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2妊娠

 琴音は、思わず聞き直した。

「妊娠。真希、妊娠したの?」


 真希は、琴音の耳元に口を持っていって囁くように言う。

「私じゃないの。アイツ一年の子を妊娠させたんだよ」


「えーっ」

 琴音は小さい声で驚いて真希を見た。


「あの男、ずっと私の知らないところで二股かけていて、一年の子を妊娠させたんだよ」


「なにそれ、最低」


「それで、私にどうしたらいいって泣きついてきたから、ふざけるなって言って別れた」


「うわーっ、でもそっちは大変だね」


 琴音が気の毒そうに言うとふと気が付いた。

「あれっ、水出ないね」


「あっ、本当だ」

 真希は、無意識に蛇口の詮をずっと回していたのに気が付いた。

 その横の蛇口の詮をひねると勢いよく水が出る。

 古い水道だからだろうか、どうやら水が出ないのは、その蛇口だけみたいだ。

 それは、奥から3番目の水道の蛇口であった。


 つぎの日の朝、何か様子がおかしかった。

 真希は、顔を洗うと食堂に入って行ったのだが、手前に座っているバスケ部の女の子達が一斉に真希の顔を振り向いて見た。


 えっ、何。と真希は一瞬たじろいだ。

 陸上部の女子が座っている奥の方に行く時でも、バスケ部の女子は真希の方を見て、こそこそ話したり、クスクス笑う者もいた。

 何かおかしいと思ったが、陸上部の女子は、普段通りなのでそのまま席に座って朝食を食べた。


 午前の練習が終わり、昼食を取ると、陸上部の女子は部屋で思い思いに寛いでいた。

 真希も部屋の奥でスマホを弄っていると、陸上部2年の佐倉和華が入り口から入って来て、そそくさと真希の所へやって来た。


「真希。あんた凄い噂になってるよ」


 真希は、ビックリして佐倉和華を見た。


「バスケ部の友達が教えてくれたんだけど、あんた妊娠して男に捨てられた事になってるよ」


 真希はあわてて和華の腕をひっぱって「違う、妊娠したのは私じゃないよ」と小さい声で和華に言った。


「やっぱり。でもバスケ部の中で凄い噂になってるよ」


 それで今朝、食堂でバスケ部の女子の様子がおかしかったのか。

 真希は、納得した。

 とにかく噂を消さなければならない。

 昨日の夜、琴音と話していた事を誰かに聞かれたのか。だけど誰も近くにいなかったのは、たしかに確認した。まさか、琴音が話したのだろうか。

 真希は、チラリと考えた。

 そこに琴音がトイレから帰って来た。

 

 真希は、琴音を見ると手招きをして呼び寄せた。


「琴音、昨日の夜に話した事、誰かに喋った?」


「喋ってないよ」

 琴音は、顔の前で手を振って言い切った。


 誰なんだろう?

 真希は考えた。


 まだ側にいた佐倉和華に「和華は誰から聞いたのか、教えてくれる」と尋ねた。


 真希と和華と琴音の3人は、2階のバスケ部の女子が寛ぐ部屋に向かった。




 


 

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