってニッコリとほほ笑んであげる。今の流れでレン君が好きな事は認めた様なものだと、ナギちゃんが気が付くまで数秒を要した。


「ハッ! ちょっとこれって誘導尋問!?」


「ふふふ、甘いわね。お互い頑張りましょう。」


 ナギちゃんの照れてる顔を見て私は満足しながら補助員の仕事に戻る。ナギちゃんはしばらくの間、あたふたしながら珍しいリアクションを見せてくれたのだった。




 後日、レン君に好みの女性のタイプを参考までに聞いたところ、


「おしとやかで、男を立てる女性が良い。勝ち気で横柄な人は姉貴のせいで受け付けない。……後は、せめて共通の話題としての趣味が一緒の人が良いかな?」


 と前半部分はかなり強調して断言していた。ただ、その場にいたナギちゃんが分かり易く顔が青くなっていたのを察したのか、後半部分をさり気無く付け足していた。


 うん、そっちを先に言おうよ? 既に真っ白に燃え尽きてるナギちゃんに後半部分は届いてないよ? 


 レン君も大概な恋愛下手なのが良く解った。と言うかうちら3人全員が恋愛下手なんだなと痛感したのでした。




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