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#025

「えっ?……はい、何でしょう?」


 楓は戸惑いながらも大人しく従うことにしました。何度も帰ろうとしては止められてしまっているので、強行突破したかったが理事長とのことで後ろめたさがあるのかもしれません。


「先日、娘の誕生日を祝っていたが、あんなことがあって中途半端になっている。……それで、続きというわけではないが、また集まろうかと思うんだ。」


「……誕生日パーティーを、またやるってことですか?」


「いいや、あんな盛大なものではないよ。少人数でのお茶会みたいなもので、楽しい時間を過ごせればいいんだ。」


「はぁ……、それなら手伝いは必要ないですよね?」


 この時点で、楓はパーティーの手伝いを頼まれるとしか考えていませんでした。手伝いの依頼でなければ、自分が呼び止められた意味が分かっていません。


「君たちを、そのお茶会に招待したいんだが、どうかな?……もちろん、悠花さんと澪さんも是非。」


 彩音にとって、誕生日パーティーの続きは些末な問題でしかありませんでした。それでも、この提案は是非とも実現させたいイベントになります。

 悠花と澪は『ありがとうございます』とだけ答えましたが、楓は驚きを隠せません。


「えっ!?……俺たちも参加するんですか?」


 浩太郎が頷いて答えましたが、楓の視界に入らない場所で彩音が何度も首を縦に振っています。あまり感情を表に出すようなことがなかった彩音の素直な行動は珍しいことでした。


「あの時のお礼も兼ねて、君たちが来てくれると嬉しいんだがね。」


「……でも、俺は働きに来てたんですから、お礼なんて必要ないです。……それに、妹を連れてきたことも怒られちゃってるし。」


「働きに来ていたと言っても、給料はもらっていないんだろ?」


「……それは……、まだ給料をもらって働くのはマズい歳ですから……。母親に無理させるわけにもいかなかったんで、とりあえず手伝いくらいは出来るかなって思ったんです。」


「報酬をもらっていないのに来てくれたのであれば、あの日の君たちはお客様だ。」


 彩音たちは、楓と浩太郎の会話を聞いているだけになってしまっています。自分たちを同い年の楓が働いているという感覚が理解できていませんでした。

 楓は悩んだ表情を見せていましたが、


「……紅葉は、誕生日パーティーの続きに参加したいか?」


 紅葉に選択を委ねることにしました。楓だけであれば断られそうな雰囲気でしたが、紅葉は『来たい』と言ってくれると彩音は安心しています。


 紅葉は楓の袖をクイクイっと引っ張りました。


「ん?……どうした?」


 楓は、紅葉の口の近くに耳を寄せました。紅葉の表情に元気がないことが気になって、彩音はドキドキしてしまいます。


「あ、あぁ……、そうか、そうだな。」


 紅葉の返事を聞き終えた楓は申し訳なさそうに浩太郎の方を見ました。


「……スイマセン。せっかくのお誘いですが、やっぱり俺たちはお断りさせてもらいます。」


「んっ?……そうなのか?」


 浩太郎も楓の返事を聞いて残念そうな様子でした。悠花と澪も同じタイミングで『えっ!?』と声が漏れてしまっています。

お読みいただき、ありがとうございます。

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