勲章を求めて(1/2)
「困ったね。もし他に敵がいて、そいつもビーストみたいに強かったら、またテディが怪我しちゃう……」
「そのことなのですが……」
テディはちょっと遠慮しながら口を開きます。
「もし『勲章』があれば、わたしも新たな力を得ることができるかもしれません」
「勲章……」
意外なことを言われて、ツグミはちょっと驚きます。そして、ポーチの中からテディの完成予想図を書いた小さなノートを取り出しました。
そこに描いてあるテディは、今目の前で動いているぬいぐるみとほとんど同じ姿をしています。
けれど絵の中のテディには、胸の辺りにハート型の赤いビーズがつけられていたのでした。これが「勲章」です。テディの素晴らしさを証明するための装飾でした。
「そういえば……テディってまだ完成していなかったんだよね」
「はい。わたしはまだナイトとしては未熟ですから。それでも、姫から勲章をいただければ、きっと今よりも強くなれます」
「そういうものなの? 武器とか鎧とかじゃなくていいの?」
「構いません。勲章は姫がわたしの存在を認めてくださったという証のようなもの。それさえあれば、この綿と糸でできた体にも、心臓が宿るでしょう」
「大げさだよ」
ツグミは苦笑いしつつも、ポーチの中を探ってビーズ入れを取り出しました。
「でも、そんなのでパワーアップするならやってみない手はないよね。勲章に使おうと思ってたビーズなら、ちょうどこの中にあるし……あれ?」
ビーズ入れのフタを開けたツグミは思わず声を上げました。
「ない……。もしかしてこの間ビーズ入れを整理した時に、間違って捨てちゃった……?」
「何か代わりになりそうなものは?」
テディが尋ねます。けれど、ツグミは困ってしまいました。
あの赤いハート型のビーズは、ツグミが雑貨屋さんで一目惚れして買ったものだったのです。だから、どこにでも代わりがあるような品ではありませんでした。
それでも、ツグミはあることを思い出します。
「ちょっと前、図工の時間に写真立てを作ったんだ。その時ね、デコレーションにあの赤いビーズも使ったの」
その写真立ては完成した後に持ち帰ったので、今はこの家の中にあります。ツグミはそこからビーズを持ってくればいいのではないかと思ったのでした。
「リビングに飾ってあるよ。テレビが置いてある台のところ」
今いる場所からだと、廊下を出てすぐのところにリビングはあります。
「……ビーストに見つからずに取ってくるのは、恐らく無理でしょうね」
今のテディでは、ビーストに勝つのは難しいに違いありません。けれど、ここは無理をしてでも行くべきだとツグミは思いました。
テディの考えも同じだったようです。二人は顔を見合わせ覚悟を決めると、ドアを開けて部屋の外に出ました。