表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/77

13話 魔導超越者の誕生

「ゼンじい! ちょっと来て!」


 ヴェイナーは室内に入って2階へと駆け上がる。そして慌てた様子で駆け下りて来ると、その後ろには1人の小柄な老人を連れていた。


「急に何じゃヴェイナー? わしゃ忙しいんじゃが?」

「何が忙しいだ! 賭け札で遊んでただけでしょうが!」


「ん? バレとったか」

「アンタはもっと仕事しろ! それより大変だって。あれなんだけどさ」


 ヴェイナーは空を指差すが、そこには何も無かった。


「雲があるのう」

「ちゃんと見ろ! 魔力測定器が無くなってるでしょ!」


「ありゃ、本当にのうなっとるわ」

「この子が消したんだって!」


 ヴェイナーはライルを掴み、グイッと老人の方へ押し出した。


「ん? どこかで見たような顔じゃな」

「そのやり取りはもうやったから。この子は今年の大陸覇者闘技会の優勝者で、あのライル・グローツ」


 老人は「なんとまあ」と言って、ライルをしげしげと見る。


「で、このライルが《火球(ファイヤーボール)》で魔力測定器を消し飛ばしたんだよ」


「はぁっ? そんな訳あるかい。《火球(ファイヤーボール)》でアレを消せる魔法使いなんぞおらんわ」


「いるでしょうが!」

「どこにおる?」

「ここ!」

「どれじゃ?」

「だからコレだって言ってるでしょ!」


 コレ扱いされたライルは、再度ズイッと押し出される。


「とにかくさ、ライルの天啓をサクッと調べてくんない?」

「天啓探査なぞ5、6歳児相手にやるもんじゃろうが」

「いいからやってよ」


 ゼンじいは、ギャンブル好きが高じて神官をクビになった男だ。だがモグリの神官に身を落としたとはいえ、人の天啓を見る力までは失われていない。


「やってもいいが、結構キツイからなぁ。今後2ヶ月間は毎朝のメニューにスモークサーモンを追加してもらうぞ」

「2ヶ月は無理。2週間でいいなら検討してあげる」


「けっ。話にならんわ。出直して来い小娘が」

「ギルドマスターに向かって小娘とはねぇ。調子に乗ってんの?」


「すまんかった! 持病が悪化するんで、その『殺っちまった直後』みたいな目は止めてくれんか? 2週間で手を打つから。な? な?」


 ヴェイナーが頷くと、ゼンじいはコホンと咳払いをする。


「《天啓探査(ギフトリサーチ)》」


 ライルに手を向けて魔法を唱えた。


「なんと……」

「ちょっと、どうしたのゼンじい? まさか心臓止まってんじゃないでしょうね? ねえゼンじいってば!」


 ヴェイナーが揺さぶると、ゼンじいは真顔で唸った。


「マジックマスターじゃ。マジックマスターと出ておる」

「はぁ? マジックマスターって何それ?」


 初めて聞く天啓に首を傾げるヴェイナーだったが、ゼンじいはとんでもない事を告げる。


「ライルは《魔導超越者(マジックマスター)》。つまりは魔法を極めし者じゃよ。おそらくは世界唯一の天啓じゃろうな」

「ええええええ!」


 ヴェイナーの驚く声が遠くまで響いた。


「ライル。貴方に良い知らせと悪い知らせがあるわ。どっちから聞きたい?」

「そ、それでは良い知らせの方からお願いします」


「おめでとう。ギルド《鷹の眼(ホークアイ)》は諸手を挙げてアンタを歓迎するわ」

「あ、ありがとうございます」


 ヴェイナーに詰め寄られて、思わず礼を述べてしまった。


「それで、悪い知らせというのは?」

「アンタはウチのギルドから抜けられない。さっき記入してもらった紙には、そういった類の呪いが掛かっていたってわけ。ふふふふふっ」


 ヴェイナーは笑いながら更に詰め寄る。


「嘘吐けぃ小娘が。騙されるんじゃないぞライル。手印も押しとらんペラ紙1枚に、んな効果あるかい」

「ちょっ!? バラさないでよゼンじいっ!」


 ツッコミを入れられたヴェイナーは、ゼンじいを鋭く睨む。


「まあ冗談はさておき、ウチのギルドで働いてもらいたいのはガチだから」

「冗談じゃと? 9割方本気で言ってたように見えたがなぁ」


「ゼンじい。ポーション用素材にヒール掛ける仕事を取れるだけ取ってきてやろうか? とりま3年くらい部屋に篭れば終わるからさ」


「ほんにすまんかった! ポーションの原料造りはキツイんじゃ。持病の癪が悪化するんで勘弁してくれんか? ゴホッゴホッ!」


 わざとらしく咳をするゼンじいだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まさかのマジックマスターへジョブチェンジ!(笑)
[良い点] なんかすごいことになってきたな(笑) でも、出会ったみんないい人で良かったです。 [一言] 活躍に期待です。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