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#009

――これではいけませんわ。……どんどん暗い雰囲気になっていってしまいます。


 悠花も澪も、普段はもっと明るく接してくれています。たしかに思い出せている前世の記憶は暗いものばかりになってしまっていましたが、これは何かのチャンスかもしれないのです。


「悠花さん、澪さん、私の考えを聞いていただけませんか?」


 彩音が明るい声で二人に呼びかけます。二人は俯き加減になっていましたが、驚いて顔を上げました。


「……確かに、前世の記憶は暗く悲しいものでした。それに、前世とのつながりが、今の世界にもあるのかもしれません。」


 ここで彩音は笑顔を見せてから、二人に言いました。


「でも、これはチャンスだと思うんです。」


「えっ?……チャンスですか?」


 悠花も澪も戸惑ったような表情で彩音を見ています。


「ええ、チャンスなんですわ。だって、軌道修正をする時間が3年もあるんですよ。」


 あの処刑台で神様は助けてくれませんでしたが、今回の人生では助かるためのチャンスをくれたと思うことにしました。


「前世では悪役として処刑されてしまったかもしれませんが、これからの時間を有効活用できれば、悪役になることは回避できると思うんです。」


「……あんな悲しい想いをしなくて済むんでしょうか?」


 澪が彩音の目を見ながら質問をしました。


「絶対に出来ますわ!」


 本当は、彩音にもそんなに自信はありません。17歳から先を生きていくことも大切ですが、17歳になるまでも大切なので悲しい気持ちのまま時間を無駄にしたくなかったのです。


「前世のことを思い出せればヒントも増えると思うのです。お二人と明るく楽しく問題を解決していけば、必ず大丈夫ですわ。」


 彩音の前向きな発言を聞いていた二人の表情は少し明るくなっていました。完全に気持ちが晴れたわけではないかもしれませんが、一人ではないと思えたことが嬉しかったのです。


「そうですわね。昨日、新聞を見つけてから前世のことばかりを考えていましたけれど、これからの時間が大切なことを忘れておりました。」


 悠花の言葉に澪が何度も頷いていました。

 先ほどまでの暗かった空気を跳ね除けて、これから先のことに向き合う準備が整いました。


「それで、お二人がよろしければ、今後は定期的に会議の場を作りたいと思うのですがいかがでしょう?」


「もちろんですわ。」


「私も、是非。」


 言葉にも力が戻ってきています。


 あんなにも残酷な処刑を17歳の女の子にすることは日本ではあり得ないことと分かっていても、前世との繋がりは軽視できない問題でした。現に、島崎は前世と似たような罰を受けています。

 まだ前世のことは思い出せていないのですが、きっかけがあれば思い出す可能性はあります。


「では、三人で明るい未来を勝ち取りましょう!」


 彩音が力強く声を発すると、悠花と澪も『はい!』と力強く続きます。

 そして三人は、自分たちに不似合いな状況になっていることを察して笑い合いました。


――絶対に何とかしてみせますわ!


 彩音は、もう一度心の中で誓います。

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