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#004

 それでも、自身の前世であるソフィア・シェリングの最期が処刑された事実はショックで、彩音は落ち着いて休むことも出来ませんでした。


 すると、部屋のドアをノックする音が聞こえてきます。


「どうぞ。お入りください。」


 彩音はベッドから体を起こしながら、ノックの音に応じました。

 確信はありませんでしたが、ノックをしているのが誰なのか見当はついていたのです。


「……お休みのところ申し訳ございません。失礼します。」


 そう言いながら部屋に入ってきたのは、鳴川澪と仲里悠花の二人でした。パジャマにカーディガンを羽織っていたので、二人も休んでいたと思われます。


「彩音様、お加減はいかがでしょうか?」


「ええ、もう平気です。……お二人も倒れてしまったと聞いて、心配しておりました。お加減はいかがです?」


「はい……、私たちも平気です。」


「それは安心しました……。」


 悠花が答えてくれているが、お互いに言い難いことがあるように探り探りになっています。聞きたいことがあっても核心に触れることを誰もが躊躇います。


 澪と悠花は、彩音とテーブルを挟んで向き合うように椅子に座りました。しばらくの沈黙を破ったのは澪でした。


「あのぅ……、彩音様が気を失われた時、私と悠花さんは同じことを思い出していたみたいなんです。……そのことを悠花さんとお話ししていて、彩音様ともお話ししたくなったんです。」


「……お二人とも同じことを、思い出されていたんですか?」


「はい。」「はい。」


 二人揃っての返事を聞いて、彩音は覚悟を決めました。


「……それは、前世での私が処刑された時の記憶でしょうか?」


「はい。……私たちは、ソフィア様が処刑されたところを見ていたわけではなかったんです。……ソフィア様が処刑されてしまったと報告を受けた後で、お屋敷に襲撃があったんです。……その時の記憶が押し寄せてきて……。」


 少しだけ興奮気味になって悠花が語り始めました。何の疑問も持たずに『ソフィア』の名前を出してしまっています。

 澪と悠花は『彩音=ソフィア』だと分かっていたようです。ここに来る前に二人で話をして確信していたのでしょう。


「……襲撃をされたのですか?」


「まだ、はっきりと思い出せてはおりませんが、その時の記憶で途絶えてしまっているんです。……澪さんも同じでした。」


「そうですか。……でも、三人が前世でも繋がりがあったことには驚きました。」


 二人とも、九条浩太郎に関連する会社の社長を父に持っていて、幼い頃から一緒に過ごしていました。

 そんな関係性は、おそらく前世の時から引き継がれているように感じています。


「悠花さんとお話ししていて私も驚きました。これまでご一緒しておりましたが、前世でもご一緒だったなんて不思議な縁を感じております。……ただ……。」


 澪は、ここからの事実を伝えてよいのか悩んでしました。ただでさえ処刑された前世のことを気に病んでいるのに、追い撃ちをかけることになってしまいます。


「……ただ……、どうしましたか?」


「はい……。大変に申し上げにくいのですが、処刑されてしまったということは、ソフィア様や私たちは悪役的なポジションではなかったのかと考えられるのです。」


「えっ!?……悪役……ですか?」


「失礼なお話しで、申し訳ございません。……ですが、そうでなければ処刑されたりすることもなかったと思うのです。」


 処刑された時の記憶が強烈過ぎて、処刑されてしまった原因まで考えが及んでいませんでした。

 それでも澪が言うように、処刑されるのであれば処刑されるだけの罪があったはずなのです。

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