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#036

『まぁ、あとは友達のあの二人にも感謝しておかないと。』


「えっ?悠花と澪にですか?」


『そう、その二人。……その二人がいなかったら、理事長の思惑通りに九条さんが1位になってたんだ。』


「あっ!そうですよね。」


 一瞬『九条さん』と呼ばれたことで他の内容を聞き逃しそうになりましたが、理解は追いつきました。

 悠花と澪とは、いつも同じくらいの順位を競っていました。彩音がポンコツを発症しなければ順位で上になることもあります。


『九条さんに対して勝ったり負けたり出来る関係の二人がいるから、良かったんだ。それに、あの二人に裏工作が通用しないことも理事長は分かってる。』


「……裏工作。……言葉にすると、何だか怖いですね。」


『大丈夫だよ。裏っていっても、全然隠せてない。』


「……はい。……せっかく一位になれても喜べなかった悠花に、しっかり感謝を伝えておきます。ありがとうございました。」


 楓は『また』と言って電話を切ってくれました。話をする前と後で、こんなにも気持ちに変化が生れていることに驚いています。

 今回の電話で、『あんた』の呼ばれ方から『九条さん』へ一気に昇格した気分になれていたことも大きかったかもしれません。



 電話を終えて、しばらくするとタエがやって来ました。普段やり慣れない作業であったことに加え、意外に不器用であった彩音はコツコツ進めるしかありません。


「……今日の彩音お嬢様は、眉にしわを寄せた難しい顔をなさらないのですね?」


「えっ!?私いつも、そんな顔をしていたのですか?」


 思うように作業が進まないイラ立ちが顔に出てしまっていたのかもしれません。今日は、あの話のおかげで晴れやかな気持ちで細かな作業にも向き合えていました。

 内から零れ出てしまう喜びが隠し切れていません。


「あっ、そうですわ。……タエさんにお願いしたいことがあるのですが、聞いていただけますか?」


「はい、何でございましょう?」


「私の同期生で瀧内千和さんという方がいらっしゃるのですが、その方のご家族についての情報が知りたいのです。お願いしてもよろしいでしょうか?」


「……どの程度の情報が必要になりますか?」


 タエの瞳がキラリと光ったように見えました。あまり深く掘り下げた情報は必要ないのですが、このままだとタエによって瀧内家は丸裸にされそうな気配があります。


「えっと、法に触れない程度で簡単に調べられる範囲で構いませんわ。」


「……左様でございますか。……承知いたしました。」


 タエのトーンが落ちていて、少しだけ残念そうに聞こえてしまいました。精度を求めてお願いをした紅葉の採寸データの時とは違います。


「明日、彩音お嬢様がお帰りになるまでには調べ終わっていると思います。」


「あっ、はい。……よろしくお願いいたします。」


 これまでは、生れた時から面倒を見てくれていたお婆ちゃん的な存在としてだけ接していました。それが、『忍者の末裔』と冗談ぽく言われていたことを思い出してしまいます。



 楓が言っていたように理事長のやっていることは『頭の悪い行動』かもしれません。そして、前世の因縁が関係してくるのであれば、ミケーラ学園がソフィアにも同じようなことをしていた可能性もあります。

 しかし、三人は全く記憶が甦ってきていませんでした。

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