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復讐の黒鳥

作者: 深田ハス

この大国の第二王子の婚約者オディーリアは、かつて大陸の沖にあった小さな王国の王女だった。


大陸では大国がせめぎ合う中、小国でありながらもその王国が長らく独立を保っていられたのは、争い事を好まぬ国民性と王族の持つ魔力の高さにあった。島は美しい花々が咲き乱れ、珍しい鳥達が舞い、楽園と称された。


島の王国と陸の大国達は互いに不可侵条約を交わしていたのだが、ある時、島に一番近いこの大国が島を攻めた。個々の王族の魔力は高いといえど大国の軍事力を前に呆気なく王国は滅んでしまった。


そして七歳だったオディーリアは大国に連れてこられ、無理矢理に第二王子の婚約者にされてオディーリア自身の魔力を封じる契約を結ばされてしまったのである。オディーリアの一族は魔力が飛び抜けて強かったため、第二王子と結婚させて子供を産ませ、高い魔力を王家に取り入れようという目論見であった。


この契約がされたときに、オディーリアの艶やかで漆黒だった美しい髪は灰色に変わってしまった。


王家は老婆のような灰色の髪になったオディーリアを気味悪がり、特に婚約者の第二王子はあからさまにオディーリアを忌み嫌った。


「老婆みたいではないか! なぜお前のようなみっともない女と結婚しなければいけないんだ!」


初めて顔合わせをしたとき、第二王子はオディーリアを指差して喚き立てた。


「いいか、父上が決めたことだから仕方なくお前を婚約者にしてやってるだけだ! もう滅んだ国の王女なんて、平民となにも変わらないんだぞ。その分際で口応えするなよ!」


あなたの婚約者なんてこっちから願い下げなのに、と冷めた目でオディーリアは喚く第二王子を眺めていた。


第二王子は最初の頃は最低限の義務とばかりに半年に二回ほどオディーリアを王宮に呼び立てて顔を合わせていたが、老婆のような見た目に加えて、いくら罵ってもオディーリアがどこ吹く風という態度を変えないものだから、次第に会うのも嫌になったようで、ここ数年は一度も顔を合わせていない。


そんな経緯で、第二王子の婚約者であり亡国の王女でありながら、オディーリアは王宮近くの離宮で程よく放置されていたのである。


だが、一つだけ、そして致命的なことを王家は見誤っていた。


契約によって魔法を使えないと思われていたオディーリアだったが、実は契約後も魔法が使えたのである。


一族が滅んだとき、若干七歳にしてその後の自分の運命を悟ったオディーリアは契約を結ばされる前に策を講じたのである。その時の咄嗟の機転によって、オディーリアは微弱ながら今でも魔法を使うことができた。


そんなオディーリアは離宮で放置されるようになってから何をしていたかというと。


魔法を使えないはずのオディーリアに対して、離宮での監視の目はあってないようなもので、小鳥に姿を変えては足繁く王宮へ通い、金庫の中身や禁書棚で調べ物や破壊工作に勤しんだ。時には城下町に出て街の様子を見て回ることもあった。危険を冒して王宮内を調べまわったお陰で、掘り出し物もあった。


母国が滅んでから十二年。オディーリアは十九歳になっていた。


「やっとだわ!」


オディーリアは誰もいない大国の金庫で祈るように手を握り合わせて喜ぶ。目の前では父達を破滅に追いやった忌まわしき魔道具達がただのガラクタに成り下り、無惨に転がっている。


着々と進めてきた復讐の準備が遂に整ったのだ。そして時期のいいことに、今週から王太子の婚儀と第二王子の成人を祝う大規模な夜会が始まる。


あとは、第二王子がオディーリアの見込んだとおりの傲慢な馬鹿であることを願うだけだった。




ーーーーー◇ーーーーー





大国の第二王子フェイナンドは、その見目の良さも武力の高さも王太子に引けを取らない自慢の王子である、というのが、父国王と母正妃の親バカ意見である。


大陸の沖の島の王国を滅ぼして以来、大国であったこの国は一段と国力を増した。島の王国が滅びた後、その土地に咲いていた花々も美しい生き物達も失われ、楽園と呼ばれた島は見る影も無くなってしまったが、奪ってきた財宝は長らくこの大国の国庫を潤わせている。以前は隣国との小競り合いなどが国庫を悩ませていたが、今はそんな心配もない。


