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ビーストの正体を探れ(1/2)

「お前たちの親玉は何者だ?」

「テディきょうが何か言ってるよ~」

「ボクたちと遊びたいんだって~」

「だったら、ナゾナゾしようよ~」


 話半分で聞き流され、テディは「おい、何を言ってるんだ」と顔をしかめます。けれど、手下たちはそれも受け流しました。


「それは水の後ろにいて」

「それはミルクの前にあって」

「それは戦う人の真ん中にいます」

「さて、なーんだ?」


 最後は声を合わせて、手下たちは問いかけます。キャッキャッと笑う彼らを見たテディはすっかり機嫌を悪くして、持っていた剣を手下たちに向けようとしました。


 それを見たツグミは「まあまあ」とテディをなだめます。そして、手下たちに話しかけました。


「ねえ、私たち、あなたたちのボスのことが知りたいの。何か教えてくれないかな?」


「それは水の後ろにいて」


「それはミルクの前にあって」


「それは戦う人の真ん中にいます」


「さて、なーんだ?」


 ツグミは丁寧な口調で尋ねましたが、彼らは同じことを繰り返すばかり。テディは呆れて「ふん」と鼻を鳴らしました。


「この者たちは何も知らないのでしょう。わたしたちに遊んでいる時間はありません。行きましょう、姫」


「でも……」


 何かが引っかかり、ツグミは首を傾げます。


「手下たちは『ビーストの正体は何?』っていう質問にナゾナゾで答えたんだよね? っていうことはさ……。この問題を解いたら、ビーストの正体が分かるんじゃないかな?」


「ナゾナゾの答えがビーストの正体……? そうなのか?」


 テディはちょっと驚いたように手下たちに尋ねます。それに対し、彼らは「どうかな、どうかな~?」と思わせぶりな返事をしました。


 はっきりとしない答えですが、これがヒントなら見逃すわけにはいきません。ツグミはポーチからメモ帳とペンを出して、手下の言ったことを書き留めました。


「水の後ろでミルクの前で、戦う人の真ん中か……。この三つって、何か共通点でもあるのかな?」


「水とミルクは液体ですが……。『戦う人』は何と戦っているのでしょう?」


「うーん……。お化けとか、危険なものとか? 戦争、病気、猛獣……」


「猛獣……猛獣ですか。それに……後ろ、前、真ん中……」


 テディは閃くものがあったようです。ツグミのメモ帳に何かを書き込みました。


『水○』

『○乳』

『闘○士』


「姫……つまり、こういうことでは?」


 テディはツグミにメモの内容を見せます。


「ミルクは『乳』のことですし、戦う人は『闘士』とも言います。それで、この『○』の中に入るものですが……」


「牛!」


 テディの言いたいことが分かったツグミは大声を出しました。「○」を「牛」に置き換えると、「水牛」、「牛乳」、「闘牛士」になると思い至ったのです。


「『水の後ろ。ミルクの前。戦う人の真ん中』ってそういう意味だったんだね! 水牛は図鑑で見たことあるよ! 闘牛士って、赤い布をヒラヒラさせて牛と戦う人でしょう? ナイトみたいで格好いいって思ってたんだよね!」


「さすが、姫は物知りですね」


 テディは満足そうに頷きました。手下たちの方に視線を向けます。


「聞いていたな? 答えは『牛』。つまり……お前たちの親玉の正体は牛なのか?」

「キャハハ! 牛だって~」

「テディ卿、おもしろ~い」


 手下たちはすぅっと消えていきます。テディは「おい!」と言って引き留めようとしましたが、不意に辺りに寒々とした空気が漂い始めました。


 手下たちと入れ違うようにして現われたのは、親玉であるビーストです。けれど、最初に見た時とは姿が違っていました。モヤの中から、にょきっと牛の角が生えていたのです。


(やっぱり、ビーストの正体は牛だったんだ)


 ツグミは、あのナゾナゾの答えは「牛」で合っていたと確信しました。


(でも、どうして角しか見えないんだろう)


 てっきりモヤが晴れて牛の化け物が登場するのかと思っていたのに、そうではなかったようです。


 ツグミはそのことが少し気にかかりました。

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