進路相談
トラブルが有った夏も過ぎ、あれから特に進展も無いまま9月になりました。
2学期にもなると進路を決めないといけません。私も進路希望の用紙とにらめっこしてます。結局タツミ君はどこの高校に行くのでしょうか? レン君からの連絡待ちになっていますが……出来れば私が行こうとしている学校の中に有れば良いのですが。
学校内ではレン君とはコンタクトを取らない様にしてます。今までぼっちで過ごしていた私が、急に男子と話す様になったら絶対に良く無い意味で噂になりそうだからです。
ナギちゃんも進路を合わせると言っている為に連絡を首を長くして待っている状況です。スマホに何か連絡が無いか気になりながら勉強をしていますが……静かな秋の夜は過ぎて行きます。
ピロン
不意にスマホの音が部屋に響いてビクッと肩が跳ね上がります。集中してる時に鳴ると心臓に悪いです。
深呼吸してスマホを見てみるとナギちゃんからでした。
『全員明日はいつもの喫茶店に集合するわよ。特にレン、私の方も進路希望がギリギリだから情報を確実に持ってくる事! その後みんなで買い物でも行くわよ!』
う〜ん、集合にしている上に、その後のショッピングまで記入している辺り、相当受験勉強のストレスが溜まっているのかも?
『了解、勉強会はどうするの?』
『今週はお休みするわよ! たまには息抜きしましょう!』
『構わないけど……大丈夫なのか?』
その後は綺麗に既読無視になったので、ナギちゃん相当勉強が好きじゃ無いんだなと理解できました。
ーーーーーーーーー翌日ーーーーーーーーー
今日は秋らしく良い天気です、先に喫茶店に着いた私はカフェオレを頼んで街を歩く人達の流れを楽しんでいました。
「ヒジリちゃん早いわね、待った?」
ナギちゃんが少しして到着しました。今日の服装は……そう、一昔前に流行った森ガールという言葉がピッタリなコーデでした。
ナギちゃん自体が見た目はゆるふわ系なのでとても似合ってます! まぁ中身は陽気な辛口キャラなのでギャップが凄いんですけどね! 少なくともレン君の前では。
「大丈夫、少し前に来たばかりだから。今日の服装とっても可愛いね。」
「え? あ、ありがと……変じゃない?」
ナギちゃんが照れてます! 何コレ! 初めて見たけど物凄く可愛い! これで何で彼氏が居ないのか不思議なのだけど……
「お待たせ……ナギ、随分と気合が入ってるな。勉強から現実逃避しすぎなんじゃ無いのか?」
すぐ後に入って来たレン君がナギちゃんの姿を見てからかう様に言いますが……そこはもっと褒めてあげる所じゃ無いかな?
「レン……アンタは……第一声がそれかぁぁぁぁ!」
ワナワナと肩を震わせていたかと思うと、その可愛らしい姿には似つかわしく無い正拳突きで、ボディブローを打ち込んでいました。
痛そう……
「て、店内での暴力反対……。」
レン君がうずくまる様にお腹をかかえていますが……普通は可愛いとか似合ってるとか言ってあげないとダメだと思います。
これは女心を分かってないレン君が悪いです。
「言ったわね、だったら外に出ましょうか。ホラ、行くわよ。」
ナギちゃんはうずくまっているレン君の首根っこを掴んで本当に店外へ行こうとしてます。
「ちょ!? マテ! 周りの人に迷惑だからやめろ! 俺が悪かった! 似合ってます。とても可愛いと思うからやめてください。」
「最初からそう言いなさいよ! まったく!」
そう言うと手を離して私の隣にナギちゃんが座ると、レン君も呻きながら向かいの席に座りますが……周りからの視線が痛いです。
うん、ナギちゃんに彼氏が出来ないのはこの直情型の性格が原因だね……
「さて、早速だが本題を話そう。タツミの推薦が決まって進学先が分かった。ここだ。」
注文が終わるとレン君はすぐに真面目な表情で学校のパンフレットを出して来ました。私は見覚えがったのですぐに分かりました。
「ここって……確かに部活に力を入れてる高校だけど、進学にも力を入れてる所よね? 一般入試だと偏差値52前後がボーダーラインだよね?」
「流石に火神は話が早いな。そうだ、思ったより偏差値高い所に行くことになった様だが……2人の偏差値ってどうなんだ?」
レン君の質問にナギちゃんの顔がドンドン青ざめていくのが見えます。
「私は休み明けの全統模試で54だから大丈夫かな? レン君はどうなの?」
「俺? 俺はこの前で63だ。勉強は苦手じゃ無いし、一応進学校だから親も反対しないだろう。で、ナギは?」
ナギちゃんが問い掛けられてますが首が横を向いて目を逸らしています。
「ナギ、答えろ。成績次第では俺が勉強を教えてやる。まずはこっち向きやがれ。」
「えっと……4…………。」
蚊の鳴くような声でナギちゃんが答えているけど聞こえないよ? さっきまでの勢いはどこに消えたの? そんなにヤバいのかしら?
