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#028

「……それに、理事長が彩音様にお話しされていたことも、何だか変な感じがしました。」


「悠花さんも、同じことを感じていたんですね。」


「学年主席が高等科の入学式挨拶をすることは、学園の誰もが知っていることです。それを、『そんな決まりはない』と押し切ってしまうのは何だか……、不自然な感じがしました。」


 彩音は二人の話を聞いていましたが、理事長との会話中も同じことで反論していたはずです。その時も理事長は聞く耳を持たないといった返答をしています。


「私は、いつも試験で些細なミスをしてしまうので、それを無くすことができれば……。」


 もしかすると、学年トップの瀧内千和に勝つことができるかもしれません。


「それはダメです。……私たちは、彩音様がミスをした時に見せてくれる、『あっ』という可愛らしい顔が好きなんです。」


「そうですわ。時々登場される『うっかりさん』の彩音様がいいんです。全て完璧ではつまらないですわ。」


 悠花と澪は勢いよく言ってから、『しまった』という顔になりましたが語り尽くしてしまっています。


「……お二人は、私の反応を楽しんでいたということですね?」


 静かに言葉を返す彩音は、内心喜んでいました。どちらかと言えば、仲良く一緒に過ごしていても踏み込んだ会話をする機会は少なく、本音を聞けることを嬉しいと感じています。


「フフッ……。」


 彩音から笑いが漏れたことで二人も安心しました。


「……悠花さんも澪さんも、理事長の態度を不自然に感じていたことになるわけですが……。やはり、私たちの前世にも関係することが起こっているのでしょうか?」


 一番の問題点はそこになってしまいます。理事長が何を言ったとしても、前世との関連がなければ議論の必要はありません。


「まだ分かりませんが、これで無関係ということもないと思うのです。……楓さんとお話をされている理事長を見ていても、尊敬できるような方ではありませんでした。」


 悠花が残念そうに肩を落とします。それは彩音と澪も同じでした。


「学園の理事長が、私たちと同じ年の楓さんに『みすぼらしい人間』なんて表現をするなんて信じられませんでした。」


 楓が挑発的な態度を取ったとしても、大人の余裕で躱すこともできず低次元な口喧嘩になってしまったことが信じられません。


「……もしかしたら、楓さんが理事長の本性を引き出してくれた。……のかもしれませんね。」


 彩音の言葉は希望的な意味も含めていたかもしれせん。あの時に支えてくれた手の感触は今も背中に残っています。


「ところで、澪さんは紅葉さんと何をお話しされたんですか?」


 彩音が油断していたところに、一番知りたかった質問を悠花が投げかけます。静かに会話を進めていた中で、彩音の心拍数は急激に上昇しました。


「最初、紅葉さんはお茶会への参加を断られたのに、澪さんとお話しされた後は何だか嬉しそうなお顔をされてました。」


 あの時、悠花にも聞こえないほどの小声で紅葉と澪はヒソヒソ話をしていたことになります。彩音と気になる理由が違っていても、やはり気になっていたのです。


「フフッ、当日までのお楽しみにしたいのですが、いけませんか?」


 澪のもったいぶった答えに、彩音は『いけません!』と心の中で叫び声をあげます。そして、悠花が更なる追求をしてくれるように祈るのでした。


「それでは、余計に気になってしまいますわ。……こんな時に内緒話はダメです。」


 彩音はドキドキしながら紅茶を飲み、展開を見守っています。

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