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#058

「……九条さん、生徒会の件、お心は決まりましたか?」


「はい。……明日には、先生に良いご報告ができると思います。お待たせしてしまい、申し訳ございませんでした。」


「そうですか。」


 満足そうに笑顔を見せてくれる担任に、別の意味でも申し訳なく感じてしまっていました。

 それでも、学園にとって良い報告であると思っているのは本心です。嫌々引き受けなければならない彩音が立候補するよりも、学園のために行動できる倉本沙織を推薦する方が、良い結果であることは間違いありません。


 推薦人は五人必要でした。

 彩音、澪、悠花、千和で四人でしたが、より効果的になるように最期の一人を千和が巻き込んでくれています。推薦用紙も千和がコッソリと持ち出してくれているので準備は万端でした。


「彩音様たちが動いてしまうと気付かれてしまうので、ここは私がやっておきます。……たぶん、彩音様と私がお友達になっていることは、まだ知られていないことなのでお任せください。」


 すっかり、この千和の言葉にも甘えてしまうことになっています。

 ただ、『お友達』を照れながら口にしたりもして、この状況を少し楽しんでいる様子もありました。


――ちゃんと前世のことも千和さんと相談できるようになれたらイイでわね。


 信じられないような話でも、千和なら信じてくれそうな感じがしていました。


――全てのことに意味があるのなら、きっと千和さんとのことにも意味があるはずです。それは、たぶん倉本さんとも……。


 希望的観測ではありますが、そうならないと前世と違う結果は得られません。彩音たちは信じて進むしかありませんでした。



 放課後、彩音たちが向かうのは千和の教室。

 誰もいなくなるまで時間を潰しており、千和からの連絡をまっての行動になります。


「……あっ、彩音様、お待ちしておりました。」


「千和さん、いろいろとありがとうございます。」


 教室の中には、千和ともう一人いました。

 髪は短くて、細身で長身。後ろ姿だけでも、活発な雰囲気を感じ取ることができます。


「えっ!?……彩音様?」


 振り返った姿は彩音たちもよく知っている顔でした。

 陸上部で全国大会にも出ており、全校生徒の前で何度も表彰されている新谷渉美です。

 千和が自信を持っていたことは頷けます。


 ただ、新谷渉美は詳しい説明を受けずに待っていた様子で、彩音たちの登場に驚いていました。


「千和……。これって、何が始まるの?」


 呼び捨てであることから、この二人の仲を知ることができます。


「大丈夫よ。……ちょっとお願いしたいことがあるだけなんだから。」


 千和は微笑みながら新谷に答えました。


「彩音様、こちらは新谷渉美さんです。」


「はい。もちろん、存じ上げておりますわ。」


 彩音たちも、それぞれに自己紹介をしました。

 改めて自己紹介をしている違和感もありましたが、同じ学園に通っていても、クラスが違っていると知り合う機会がありません。


「……生徒会に倉本さんを推薦するために、推薦人が五人必要なの。……その五人に渉美さんも加わってもらいたいんだけど、いいかな?」


「えっ!?倉本さんを推薦?……彩音様が立候補するんじゃないの?」


「それは、ただの噂話だよ。彩音様に立候補する意思はないわ。」


「……そうなんだ。……でも、この五人で推薦するなんて。」


 新谷は、自分以外の四人の顔ぶれを見ました。

 彩音、澪、悠花の三人は行動を共にすることが多いのですが、そこに千和が加わっていることが不思議なことです。


「誤解が解けて、お友達になったの。」


 不思議そうな顔をしている新谷を見ていて、千和が嬉しそうに話しかけました。

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