続・正月に着物を着ようと思い立ち
昨年の大晦日に正月に着物を着るんだと大騒ぎしていた者です。お久しぶりです、こんばんは。
本当はお正月早々にでも事の顛末をエッセイにあげようかと思っていたのですが、正月から震災などもあり、そんな浮かれた投稿をするのはどうなのか……と事の顛末も告げぬまま現在に至ります。
結論から言えばお正月にはお着物で初詣に行く事が出来ました。
姪っ子さんが最初に選んだお着物がとても地味で（青地に山脈柄の紬）、若いのに勿体ないなと思っていたところ、更に押入れを漁り出てきた白地に赤の花柄の小紋に一目惚れ「こっちにする！」と急遽変更、姪っ子さんがそれはそれは可愛く仕上がって、叔母としては嬉しい限りでございました。
私ですか？ 私はまあいつも通りでしたので特筆すべき事はありません。数年着付けをサボっていた割にはちゃんと着れたなという感想だけです。
けれど久しぶりに着物を着た事で着物熱が再燃しまして、現在着物でお出掛けしたくて仕方がありません。
自宅にある着物を総ざらいで確認した事によって、私が想定していたよりも我が家の着物の所有数が多かったというのもあって『この着物達、着ないと勿体なくね？』と思ってしまったのですよね。
ちなみにこの着物は私一人の物ではなく母や姉の分も含まれております。なんなら亡くなった祖母の着物も含まれます。
これは着物の良い点のひとつなのですが、洋服と違って着物には流行り廃りがありません。
厳密に言えばない訳ではないのですが、洋服ほど顕著に「もうこれは時代遅れ過ぎて着れないな」となる事がないのです。
柄や色が若すぎて……なんて事はありますが、それは帯や小物でリカバリーできる事が多いので問題になりませんし、サイズに関しても割と融通が利くので何とかなってしまいます。それこそ姪っ子さんが私の祖母（姪にとっては曾祖母）の着物を着るという事も可能なのですよね。
最近の若い子は背が高いので丈や袖が短いなんて事もありますけど、個人的には「別にそんなの気にしなくても良くね？」と思っています。
丈が短いのなら対丈で着ればいいし、袖が短くて腕が出てカッコ悪いと思うなら中に一枚シャツでも着ておけばいい。
最近は和洋MIXコーデというのも珍しくなくなってきましたし、若い人はもっとそうやって気楽に着物を着たらいいと私は思うのです。
「でも、着物ってお高いんでしょ？」
なんて、お着物を着ない方は思われると思うのですけど、現在ってたぶんどの時代よりも着物がお安く手に入ってしまう時代なのですよね……
「そんなの嘘だ！ 私は何十万もする着物を着物屋で買わされた事がある！」
なんて方もいると思います、かく言う私もそのくらい高い着物をローンを組んで購入した事があります。
それはまだ着物初心者だった頃、うっかり入った呉服店で店員数人に囲まれて電卓叩かれ、買うまで帰らせないぞという勢いで勧められて着物を購入させられる。
まぁ、その着物は気に入っているので今となっては良い勉強代だったと思っていますが、そんな事を経験して「着物屋って怖い！ 着物なんか絶対着ない！」となってしまう人は多いのですよね。とても残念な事です。
ちなみに私はクーリングオフも二回ほど手続きした事があります。これは「後でクーリングオフしてくれればいいから！ 契約してもらえないと帰せないんです」という呉服屋販売員さんの営業ノルマの厳しさを垣間見た瞬間でしたね。
最近はこういう売り方をすると訴えられてしまうので、あまりやらなくなったとは聞きますが、どうなのでしょうね？ 久しく呉服屋さんには行っていないので分かりません。
話を戻しましょう。
現在は着物がお安く手に入る時代というのは、着物人口の減少に伴い着物余りの時代がきているという事なのですが、だったらどこで安い着物を手に入れるかと問われれば、それはリサイクルショップです。
「ええ～、誰が着たかも分からないような中古の着物なんか着たくない」
という方、勿論いらっしゃるかと思います、けれど今は空前の着物余りの時代「仕立てはしたけど袖も通さないまま箪笥の肥やしにしていた着物、もう着る機会もないから売ってしまえ！」という、新品未使用品がリサイクルショップでは阿保みたいな価格で大量に出回っているのですよ。
