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#039

――「ご期待に添える」って……。瀧内千和さんのご家族をお調べする目的をタエさんは知らないはずなのに?


 ただ調べて欲しいとしか、タエに伝えていませんでした。彩音自信も期待している答えはありません。


 着替えを済ませて部屋で待っていると、タエが紅茶を運んできました。いつもは紅茶を飲み終わる頃を見計らって来るのですが、待ちきれなかったのかもしれません。


「……あのぅ、タエさん?……ご報告を……お願いできますか?」


 話を始めたくてウズウズしているタエが近くにいては、ゆっくりお茶を飲んでいるような空気感にはなりません。


「いえいえ、彩音お嬢様の時間をお邪魔するなんてことは出来ません。」


「そ、そんなことございませんわ。……私も気になっておりますので、お茶を飲みながらでもよろしければ始めていただけませんか?」


 一応は世話係としての責務を優先させる態度を見せますが、本心でないこともバレバレです。


「そうでございますか?……それでは、早速ご報告させていただきます。」


 タブレットを用意して準備万端でした。


「まず、瀧内千和さんのご家族につきましては……、お父様は瀧内孝蔵さん、お母様は和香子さんになります。孝蔵さんは大きな会社を経営されておりますね。」


「あら、私と同じで一人娘なんですね?」


「いえ、千和さんには年の離れたお兄様がいらっしゃいます。……ただ、千和さんとはお母様が違っているのです。」


 なんとなく複雑な要素が出てきましたが、そんなに珍しい話でもありません。


「お兄様は賢太さんとおっしゃって、賢太さんのお母様である舞子さんは賢太さんが幼い頃に病気で亡くなってしまいました。……その後、孝蔵さんは再婚されて千和さんが生れたことになります。」


 なんとなく重い話に突入した感覚があります。彩音としては予想外で、こんなことを知ってしまって良いのか不安になります。


「……あっ、ご安心ください。そういった中でも家族仲は良好で和香子さんも賢太さんを大切に育てており、千和さんと賢太さんの兄妹仲も全く問題ございません。」


「良かったですわ。……少し緊張してしまいました。」


「ただ、兄妹仲が良いことが原因かもしれませんが、賢太さんがお父様の会社は千和さんが継ぐべきだと言って家を出てしまわれたんです。」


「えっ!?……そんな。」


「和香子さんにも気を使ってしまったのかもしれませんね。……賢太さんは優秀なお方で、自身のお力で会社を起こされたんです。」


「はぁ、そうなんですね。」


 聞いていて何とも言えない感情が湧き上がってきます。ここまでの話で彩音が期待しているような点は全く見当たりませんでいした。


「そして、ここからが重要になりますが、賢太さんの作った会社は浩太郎様の会社とのお取引を始めることになったんです。」


「えっ!?お父様の会社とですか?」


「正式な契約はこれからになりますが、お話は順調にすすんでいるようですね。」


 彩音と直接ではありませんが、千和の兄と浩太郎が関係してきたことで同期生以外の繋がりが生れていました。

 浩太郎の仕事上で関係することは、彩音が無関係と言い張っても周囲は信じてくれません。悠花や澪のように接してくれるケースはかなり珍しく、利害関係を築くために彩音に近付こうとする者もいました。


「今のところは、こんな感じでしょうか。」


 タエの報告はここまでのようです。


――タエさんのお話が今回の件に関係しているのであれば、どう対処すればいいんでしょうか?

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