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#057

 その日の夜、千和から彩音に電話がありました。倉本沙織を生徒会に推薦する話を具体的に進めるためです。

 学園内では誰が聞いているかも分からず、理事長に情報が流れてしまうかもしれません。


「……倉本さんを生徒会に推薦しても良いのか、少し迷っております。」


『どうしてでしょうか?倉本さん以上の適任者はいないと思いますよ。』


「そうだとは思うのですが、倉本さんが私たちを見る時の目が気になってしまって……。」


『あっ、そうでしたね。……ですが、それなら尚のこと、倉本さんを推薦した方が良いと思います。』


 彩音に対して倉本の反応は露骨でしたが、千和が彩音たちと一緒に行動していることを知って驚いている様子も見せていました。


「……どうして、そう思われるのですか?」


『今回の生徒会選挙でも、彩音様が立候補されるかもしれない噂が既に流れております。』


「えっ!?そうなんですか?」


『はい。……今も立候補者が空席になったままなのは、締め切り間際に立候補する予定なんだと言われています。』


 学園側の思惑も含まれているかもしれませんが、彩音にとっては迷惑でしかない話でした。周囲が抱いている彩音像と、彩音の性格が乖離していることに驚いています。


「……迷惑な噂話ですわ。」


『そうですわね。ですが、彩音様は、彩音様が思っている以上に注目されている存在で目立つ方なんです。……私も直接お話をするまでは誤解しておりました。』


 彩音の愚痴に、千和が本音で答えてくれます。

 ただ、『誤解しておりました』と過去形になっていることを彩音は素直に喜んでいます。


『……先日もお話した通り、倉本さんは『目立ちたかっただけの人』に生徒会選挙で負けてしまったことがあったんです。だから、その時の状況と今を重ねてしまっているかもしれませんわ。』


「それで、あんな怖い目で見ていたのでしょうか?」


『そうだと思います。』


 その話が本当であれば、彩音が生徒会に参加することになれば、倉本沙織の彩音に対する評価は悪くなるだけです。

 千和は彩音たちの前世のことを知りません。前世での話を相談してみたい気持ちもありましたが、まだ時期尚早であり、澪や悠花の許可も必要になります。


――そうなると、倉本沙織さんを生徒会に推薦するしか道はないようですね。……ですが、ソフィアとビアンカさんのことは関係はないのでしょうか?


 倉本沙織が、ビアンカ・オリアーニである事実は無視できませんでした。彩音たちとしては、前世とは違う関係性を倉本と築きたいと考えていました。



 千和との話を終えてからも、結論を出せないままでいました。それでも期限は迫っているので覚悟を決めなければなりません。


――倉本さん以外に推薦できる方がいないのだから、もう選択肢はありません。……でも、いつか、ちゃんと倉本さんとも話してみたいですね。


 そんなことを考えながら、気持ちを落ち着けるためにパソコンの画面を見ていました。


――優しそうなお母さん……。


 お茶会の帰り、楓と紅葉を送った運転手にビデオを渡しておきました。

 タイミング良く、買い物から戻ってきた母親とアパート前で遭遇することになり、車から降りてきた紅葉を見てビックリしている様子が撮影出来ていました。


 母親に抱きつく紅葉を見ていると、重苦しかった気持ちが晴れていく感じがします。


――迷っていても仕方ありませんわね。……ヨシッ!


 楓や千和の力も借りて、ここまで進んできている状況を信じて、彩音は覚悟を決めました。

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