そんな日も沈まぬような大国の第二王子。


残念ながら魔力はほとんどなかったが、武力に長け、先日の隣国との小さな武力衝突でもその手腕を発揮していた。

(オディーリア意訳:バカで座学ができなかったので毎日剣を振るってたら腕っぷしだけ強くなった第二王子が、好き勝手に暴れたので敵も味方も手に負えなかった。)


第二王子は今年で十七、つまりこの国でいう成人になる。


国王は、王太子の婚儀と合わせて、第二王子の成人も祝うパーティを開くことにした。国中の貴族達が招待され、国外からの参列者も少なくない、盛大な夜会は七日間通して催される予定だ。


そして国王は第二王子が婚約者の亡国の王女をエスコートしないことを黙認した。王太子と違って今のところ王位を継ぐ予定のない第二王子は手放しで可愛がれる、かわいいかわいい息子である。

しかも、高い魔力を王家に取り入れるために王女を第二王子の婚約者にさせたはいいが産まれてくる子供が高い魔力を持つかはわからなかった。実際、国王が側室の一人として娶ったかの王族の傍系の娘が産み落とした第四王子は魔力が少ない。さらに言えば、国王自身も老婆のような髪をした王女をわざわざ晴れの場で見たくなかった。


国王の黙認のもと、第二王子はしばらく前から婚約者などいないかのように美しい令嬢を取っ替え引っ替えしていたが、どの令嬢とも長く続くことはなかった。


第二王子はまあ、傲慢だったのだ。


輝く金の髪と空のような澄んだ青い瞳を持つ大国の第二王子の横に並ぶには、どの令嬢もどこかが物足りなく感じられた。ある令嬢はそばかすが目立ったし、ある令嬢は金髪がくすんでいたし、ある令嬢は所作が雑に映った。それでも老婆みたいな婚約者を引き連れて人目の前に出るのだけは我慢ならなかったので、父である国王が何も言わないのをいいことに、しばらくは楽しい逢瀬を重ね飽きると次の令嬢へ移る、ということを繰り返していた。


今日から一週間続く盛大な夜会にも、毎日違う令嬢を連れて出席することになっている。体調の優れない婚約者の代理という形で。


初日にエスコートしたのは筆頭公爵家の令嬢で、王家と同じ金髪青眼のレディである。少し鼻が低いのが気になるが、前に良い雰囲気になっていた伯爵令嬢のそばかすよりは気にならないし、老婆のような婚約者と比べたらどちらが美しいかは考えるまでもない。


夜会も中盤に差し掛かり、社交に慣れた第二王子も令嬢達とのやりとりに少し疲れを感じ始めていたとき、第二王子の目は一人の女性に奪われた。


顔立ちは少し異国風だろうか。だが、形の良い目も、すっと通った鼻筋も、薄すぎず厚すぎない唇も、どれもが今までに見てきた令嬢達とは比べ物にならないくらい美しい。背は他の令嬢達より少し高いくらいで、程好い肉付きに、すらっとした長い腕。そして透き通るような真っ白な髪は、緩く編み上げられ、艶々と輝いている。


その令嬢は、今会場に来たばかり、というように辺りを見回しながらゆっくりと歩いていた。装飾品は金のネックレスのみで纏っているのも飾りの控えめなドレスなのに、その動き一つ一つが溜息が出るほど優雅で、その身から溢れる気品は王家でも惚れ惚れするほど。周囲の人々にもそれが伝わるのか、令嬢の前には自然と道ができていた。


