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#027

 帰っていく楓と紅葉を三人は門まで見送りました。


「それじゃぁ、日にちが決まったら連絡頼むよ。」


「あっ、あの、父が強引で申し訳ございませんでした。……こちらでの調整が出来ましたら、連絡差し上げます。」


「まぁ、でも、紅葉も楽しみにしてるみたいだから……。」


 紅葉を見ると、ニコニコとしながら話を聞いていました。そして、彩音たちに『バイバイ、またね』と手を振りました。

 彩音としては『またね』が追加された別れの挨拶に変わったことは収穫が大きかったですが、紅葉の笑顔の理由が分からないのでモヤモヤの解消にはなりません。


「……それでは、ごきげんよう。」


 彩音たちの挨拶を聞いた二人は背を向けて歩き始めました。


「お兄ちゃん、『ごきげんよう』って、どんな意味なの?」


 紅葉が楓に質問している声が聞こえてきます。楓の答えは聞こえてきませんでしたが、困ったような横顔が見えました。


「……さぁ、お部屋に戻りましょうか。」


 この場でスグにでも澪から紅葉との会話の内容を聞き出したかったのですが、気持ちを落ち着けて冷静を装います。


「そうですわね。もしかすると、私たちの通っている学園が前世と関りがあるかもしれません。」


 澪はミケーラ学園長の記憶についてのことを早く話したい様子でした。悠花も澪の顔を見ながら、頷いて同意しています。


「……まずは、そちらのお話しからになりますね。」


 彩音が『まずは』と口にしたことで、他にも議論すべきことがあるのか分からなかった二人は『まずは?』となってしまいます。



 応接室から自室に場所を変えて、三人は紅茶を飲んで気持ちを切り替えることになりました。


「……あの、理事長とお会いした瞬間に、三人が同じ名前を思い浮かべたことは間違いないのでしょうか?」


 最初に発言したのは悠花でした。


「ええ、ハッキリとミケーラ・オルドーイ学園長のお名前を思い出しましたわ。……彩音様も?」


「私もミケーラ学園長のことを思い出しましたが、お顔とお名前以外で気になることは何も記憶にございません。……お二人は何か他に思い出しましたか?」


 澪は『いいえ』と返事をしましたが、悠花は何か気になることがあるらしく、


「……確実な記憶ではないのですが、私たちが前世で通っていたのはユトゥルナ魔法学園だったような……。」


 と自信なさげに言いました。彩音と澪は『えっ!?』と驚きの反応を見せながらも、


「そう言われましたら、そうだったかもしれませんね。」


 前世と現世で名前が同じことにより、記憶が甦る感覚がなかったのかもしれません。彩音と澪は、その事実を認識したことで少しだけ怖くなってしまいました。


「……理事長だけでなく、学園自体が前世と繋がっているとして、何か意味があるのでしょうか?」


 澪の投げかけた質問には答えがありませんでした。

 ただ、三人が同じタイミングで前世の記憶が甦るらしいことになるのであれば、楓は前世と関りがないことになります。


――楓さんとお会いした時にも、何かを思い出せそうな感覚があったんですが……。澪さんや悠花さんに変化がないということは、やはり気のせいだったのですね。


 そして、前世と関係していたのが人だけではなかった事実も発覚しています。


「……ですが、今まで理事長のお顔で前世のことを思い出すことなんてありませんでした。あの日から何かが変わってしまったんでしょうか?」


「そうかもしれませんが、理事長とお近くでお会いする機会なんて、今日が初めてのことでしたし……。」


 澪と悠花は理事長と学園のことで考えを巡らせていました。現世の理事長が前世の学園長と関係していることしか思い出せてはいないので、このことでも目立った進展はなさそうです。


「……せっかく思い出すのでしたら、もっと色々な記憶を取り戻すことが出来れば有益な情報になるんですけど、少し不便ですわね。」


 思わず愚痴っぽくなってしまった彩音の言葉に澪と悠花は激しく同意する反応を見せました。

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