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17話 魔導超越者の初陣(バトル回)

祖国を出たライルは、隣国の冒険者ギルドに所属した。

街に襲来したワイバーンを迎え撃つ。


ヴェイナー:女ギルドマスター

ゼンじい:ギャンブル狂い

「女の尻を追っ駆けとる奴は威勢がいいのう」


 ゼンじいが横からヒョッコリ現れる。


「いえ、俺は……」

「誤魔化さんでええわい。ボーナス取ったら好きなモンでも買うてやれ」


 そう言うゼンじいの目は、やる気に満ち溢れている。


「さあやるぞ! 気合入れんかい皆の衆!」

『おおおおおおおお!』


「ゼンじい。妙に張り切ってない?」

「何を言うか。わしゃいつも通りじゃ」


 ヴェイナーは「怪しいわね」と言って、胡散臭げにゼンじいを見る。


「賭けてるでしょ?」

「賭けらいでか! ギャンブルは人生の活力よ!」

「ハイハイ。そうね」


「ワシが魔力枯渇で倒れるまでは、止めてくれるなよヴェイナー? 今日は魔法使い共に《魔力回復(マジックヒール)》を掛け続けにゃならんのでな」

「止めないわよ。止めたら暴れそうだし」


「ワシの邪魔をする奴は地獄の果てまで追い込んでやるからな!」

「だから邪魔なんてしないって。ゼンじいとは一蓮托生だろうしね。どうせ超大穴のウチに賭けてるんでしょ?」


「分かり切った事を訊くな。当然、我等が《鷹の眼(ホークアイ)》が最優秀ギルドに選ばれるに全財産ブッ込んどるわ」

「うへぇ。相変わらずの狂いっぷりね」


 ゼンじいは「フン」と言って口角を上げる。


「ヴェイナー。ワシとお前の利害は一致しておる。手を抜くなよ?」

「全力でやるに決まってんでしょ。ほら行くよゼンじい」

「おうともよ! いざ戦場じゃ!」


「行くぞ野郎ども!」

『おおおおおおおお!』


 ギルドメンバー達は、街の外へと向かって突き進む。


「スッゲェ―数のワイバーンだな」

「腕が鳴るぜ」

「毎年のことながら壮観ね」


 遠方には千体超えのワイバーンの群れがいた。


『皆さーん。ワイバーンが来る前に、攻撃態勢を整えてくださいねー』


 冒険者総括協会の女性職員が、拡声魔法を使って注意事項を伝達していく。冒険者総括協会は、各冒険者ギルドの取り纏め組織だ。


 街の城壁近辺には、どんどんと物資が運び込まれていく。強弩や投石器や攻城兵器等の大型武器もあれば、手槍や弓のような人力に頼る普通の武器もあった。


 通常それらは、上空を飛ぶワイバーンには届かない。なので様々な付与魔法や身体強化魔法を使って、標的まで届くようにしてやる必要がある。


「《身体能力強化(フィジカルブースト)》」

「《射程延長(ロングスナイプ)》」


 補助系の魔法が使用可能な者は、次々に魔法を発動させていた。彼等は忙しく動き回っており、まるで鉄火場のような状況だ。


『使い魔を使役される方は、味方の射線上に入らないように注意してくださーい』


 着々と準備は進んで行く。


「どうライル? 気負わずにいけそう?」

「大丈夫ですよヴェイナーさん」


 力を失う前のライルは修羅場も経験している。緊張で身体が震えるような事は無い。


「落ち着いてるならいいわ。無理だけはしないように。怪我の元よ」

「はい。あの、ヴェイナーさん」


「何?」

「ワイバーンは将来の脅威に成り得るんですよね?」


「なるわ。国内のワイバーン被害は年々増えてるし。今日撃ち漏らした個体が、いつかアンタやティリアちゃんを襲うかもよ?」

「……分かりました」


 ライルは深刻な顔で頷いた。


『それでは、攻撃開始!』


 女性職員の声を合図に一斉攻撃が始まった。そこかしこで魔法の光が輝き、物理的な武器も次々に空へと放たれていく。


(ティリア様の障害は排除する!)


 ライルは呼吸を整えると、詠唱しながら魔法の印を切る。


「《印詠省略(ロジックカット)》」


 古代上位魔法だ。しばらくの間、魔法の発動に印や詠唱が不要となる。


「《魔法混合創成(クロスマジック)》」


 こちらは魔法の融合を可能にする古代上位魔法だ。

 そしてライルは魔法を次々と重ね合わせていく。


威力増幅(ダメージブースト)

身体能力低下(フィジカルダウン)

特殊防御解除(シールドキャンセル)

氷属性付与(アイスエンチャント)

魔法分裂(ディヴィジョン)

自動追尾(オートトラッキング)


(身体が燃えそうだ)


 魔法を追加していく度に、ライルの体内を流れる魔力が膨大になっていく。


「《雷光の射手ライトニングシューター》」


 攻撃の核となるのは、古代においても最上位となる雷魔法だ。

 ライルの左手には神々しい弓が、右手には光の矢が現れる。その矢には氷属性を含む諸々の追加効果が付与されており、凄まじい魔力が圧縮融合されていた。


 ライルは矢をつがえて弓を弾き絞り、


「滅せよ!」


 高らかな声と共に矢を放った。雷光となった矢は瞬時にワイバーンの群れへと到達し、数千本の光に分かれて一斉に貫く。


 直後に雷鳴が轟き、致命傷を受けた数多の個体が落下していった。数十体のワイバーンは辛くも生き残ったが、すぐにその肉体が凍り始める。満足に羽を動かす事も出来ず、成すすべもなく地上へと落下していった。


 ワイバーンは傷を負って翼が凍り、いくつものデバフ効果を受けている。そんな状態では、上空からの落下に耐えられるはずもない。全滅だ。


「終わりましたよティリア様」


 魔導超越者(マジックマスター)ライルは、冒険者としての初陣を勝利で飾る。

 歴史的瞬間に居合わせた者達は、ただただ呆然とするしかなかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 恋する男の子は強いな(笑)
[一言] ゼンじい大儲け!(笑)
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