令嬢は知性を湛えたグレーの瞳で第二王子を捉えると、妖艶に微笑んだ。


第二王子は逸る気持ちを抑えて、ふらふらと令嬢の前に出る。


「この国の第二王子、フェイナンドという。名前を伺っても?」

「オリアナ・ライラロスと申しますわ」


第二王子の差し出した手に、ゆっくりとオリアナ嬢が手を重ねる。


そのままホールの中央に出た第二王子とオリアナ嬢は演奏に合わせてダンスを踊った。その姿は息を呑むほど美しく、悔しがるはずの令嬢達でさえ一言も言葉が出ない。第二王子は自分ですら子供っぽいと思うほど夢中で話しかけてしまったが、オリアナ嬢は第二王子の話に快く耳を傾け、相槌を打った。


オリアナ嬢が他の男とも踊り、楽しそうに笑っているのを見ると第二王子はイラッとした。


次の日も夜会で会う約束を取りつけた第二王子は、オリアナ嬢と会えるときを心待ちにした。


夜会が始まってから会場のあちこちに目を走らせてオリアナ嬢を探す第二王子は気もそぞろで、気の毒なことに二日目にエスコートされた令嬢はほとんど見向きもしてもらえない。


初日と同じように宴の中盤で現れたオリアナ嬢の前に第二王子はすっ飛んでいった。


よくよく見ていると、オリアナ嬢はあの忌々しい婚約者と少し似ているような気もした。が、少し顔立ちが似ているからといって、オリアナ嬢と婚約者は月と鼈である。オリアナ嬢は美しいだけでなく、この会場の誰よりも品が良く思えた。


「オリアナ嬢の髪は本当に美しいな」

「あら、殿下。婚約者様がいらっしゃるのに名前でお呼びになるなんていけませんわ」

「気にするな。あれはもはやいないようなものだ。オリアナ嬢の絹糸のような髪に比べて、あの者ときたら老婆のような髪をしている」


半分結い上げ、半分下しているオリアナ嬢の髪は、腰まで届く毛先まで全部艶々としている。第二王子は度々婚約者への不満をオリアナ嬢に洩らした。


そして隣国を越えた先の帝国の伯爵令嬢だというオリアナ嬢に、パーティが終わった後もこの国に留まってくれないかと何度か口説く。


「父になんて説明したら良いか……婚約者もいらっしゃるのに殿下と過ごすためにこの国に残りたいなんて言ったら父に叱られますわ」


オリアナ嬢は悪戯っぽく微笑んで巧みにはぐらかした。そうされると、第二王子はどんどんのめり込んでいく。もはや他の令嬢には目もくれず、オリアナ嬢だけを見ていた。


王家にとってパーティは公務の場である。第二王子は数少ない公務の一つとして主要な貴族達から挨拶を受けている間、オリアナ嬢が男性貴族と話しているのを見かけては嫉妬に駆られていた。公務もほとんど終えた三日目以降からは第二王子はオリアナ嬢につきっきりだった。


「わたくし、少しだけですけど魔法を嗜んでますの」


パーティ五日目。オリアナ嬢はそう零すと、手の中に花や枝を寄せ集めたコサージュを作り出し、それを第二王子の胸ポケットに挿した。第二王子は飛び上がるほど喜んだ。


既にオリアナ嬢と離れることなど考えられず、正妃は無理でも、せめて第二妃としてオリアナ嬢を娶れないか、と考え始めていた頃である。


父ギオデン王があの亡国の王女を第二王子の婚約者に据えたのは、王家に魔力を持つ者の血を入れたかったからである。オリアナ嬢が魔法を扱えるのなら、そもそも自分は王女と結婚しなくてもいいのでは?


夜会の後、オリアナ嬢からのコサージュに手を添えながら、第二王子は足早に国王の下へ向かう。


だが、第二王子に甘いはずの国王が、第二王子と亡国の王女との婚約解消には頷かない。いくらオリアナ嬢の素晴らしさを説明しても国王は頷かず、最初に第二王子が考えたようにオリアナ嬢を第二妃として娶ればいいと言う。もはやオリアナ嬢を正妃にすることしか考えられなかった第二王子は怒りながら自分の居室へ帰った。


