表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私のナイトはテディベア  作者: 三羽高明


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/11

真っ暗なお城の中で(1/3)

「テディ!」


 ツグミはテディを抱き起こします。けれど、テディはピクリとも動きません。その目からは光が消えていました。


「ど、どうしよう……! 早く直さないと!」

「あはははは! 無駄無駄! 無駄ですよ、姫!」


 慌てふためくツグミに対し、ビーストは上機嫌になっています。真っ黒なモヤを弾ませながら、辺りを飛び回っていました。


「サー・テディはもう動かない! やった! やった! 邪魔者が消えた!」

「そんなことない! どんな怪我をしたって、私が直してあげるんだから!」


 ツグミは気丈に言い返しましたが、ビーストは「できませんよ」と笑います。


「心臓は一つしかない! 壊れたらそれでおしまい! さようなら、サー・テディ! あはははは!」


「何を言って……」


 ツグミは混乱しましたが、ふとテディの言葉を思い出します。


――この綿と糸でできた体にも、心臓が宿るでしょう。


 勲章について話していた時のことです。ツグミはテディの胸元を見ました。


 彼の勲章は真っ二つに割れていました。背中から突き刺さった触手が、テディの左胸を貫いていたのです。


「そ、そんな……」


 テディが「心臓」と表現するくらいだから、勲章はきっととても大切なものだったはずです。


 ツグミはビーストが言った、「壊れたらそれでおしまい」という言葉が嘘ではないのだと理解しました。


「憎いナイトはいなくなった! これで……これで姫はワタシのものだ!」


 辺りが暗闇に包まれます。その内に何も見えなくなり、ツグミはどこまで続いているのかも分からないような、真っ暗な空間に閉じ込められてしまいました。


 ツグミはその様子を、動かないテディを抱きしめながらぼんやりと眺めます。


(どうしてこんなことに……)


 ツグミはテディの頬を撫でます。


(助けて、テディ。あなたは私のナイトでしょう……?)


 けれど、答えは返ってきませんでした。


「姫、まだそんなものに肩入れするのですか?」


 不満そうな声を出しながらビーストが近寄ってきます。


「それはもうただの綿の塊なんですよ。姫のお役には立てないんです」


 ビーストはツグミの腕の中からテディを引ったくりました。ツグミは「返して!」と声を荒げますが、ビーストは無視します。


 ビーストの体が少しの間消えました。しばらくして戻ってきた彼が触手に絡め取っていたのは、ツグミの家のリビングに置いてあったゴミ箱です。


 ビーストはまるでツグミに見せつけるように、そのゴミ箱の中にテディを乱暴に捨ててしまいました。


「テディ!」


 ツグミは金切り声を上げます。ビーストは「落ち着いてください、姫」と優しく言いました。


「姫にはワタシがいるではありませんか。さあ、何なりとご命令を」

「じゃあ、テディを返してよ!」


 ツグミはビーストを睨みました。


「それで、私をここから出して!」


「姫、ここはワタシの城です。ここにいれば姫は安全なのですよ。あのクマにはこんな芸当、できないでしょう? お分かりですよね。もう姫を守れるのはワタシだけだということを」


「……守る? 何言ってるの……?」


 ビーストの言い分がまるで理解できず、ツグミはうなだれます。彼は自分と敵対していたはずなのに、一体何を考えているのでしょう。


 知れば知るほど、ビーストはツグミにとって理解不能な存在となっていきます。


 それでも、ただ戸惑ってばかりいるのはどうにも気に食わないので、ツグミはビーストに挑むような目を向けました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