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#069

「……それにしても、夢で前世の出来事が再現されることは発見かもしれませんね。私は処刑シーンを思い出したくなくて、無意識に思い出すことを避けていたのかもしれません。……これからは、澪さんのようにベッドで考えてみるのも良いかもしれませんね。」


「はい。……ですが、彩音様は絶対に無理をしないでください。もし、それで処刑される瞬間を思い出してしまったら、衝撃は測り知れません。」


「そうですわ。順調に進んでいるはずですし、時間もあります。ゆっくり記憶をたどりましょう。」


「ありがとうございます。……それを言うのであれば、澪さんや悠花さんも同じことですわ。お屋敷を襲撃されて命を落としているのですから……。」


 処刑された記憶も衝撃は大きいが、襲撃されてしまった衝撃も大きいはずで、澪や悠花のことも心配になっていました。


「それが、襲撃されたときの混乱で記憶は途切れてしまっているんです。」


「私も澪さんと同じですわ。……武器を持った人たちが押し寄せてきたのを見て、気を失ってしまったんだと思います。」


 澪と悠花は、お互いを見て記憶を確認し合います。

 処刑台の上にいた彩音は気を失うことも出来ず、処刑を見ている観衆の目と処刑台にあるギロチンを記憶していました。


「私は、観衆の目に怯えながら、ギロチンを見ていて……。神様に祈り続けていました。……何度も、『助けてください』と心の中で……、祈り続けていたんです。」


 語りながら、彩音は強烈な眩暈に襲われました。


「彩音様、それ以上のお話は大丈夫です!」


「もう思い出すのはお止めください!」


 澪と悠花の必死の呼びかけで、彩音の見ている景色は現代に戻って来ました。

 彩音は、この記憶が強烈過ぎてしまい、他の記憶が甦り難くなっているのかもしれません。


「……申し訳ございません、大丈夫です。……私は、ずっとこの悪夢を見続けることになるんでしょうか?」


「きっと、17歳のお誕生日までのことですわ。その日を無事に過ごすことが出来れば、必ず忘れられると思います。」


 悠花の言葉には希望が込められていました。そんな保証はどこにもないのです。

 気休め程度の言葉でしかないかもしれませんが、まずは17歳の誕生日を迎えるために準備をしていくしかありません。


「そうですわね。……そのために相談をしているところでした。」


 彩音は、少し無理をして笑顔を作って二人を見ました。

 ビアンカであった倉本沙織とは関係性を改善出来ていますが、まだ理事長の存在がありました。

 理事長と仲良くなるなんて未来は全く想像できないし、仲良くなるつもりもありません。それでも、彩音たちが平穏な生活を送る障害になっていることは間違いなさそうでした。


――楓さんは、どのような存在なんでしょうか?


 澪と悠花の記憶にはないと言われましたが、彩音は楓のことが気になっていました。

 どこかで見覚えがある程度で、未だ前世の記憶とは直結していません。倉本や理事長のように、前世での名前がスグに思い出せていた点でも相違がありました。


――やっぱり無関係なんでしょうか……。


 もし前世で関りがあったのであれば、ソフィアの処刑に関わっていたかもしれません。

 そんな楓に頼ってしまうことの迷いもありましたが、次の土曜日に会えることを心待ちにしてしまっていました。

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