戦前戦後くらいの時代は着物を売って食料に変える、質に入れてお金を借りるなんて話をよく聞きましたが、現在着物にそんな価値はありません。なにせ需要がないので。
呉服屋で何十万もかけて仕立てたお着物でも、現在は少し染みが付いているだけで引き取れませんとお断りされると聞きます。
買取できるのは状態が本当に良いもの、未使用品、それでも買取値は雀の涙ほどの金額なのですから売り値もお察しの価格な訳です。
ネットでリサイクル着物を検索してもらえばオンラインショップも出てきます、新品未使用品の帯や着物がワンコインで購入できる場合もあるので、宝探しのように眺めているだけでも楽しいです。
なんて、こんな事を書いていると「そんな安く、しかもリサイクル商品なんて買う人間ばかりになるから日本の伝統工芸は廃れていくんだ！」と怒られそうなのですが、呉服屋がそういう売り方をして、着物離れを加速させ需要を減らしてしまった結果が今なので、なんともかんとも。
私は着物が好きなので、やはり日本の伝統は守っていきたいと思うのです。けれど大金持ちな訳ではないので自力で購入するにも限度があるわけで、上手にリサイクルを利用するのは許して欲しいと思うのです。
そして着物に興味を持った若者にも最初は『呉服屋さんでお仕立て上がり』よりも、リサイクルショップで気に入った着物を一枚買ってまずは着てみようか、とお勧めしたい。
だって、何十万もするお着物を普段着で遊びに着ていくなんて敷居が高すぎる、それなら中古で数千円のお着物を気軽に羽織ってお出掛けするくらいの方が気が楽じゃないですか。
それでお着物の楽しさと奥深さを知って、初めて自分用に仕立てるって段階に入るのが一番なんじゃないかと私は思うのです。
現在各家庭に眠っている着物の総資産金額は7兆円とも8兆円とも言われているらしいです。
その資産のほとんどが箪笥の肥やしだなんて悲しすぎます。
もしこのエッセイを読んで、少しでも着物を着てみたい興味が湧いたと思う方がいたら、まずは自宅に眠るお着物を引っ張り出して着てあげて欲しい。
ルールなんて気にしなくていいのです、とりあえず羽織ってみるだけでもテンションは上がります。
「でも、着物警察が怖い」
よく聞く話ですが、私は今まで遭遇した事はありませんね。
通りすがりに帯を直してもらった事はありますが、別に怒られてませんから警察ではなく、ただの着物好きな方だったと思われます。
そもそも本来は着物を着るのにルールなんてないのです。
こういう時期にはこの着物を着なければいけない、季節を意識したコーデが粋で洒落なんて、売りたい側の勝手な言い分でそれを遵守しなければいけないという法律はないのですから自由に着ればいいのです。
ちなみに『着物の衿合わせは右前で着用する事』というのは法律で決まっているので遵守した方が良いです。まぁ、奈良時代の法律なのですが（笑）
「でも、着物の着方が分からない」
今って、良い時代ですよね、YouTubeで検索すれば着物の着かたも帯の結び方も幾らでも出てくるので見ながら練習すれば意外と簡単ですよ。そして一度体が覚えたら忘れません。
温泉に行って浴衣が着れる方なら着物は着れます大丈夫。
ちなみに、よく無料で着物着付け講座3回コースなんてやっているような着付け教室がありますが、初心者にはあまりお勧めしません。
無料で教室をやっているという事は、どこかでお金になる見返りがあるという事で、講習の最終日に「着れるようになったらお着物欲しいでしょ？ 今ならこのお値段でお着物買えますよ」と着物の購入をごり押しされる事もあるとかないとか。
毅然とお断りができる方なら問題ないのですけど、それが嫌な方はお教室は普通に有料の所へ行った方が良いのではないかと思います。
個人的には大きな会社が運営している所ではなく、個人でやっている教室の方が安全なのかな？ と私は思います。
着物は着物を呼び込むので、着物でフラフラしていると「うちではもう着ないんだけど着る？」と、知人友人から譲られる事が増えます。
楽しく着ていれば「私も着てみようかしら」と着物仲間が増える事もあります。
着物は日本独自の文化なのにその着物が廃れていくのは哀しいです。どうか皆さんも着物着てくださいね。