居室に帰った後。自分が亡国の王女と婚約解消できず、オリアナ嬢が王女より優れているとしたら、国王はオリアナ嬢を王太子の側室に召し上げるのではないか? と一抹の不安がよぎる。一度湧き上がった不安は拭い去れず、国王にオリアナ嬢のことを告げなければよかった、と第二王子は眠れずに夜を明かした。


パーティ六日目。いつもより遅めに現れたオリアナ嬢に第二王子は駆け寄って、前日の国王とのやりとりを話す。


「正妃としてオリアナ嬢を迎えることはできないんだ。だが、常に一番に君に尽くすと誓う。そうしたら、君は僕と結婚してくれるか?」

「わたくしは、わたくしを一番に愛していると態度で示してくださる殿方と結婚致しますわ」


帰り際、第二王子は堪らなくなって尋ねると、オリアナ嬢は傲慢と取れるほど自信たっぷりの笑みでそう言い残して帰っていった。


そして第二王子は腹を括ったのである。


愛するオリアナ嬢のために、国王や貴族達の前で態度を示そう、と。


パーティ最終日。今日は第二王子の十七歳の誕生日でもあり、第二王子は壇上で貴族達から順に祝いの言葉を受け取った。


淡い色のドレスに身を包んだオリアナ嬢が祝いの言葉を送りに現れたとき、第二王子は彼女の手を取って自分の隣に立たせた。


何事かとざわめき二人を見つめる貴族達に向かって第二王子は声を張り上げる。


「私はこの美しく気高いオリアナ嬢と出会い、心から彼女を愛するようになった。ここに一生をかけてオリアナ嬢を愛することを誓い、かの亡国の王女オディーリアとの婚約を破棄する!」


国王が王座から飛び上がるのと同時に、第二王子とその隣に立つ令嬢の身体が淡く光る。


「馬鹿者!」


声を荒げた国王を皆が振り返る。


国王は顔を真っ青にして、ぶるぶる震えていた。見たこともないほど取り乱した国王を前に、会場は水を打ったように静かになる。






ーーーーー◇ーーーーー






「あは、」


オリアナこと、オディーリアの口から漏れた笑い声が静寂を破る。


「あは、あっはははははっ!」


堪えきれなくて、令嬢らしからぬ笑い声をあげてしまう。皆が唖然として見つめる中、純白だった髪が根本から漆黒に変わっていく。


身体が魔力で満たされていく心地良い感覚に、ああ、とオディーリアは溜息を吐いた。


オディーリアの一族は身体から溢れ出た魔力が髪を染めている。契約で魔力を抑えられたことで色の抜けていた髪と共に、纏っていたドレスまでが魔力で染まっていく。


「だ、だれだお前は!!」


ようやく第二王子が第一声をあげたころ、そこにいるのは純白の令嬢ではなく、漆黒の髪を靡かせ黒いドレスを身に纏った王女だった。


「ほんと馬鹿ねえ、婚約者の顔も覚えていないなんて」

「オ、オディーリア!? ばかな! そんなはずない! オディーリアはもっとみすぼらしいし、髪は灰色だぞ!」

「魔法でそう見せかけていたのよ。もっと手こずるかと思ったけど、ほんとあなたが馬鹿で良かったわ」


オディーリアは今までで最高に美しい笑顔を第二王子に向けた。


「オディーリアが魔法を使えたなど、ありえぬ」


真っ青を通り越して血の気のない蒼白な顔になった国王が呟く。


オディーリアはそんな国王を、子山羊を見る狼のような目で射竦め、微笑んだ。


「使えたのよ、ギオデン。死に損ないの小娘にそんなことができるなんて、思いもしなかったでしょう?」


オディーリアは胸元のネックレスに手を添える。


ギオデン王が契約で封じさせたのはオディーリアの身体に宿る魔力。だから、オディーリアは契約に署名させられる前に父の形見である金のネックレスに注ぎ込めるだけの魔力を注ぎ込んだ。そのネックレスから出る魔力を使って魔法を使っていたのである。


