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#064

 ここまで理事長の思惑通りにいかないことばかりになっていましたが、諦めるわけにはいきません。基本的には、彩音と浩太郎のご機嫌取りが一番の狙いであり、寄付金のおねだりがしたかっただけです。


「……次は、来月予定しております修学旅行で…………。」


 秘書を務めている川島郁也が、自分の計画を井戸川理事長に伝えました。


「それで、寄付金の増額をしてもらえるかしら?……学園の悪評にもつながりかねないから、慎重に考えなければなりません。」


「元々、計画していたことではありませんか。」


 表面上は穏やかに話していましたが、この段階で尻込みをしてしまう理事長に川島は苛立っていました。


「そうですが、予定外のことで、生徒会長には倉本さんが決まってしまいました。」


「だからこそ、次の手を講じなければなりません。一時的には学園に痛手もあるかもしれません。ですが、大企業の方が世の中の動向を気にするので、必ず学園に対策を講じるように言ってくるはずです。」


「その対策をするためには、費用がかかるってこと?」


「はい。そこで九条浩太郎が動けば、他も追随してくれると思います。……それに、このまま放置しておいて良いのですか?」


「……分かりました。あなたの計画で進めてみてください。」


 川島郁也も理事長が九条家を訪問した時に同行しておりました。楓と話ながら感情的になってしまう姿を見て、半ば呆れてもいます。

 試験結果が廊下に貼られた時も、『いつもと違う行動を取ってしまえば怪しまれる』と言って川島は止めていました。それでも、理事長は気持ちを抑えられずに見に行ってしまいます。


 結果として、川島の言葉通り、普段と違う理事長の行動が怪しまれてしまいました。


――クソッ、無能な人間の下にいると苦労させられる。……九条彩音が生徒会長になっていれば、今回の計画と合わせて、もっとダメージを与えられたかもしれないのに。


 理事長室から退出した川島はスマホを取り出して、連絡を始めました。


 寄付金が欲しい理事長と、九条彩音にダメージを与えたい川島。利害関係が一致しているわけではないので、川島が理事長を利用している側面が大きいかもしれませんでした。



 彩音たちは生徒会の問題が解消されており、次なる段階へ移行しようとしています。

 ただ、そこに『楓が進学しない』という問題が生じています。


「それぞれが選択することですから、仕方のないことなんですが困りましたわね。」


「そうですわね。楓さんからお話を聞ければ良かったんですが……。」


 最初、楓を巻き込むことに消極的だった澪と悠花が困り顔をしている状況になっています。

 彩音の手には、お茶会の時に撮った紅葉の写真があるので渡しに行く予定をしていました。その時、どんな話をすればいいのかを三人で打合せていました。


「……このままですと、お写真を渡すだけで終わってしまいますわね。」


 今、彩音の武器は写真だけです。

 これだけで、今後も連絡を取り合える関係をつないでおくことは難しいかもしれません。


 楓と前世で関りがあった可能性を彩音は捨てきれていませんでした。澪も悠花も、楓のことは楓としてしか認識していませんでしたが、彩音にとっては何か別な存在にも感じています。


 写真を早く渡してあげたい気持ちもありましたが、渡してしまえば途絶えてしまう怖さを消せません。

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