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夏祭り当日

 そして、ついに迎えました。夏祭り当日です! 

 緊張してますが、もうこうなったらやるだけです。覚悟を決めて会場へと向かう事にします。


 まずは、待ち合わせしている会場の最寄り駅へと移動してナギちゃんと合流しました。


「ナギちゃんの浴衣姿可愛いね~。」


「ヒジリちゃんも似合ってるよ~可愛い~。」


 ナギちゃんの浴衣は薄緑色で水に浮かぶ睡蓮の花柄の浴衣だった。私の浴衣はピンク色に朝顔柄の浴衣だ。


「さて、では待ち合わせ予定の場所まで行きましょう。時間は余裕が有るから出店を回りながらね! さ~て、何を食べようかなぁ~。」


 ナギちゃんが元気よく歩き出した。私も一緒に付いて行って何を食べようか頭を悩ませる。


「まずは焼きそばやお好み焼きからが王道じゃない? ナギちゃんは何から攻める派?」


「いや、そっちも捨てがたいけど、主食を食べちゃうとチョコバナナとかリンゴ飴とか食べれなくなっちゃうよ? クレープだって食べたいし、あ~悩むなぁ。」


 そう話していると、二人の足が同じところで止まりました。


「やっぱり最初はコレかな?」


「やっぱりコレだよね?」


 二人でかき氷屋さんの前で立ち止まった。



---------------------------------------------------------



「なぁ、レン。何が悲しくて今年も男二人で夏祭りに来なきゃならないんだ?」


「だったら早く彼女でも作って自慢しろよ。」


「……結局、バレンタインの子も見つけれなかったし。縁が無いのかなぁ……。」


 俺は結局バレンタインにチョコをくれた子を探す努力はしてみたが、見つかる事は無かった。一体誰なのだろう?


「まぁ、縁と言うのもが本当に有るならそのうち会えるだろうよ。意外に今日とか出会えたりするかもよ。」


「どんな希望的観測だよ。この人込みで見つかる訳無いだろう? そもそも判別のしようが無いだろ。」


 二人でボヤキながら露店を巡る。まずはお約束の焼きそばから注文しに行く。


「おっちゃん、焼きそば二つ。あ、一個はマヨネーズ抜きで。」


 俺がいつものを注文すると、レンは相変わらず珍獣を見る様に言って来る。


「相変わらずマヨネーズ食えないのか。」


「だから酢アレルギーで食えないと言ってるだろうが? 昔の人間じゃないんだからアレルギーが気合とかで治るとか言うなよ?」


 そう、俺は酢アレルギーなので酢の物は当然のことながら、マヨネーズすら食えない。食べた場合は全身に蕁麻疹が出て即病院で点滴コースなのだ。


「マヨラー達からしたら、お前って絶対嫌われるよな。」


「マナーが有るマヨラーは良いが、大皿にぶっかける様なマヨラーは絶滅したら良いと思ってるが何か?」


「うん、何か実感がこもってるからこれ以上言わないでおくわ。」


 ええ、親戚の集まりでマヨネーズが嫌いな奴なんか居る訳無いと言って大皿にマヨネーズぶっかけた親戚のおっさんのせいで、俺はマナーの悪いマヨラーは死ぬほど嫌いになったのだ。卵アレルギーの人も食えないからマジでこう言うのは小皿で分けてやって欲しい。


「さて、そろそろ毎年恒例の射的で勝負するか?」


 焼きそばを食べ切った俺とレンは毎年やっている射的勝負をする事にした。


「今年は何を賭ける?」


「そうだなぁ、この後のデザートを1個賭けようか。」


 そう言って俺達は花火迄の時間をそこで潰すことにしたのだ。



---------------------------------------------------------



「さて、小腹もふくれた事だし、そろそろ合流予定の射的屋に行きましょうか。」


 ナギちゃんが水風船とリンゴ飴を片手に楽しそうにしている。私も友達との夏祭りは初めてだったので楽しくてテンションが上がっている。


「そうだね、こうやって二人で回るのも楽しいけど、そろそろ行かないとね!」


 そう言って移動を開始しようと振り返った瞬間、先を急いで走って来た男性が私にぶつかった。


「きゃ!」


 私は弾き飛ばされて後ろへと倒れ込んでしまった。そして運が悪い事に真後ろに小学生の子供達が居たのだ。


「危ない!」


 ナギちゃんが叫ぶが間に合わずに私は小学生達の方へと勢いよく倒れてしまった。真後ろに居た女の子が押し倒される形になってしまった。そしてその先有った金魚すくいの水槽にぶつかりそうになる。


