天才の口に入れておけ
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
単純に、このセリフが言わせたかっただけです。
「自尊心が傷ついただぁ? そんなもんは天才の口に突っ込んどけ。おめぇがやるべき事をなせ!!」
彼女は手厳しく絶叫し、括れに手を回す。そのまま小脇に抱えて歩き出そうとしたのだろう。けれども身長差も相まって、肩を組んでいるように見える。
事の発端は、僕が天才と囃される彼を目標にした時から。地道に何かを続けていたら、何時か越えられるかと思った。超える事は無理でも並ぶ事は出来ると思った。それが勉強でも、運動でも何でも良かった。
でも皮肉な事に努力というものは、人の希望を容易く踏み躙るものである。どんなに足掻いたところ敵わなかった。彼奴は授業中、突っ伏しているにも関わらず、学年一位。部活の練習には録に出ずに、試合で点を取る。僕の努力は一体何になったのだろう。
「君、好きな物は? 何でも良いよ。食べ物でも、やりたい事でも、何でも。今の気分で良いから」
「……駅前パーラーのウルトラクリームデラックスが食べたいです」
「ん。OK」
湿気った声を聞いた後、彼女は駅前に向かって歩き出す。せかせかと歩く人の並に紛れながら、僕らは自分のペースで緩やかに歩く。その歩き方が揺蕩う波に揺られる様で少しだけ安心した。
上目遣いで彼女の様子を伺うと、口を引き結んだ後に一言。
「努力は裏切るよ。これ、綺麗事じゃないから」
「知ってます」
「でも、堅実に生きるのが何がいけないのさ。地味で何がいけないのさ。デカいプライドぶら下げて、ある時ポッキリ逝くよりも、息の長い生き方の方が良いじゃないか」
彼女の声はしっとりと重く、僕の頭上に降り注ぐ。真っ直ぐに前を向いていて、決して視線を下ろす様な事はしなかった。
多分、慰めてくれているのだろう。不器用な彼女なりに、遠回しに励ましてくれているのだろう。それは最初の絶対から始まっていた事。
「奢ってあげる。言いたい台詞言わせてくれたから」
そう言って、僕らは甘味を求めてドアを潜った。苦さの後に得る甘味に慰めを求めて。
オマケ 彼女の過去
部屋の片隅で蹲る私に、彼は声を掛ける。今は自暴自棄でほっといて欲しい。故にこんな湿気った声が出る。
「私なんか居ても居なくても一緒。あの天才になんか成れない。有象無象の一人。そんな私に何を期待しているのです?」
「沢山傷付いて来たから。そう言う子は物凄く強い。多少の風如きじゃ折れない。自尊心なんてもんは天才の口に突っ込むものだよ」
そう言って、狂気的な笑顔を浮かべた。磨き抜かれたダイヤに、端から興味はなさそうだった。
「君は君らしく、生きれば良いんだよ。全てを振り切った君の生き様を見てみたい」
派手さはないですが、悪くない毎日ですよ。
仕事を続けているのも、投稿を細々としているのも。
経験則として、大人になってから挫折すると、取り返し付かない人の方が多い気がします。
今までの成功の上に自分が立ってしまっているから。
落ちた時の衝撃もきっと大きい。
でも前もって挫折しておくと、落ちる高さが控え目なんで、立ち直りも早いのでは無いかと。
怒られるの嫌すぎて、毎日内心喚きながら生きてます。
でも生きてるんです。
自尊心は天才の口に入れておきます。
うるせぇ!! 黙って口に突っ込まれてろ!! 精神です。
ウルトラクリームデラックス
っていうの、中々に雑なセンスで笑ってます。