「ハッキリ言え! お前だけ別の学校で良いなら構わないが?」
「悪かったわね! 46よ! 何で2人ともそんなに高いのよ!? それに別の学校なんて嫌だからね。私も今の中学で仲のいい子なんて居ないんだからヒジリちゃんと離れたく無いわよ!」
ん? 何か結構なカミングアウトを受けた気がしますが気の所為でしょうか? ナギちゃんもぼっち仲間? こんなに可愛くて陽気なのに?
微妙な発言にレン君が気まずそうな顔をしてます……これは何と言ってあげたらいいのでしょうか……
「お前の場合は……どう言った経緯でぼっち何だ? 火神の様に口下手なら分かるが。」
レン君はそのまま踏み込んで聞いて行きますが……私にその質問はとても無理ですね。
「そ、それは……ホラ、私ってストレートに物を言う性格でしょ? それで余計な一言を言ったりするのが多くて……みんなから段々と距離置かれちゃったのよ。」
気まずそうにナギちゃんが語りましたが……何かまだ隠していることが有りそうな雰囲気です。
「正直に言え。後は匂いフェチな所とか初っ端からぶちまけて周りからドン引きされたとかじゃ無いのか?」
レン君が指摘するとナギちゃんは図星を突かれた様子でたじろいでいます。
「う、うううう……」
ナギちゃんが悔しそうに唸っていますが……まぁ私達は各々の個性が強すぎるから気にならないけど。
「ちなみに小学校からの友達とかならその性格も分かって居るだろうから大丈夫だろ? 居ないのか?」
「お父さんの仕事の転勤でね、中学に上がるときにこっちに引っ越して来たから居ないわよ……」
レン君、地雷全部踏み抜いてない? ナギちゃんの声が段々と死んだ様な声になっているよ?
「よし、だったら勉強を頑張らないとな! だったら俺が教えてやる。 変わらない過去に悩むより今どうするか考えようか。」
「レ、レン?」
変わらない表情で大真面目にレン君はそう言うと、注文したメロンソーダを飲み干します。その様子をナギちゃんは見惚れるように眺めていました。
「早く飲んでナギのお望み通り買い物行くぞ。」
そう言って私達に急かして来ましたが、私は既に飲み終わっていたのでナギちゃんだけですが、ナギちゃんはすぐに立ち上がりました。
「ちょっと、何で急に買い物? どうしたの?」
「時間が惜しい、さっさとお前に合った参考書と問題集を買いに行くぞ。一緒の高校に行きたいんだろう?」
レン君はカウンターへ先に行って会計を始めました。ナギちゃんも追いかけて行きます。私も慌てて立ち上がります。
後ろには秋の日差しを浴びた飲みかけのメロンソーダの氷がユラユラと炭酸に揺らされていたのでした。