「うわ!」


 咄嗟にその隣に居た小学生の男の子が女の子を庇って体を入れて来たのだ。そしてそのまま男の子が下敷きになる形で3人が金魚すくいの水槽の近くに倒れ込んでしまった。


「ちょっと! ぶつかった奴! 逃げるな! 謝れ!」


 ナギちゃんが逃げた男に叫んでいるが、それよりも子供達は? 私は片手を水槽に突っ込む形で倒れてしまう。


 水槽は幸いひっくり返りはしなかったが、私の手がついた勢いで水が周りに飛び散った。


 女の子は男の子がかばってくれたおかげか通路側に尻餅をついて倒れている。目をパチクリさせて驚いている様なので大丈夫そうだ。


 助けに入った男の子は? 水槽のすぐ横を見ると男の子が倒れているのが見えた。倒れた時に頭を打ったのだろう、気を失っている。


「大丈夫!? ケガはしてない?」


 そう言って男の子の様子を伺うと、頭部の側面が5センチ程切れていて勢いよく出血しているのが見えた。恐らく、水槽の土台の角で切ってしまったのだろう。


「ナギちゃん! 大変! この子頭を切ってる! 救急車を!」


「え? ええ!? 解った、取りあえずタオルか何かで止血を!」


 そう言ってナギちゃんに救急車を頼むと、私は持っていたタオルで傷口を抑えて圧迫止血をする。そして頭部を自分の膝の上にのせて傷口を心臓より高い位置に固定して気道も確保する。


「お嬢ちゃんゴメンね、大丈夫?」


 そこまでやると、一緒に巻き込まれた女の子の方を見て、安心させる為に笑顔で話しかけた。


「私は大丈夫、でも……出血が……。」


 女の子は出血を見てびっくりしている様だ。パニックになっても大変なのでゆっくりと落ち着いて説明する。


「大丈夫、頭の傷は出血が多いから大怪我に見えるけどそこまで深くないわ。傷も浅いから安心して。すぐに救急車も来るから。」


 そう言って私は病院の待合室で暇潰しに呼んで覚えていた説明を女の子にして安心させる。


「ヒジリちゃん! 布か何かで圧迫止血して頭を心臓よりも高くして待っててって救急隊員さんが……って既にやってる?」


 ナギちゃんが電話した時に応急処置を聞いたのだろう。教えてくれたが既にやっていたので驚いた表情で固まっていた。


「ヒジリちゃん。何でそんなに的確に処置してるの?」


「あはは、ほら、私よく病院に行くから待合室にある応急処置の仕方とかのパンフレットを暇潰しに読んでたんだよね。まさかこんな所で役に立つとは思わなかったけど。」


 説明していると、男の子が小さな声でうなったかと思うと目を開けた。意識が戻った様だ。


「あれ、お姉さん誰? って痛!」


「動かないでじっとしてて、頭の横を切ってるから止血してるの。動くとまた出血するわよ。救急車が来るまで待ってて。」


「解った、痛いけど我慢するよ。」


 男の子は涙目になりながら痛みに耐えていた。女の子は男の子が気が付くと安心したようにそばに来て話しかける。


「助けてくれてありがとう。」


「気にするなよ、体が勝手に動いただけだ。」


 回りの一緒に居た友達らしき子達も寄って来て声を掛けている。カッコいいとか、よくやったとか。


 でもゴメンね、ケガさせた原因は私なのでこの場に居ずらいのですが!


「お姉ちゃんが倒れちゃったせいでゴメンね。」


 まずは謝りましょう。いくら応急処置しても原因は私ですからね。


「見てたけど、悪いのはあの走ってた人でお姉さんも被害者でしょ? 折角の浴衣も濡れてるし、気にしないで良いよ。むしろ風邪ひかないでね?」


 うん、何だろうこのイケメンボーイは、自分がケガしてるのにこっちの心配までするとか。これは助けられた子は惚れちゃうんじゃないの? と言うか惚れるでしょ。


「中々のイイ男じゃ無いのボウヤ。」


「べ、別にカッコつけてる訳じゃねーし!」


 ナギちゃんがニヤッとした顔で男の子を褒めると、男の子は照れたような顔で照れ隠しをしながら言う。周りのみんなが微笑ましく見守っていると救急隊員さんがやって来た。


 その後、私達は救急隊員さんと一緒に付き添いで男の子と病院へと行った。


 多分数針は縫う必要が有るからという事と、親御さんに謝罪もしたいし、現場に居た人と言う事で一緒に行ったのだ。


 レン君にはナギちゃんの方から連絡してもらって、今回は中止と言う事になった。


 しばらくしてから駆け付けたご両親には深々と頭を下げて謝罪をしたが、男の子から話を聞いていたご両親は、経緯を聞いて気にしないで下さいと言われてしまった。 


 一応念の為今日は入院するとの事だったので翌日顔を出し直す事にした。


 翌日、お見舞い行くと男の子は思ったよりも元気そうで安心した。


「傷口はどう? まだ痛いでしょ? 傷跡は残っちゃうって?」


「そうだね、痛いし、傷跡は残るって言われたけど、人を守った傷だから勲章だよ。気にしないで良いよ。」


 そう言って男の子はにっこりと笑った。それでも傷跡が残るのは子供と言えども責任を感じてしまう。


 自分も病院によく居たからか、本当にここに来た人が病気だけでは無く、傷跡も全て治らないものかと思ってしまう。彼は傷跡を誇りに思うかもしれないが、それを見る度に心を痛める人も居るのだと自分の経験を通して気が付いてしまった。


 本当の意味で何でも治せる医療が有ればなぁ……、無い物ねだりなのは解っているがどんなモノでも治せる力が、医療技術が有れば誰も心を痛めないのにと思ってしまいます。


 こう言うのを経験すると医療系に進もうと思うんだろうな……

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