契約が解かれた今、一瞬で自分達を王都ごと滅ぼしかねない王女を前に国王は震え上がった。


国王は震える手でオディーリアを指す。


「こ、殺せ!」


衛兵達がオディーリアに向かって矢を放つ。だが、矢はオディーリアに触れることなく、見えない壁にぶつかって弾かれる。


「誰か、あれを持ってこい!!」

「金庫の中身なら、とっくに壊したわ」


国王が言う、あれ、とは父達を殺した魔道具である。魔法を使う度にその魔力と生命力を奪い取る代物だ。国王の下で極秘に開発され金庫に保管されていたが、オディーリアが設計図と共に破壊したためもう存在しない。


「金庫に入っていたものぜんぶ、よ」


国王は、父達から奪い取った魔力を国境の要所のシールドに変換する装置も作らせていた。だからここ数年、隣国との小競り合いは勃発しても大事には至らなかったのである。


国王はわなわなと震え、今にも泡を吹いて倒れそうである。


「あなた達が私の国から奪ったものは返してもらうわ」


高々と宣言したオディーリアは両手を前へ差し出す。


「“我が国の雫たちよ、はばたけ”」


オディーリアの魔法によって、国王や王妃が身に付けていた宝石たちが小鳥に姿を変え、素早く飛び立っていく。それと同時に、凄まじい羽ばたきの音が会場の外、王宮の奥からも響いてくる。国庫に仕舞われていた金や宝石たちである。


王家だけでなく高位の貴族達が身に付けていた宝石の一部も姿を変えて飛んでいく。


小鳥を捕まえようと、王家や従臣、貴族達が無様に跳ね回る。


あまりにもいいように転がされる彼らを見ながら、オディーリアは妖艶な微笑みを浮かべた。


遂に、オディーリアは一族の無念を晴らしたのである。


小鳥に姿を変えた宝石は、気が済むまで飛び続けた後、どこか遠い地で元の姿に戻るだろう。


品位のかけらもなく騒ぎ慌てふためく人々を尻目にオディーリアが会場を去ろうとしたとき。


「待ってください」


見下ろすと、この国の第四王子バーナードが真っ直ぐオディーリアを見上げていた。


「僕も、連れていってください」


王子は十二歳にして、第二王子のような馬鹿とは違う真剣な表情でオディーリアを見つめている。


王子の髪は金髪だったが、オディーリアと同じ濃いグレーの瞳をしていた。オディーリアが王宮内を調べまわっているときに出会った、素敵な掘り出し物である。生まれてすぐに母を亡くし、微々たる魔力しか備えていなかった王子は王宮の隅で虐げられながら生きていた。


「あなたの魔力を封じていたのは王家じゃなくてアドリアナよ」


そう教えてやりながら、第四王子の胸元を指差してオディーリアの物と似た金のネックレスに掛けられていた封印を解く。


アドリアナとは、オディーリアの父の従姉妹で、ギオデン王が側室に召し上げた娘である。


封印が解けたことで、王子の金髪がすうっと黒く染まる。


「自力でついていらっしゃい」


そう言い残してオディーリアは立派な黒鳥へ姿を変え、第四王子はその後を追った。


人々が大混乱に陥る中、二羽の黒鳥が大空へ飛び立った。








その後、資金を失い国境の防壁を失った大国は、隣国に攻められ、わずか数年後に滅んだ。王家や貴族達の多くは処刑されたり、身分を剥奪されたりして平民に身を堕とした。


あの日空に飛び去っていった小鳥達は、辺境の貧しい地域や祖国を離れるしかなかった島の民のもとで姿を変え、戦争や長く続いた争いで困窮していた平民達を潤した。


かの小さな王国が復活することはなかったが、島では再び美しい花々が咲き乱れ、珍しい鳥達が舞い、楽園と称された頃の姿を取り戻しているという。時折、仲睦まじい黒鳥のつがいを見かけるのだ、と人々は噂した。


読んでくださりありがとうございました。


古典バレエ『白鳥の湖』から着想を得、勢いで書き上げました。


いいねなどして頂けたら、感謝感激でございます。


ではではこれにて。



【1/26追記】誤字報告してくださった方、ありがとうございます!びっくりするくらいミスがあり赤面しております。短期間で沢山の方に読んでいただき感激です。

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