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42話 割と平和な巡回業務

 ライルはリンドルを伴って街の周囲を巡回していた。外堀を目安に微弱な結界が張られていて、弱い魔物は入ってこれないようになっている。


 しかし稀に強い魔物が街への侵入を試みたり、外壁の死角で賊や密売人が良からぬことを企てる。その為、警戒は必須となっていた。


 そしてこれは各冒険者ギルドで持ち回りでやっている業務だ。この街に設立されている冒険者ギルドであれば、等しく巡回の責務を負っている。


「あーあ。踊りが上手い奴はいーよな。お前ちょっと完璧過ぎじゃねぇか?」


 リンドルはジト目でそんな事を言った。


「俺はヴェイナーにタコ踊りとか言って大ウケされたんだぜ?」

「それは……俺は、どういった言葉を返せばいいのでしょうか?」


 リンドルは「別にいいんだけどよ」と言って左手を振った。右手は、いつでも剣を抜けるような状態だ。


「お前とティリアちゃんさぁ、ギルドの生誕祭で話題になってたぜ。すげぇラストダンスで息ピッタリだったらしいじゃねぇか」


 するとライルは嬉しそうな顔をする。


「俺はずっと、ティリア様のダンス練習で男性パート役を務めていましたから」

「へぇ。練習相手だけやってたのか? それなら、ティリアちゃんが本番で踊る相手は別にいたんだよな?」


 ライルは一転して厳しい顔付きになった。舞踏会が開催される日は、面倒そうな顔で王太子がティリアを迎えに来ていたからだ。


「ティリアちゃんが別の男と踊るとかさぁ。よくキレずに我慢出来たな」


 リンドルの顔には茶化すような様子はない。至って真面目だ。


「剣術だってそうだ。どれだけの苦行を続けたんだよ? 止めたいとは思わなかったのか?」


 純粋な疑問だった。自由奔放なリンドルなら、とっくに諦めて別の道を模索していたはずだからだ。


「俺は特別な何かをやってきたつもりはありませんよ。自分がやりたいようにやって、好きなように生きてきただけです」

「ヴェイナーと同じような事を言うんだな」


 ギルドマスターとして働くヴェイナーの信条は「己の欲するままに」だ。それはギルドメンバー達にも広く知られている。


「リンドルさんもそうじゃないんですか?」

「俺が?」


「このギルドにいたいから、いるんですよね?」

「まあな」


 他所のギルドで高ランク冒険者達とパーティーを組めば、アッサリと駆け上がれるだろう。だがリンドルは、そんな事には興味がなかった。


「あの鉄の女が『リンドル素敵! 大好き!』って言うまで、俺はウチのギルドで粘り続けるつもりだからな。不退転の覚悟だ」


「それは無理なんじゃないですか?」

「言うんじゃねぇよ! 分かってんだよ馬鹿野郎!」


 ライルは一途なリンドルに近しいものを感じた。


「そろそろ見回り時間も終わりますが、特に異常はありませんね」

「まぁ見回りなんて、基本こんなんだからな。魔物だの賊だのが攻めて来るなんてのが稀だっての」


 態度はやや軽薄だが、リンドルの目は鋭い。ここを突破されればギルドやヴェイナーに被害が及ぶ可能性もあるから、真面目にやっているのだろう。


「なぁライル。ティリアちゃん魔力ないんだって?」

「はい。俺に蘇生魔法を使って以降、魔力が失われてしまいましたから」


「魔力が復活する可能性って、あるのか?」

「分かりません。あると信じたいですが」


 そんな事を話していると、交代要員が別のギルドから派遣されてきた。そのまま挨拶を交わして連絡事項を告げ、ギルドへの帰途に就く。


「魔力を自由に受け渡せる魔女も、過去にはいたらしいぜ」


 リンドルは歩きながら何となしに言った。


「本当ですかっ!」

「うおっ! 急に何だよ? お前はティリアちゃんから魔力を貰ったんだろ? それと似たようなもんじゃねーか」


 目から鱗だった。


「魔女は魔法のエキスパートだしな。お前も、おあつらえ向きに《魔導超越者(マジックマスター)》なんてスゲェ天啓あるんだし。気合入れて魔法の研究でもやってれば、いずれ同じような境地に辿り着くんじゃねーの?」


 ライルは力強く頷いた。ティリアに魔力を返せるのであれば、それはライルの望むところだからだ。


「でもさ、ティリアちゃんに魔力を返せたとしたら、お前はスゲェ弱くなるんだろ? その時はどうするつもりだ?」


 魔法を使えないライルは弱い。かといってソードスキルが使える訳でもない。ティリアに魔力を返せば、只の弱い剣士に成り下がってしまうだろう。


「ティリア様の敵が現れたら、俺の持つ全力で勝負します」

「やれんのか? ソードスキルも使えないし、魔法も《火球(ファイヤーボール)》のダブルマイナスしか使えないって聞いたぜ?」


「俺の魔力はティリア様からいただいた物ですが、俺の頭の中に展開される魔導構成式は俺が理解した物です。例え膨大な魔力を失おうとも、魔力を扱う知識だけは俺の血肉となっています。だからどうにかしてみせますよ」

「へぇ。お前って意外と楽天家なんだな」


 リンドルは呆れている。


 そうしてギルドに到着し、入り口の扉を押し開けた。

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ…実際に剣技は身に付いてたからなぁ… 魔力返しても知識は残る…か。
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