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#023

「……あら?……そちらは他の学校の生徒さんですか?」


 彩音と楓の動きに目聡く気付いた理事長は聞きました。

 少し嫌味っぽい言い方ではありましたが、楓は不敵な笑みを浮かべています。


「女学園の理事長なんですよね?……男の俺が女学園に通えるわけがないので、他の学校の生徒に決まってるじゃないですか。」


「なっ!?」


 楓の答え方に理事長は顔を赤くしました。

 浩太郎と知世からは小さく笑いが漏れてしまいましたが、理事長は気が付いていません。


「あっ、スイマセン。こちらの二人のことを言ってたんですね。……流石に、そんなバカな質問はしないか。」


「なっ、バカなとは何なんですか?……そちらのお二人は…………。」


 一旦は落ち着こうとして反論しましたが、そこで理事長は口籠ってしまいます。すると、後ろに控えていたスーツの若い男が理事長に耳打ちをしました。

 耳打ちされた後、ニッコリと笑顔を二人に向けてから、


「……そちらのお二人が、当学園の生徒であることは分かっています。あなたが何者なのかということを聞きたかったんです。」


「俺は、何者でもありません。……お見舞いに来ていただけで、今から帰るところです。」


「……お見舞い?」


「えっ?ご存じなかったんですか?学園を代表する生徒に何があったのか。……まぁ、知っていたら、そんなタイミングで挨拶に来るなんて無神経なことはしないか。」


 理事長は楓を睨みつけていました。感情が高ぶってしまっている理事長は周囲の状況も忘れてしまっているのかもしれません。

 楓は挑発的な態度を取り続けました。彩音はドキドキしながら見守っていましたが、不快なドキドキではありません。


「学園には数多くの生徒が在籍しているので、全てを把握することは不可能です。」


「……でも、男が女学園にいないことくらいは最低限把握しててもらわないと困りますよね。」


「そっ、そんなことは当然把握しております!……あなたが当校と関りのある生徒かを聞きたかったんです。」


「だったら、最初からそう聞いてくださいよ。……『他の学校の生徒』か、なんて聞かれても『そうです』としか答えられないじゃないですか。」


 楓の話を聞いていた悠花と澪が、コクコクと頷いていました。この二人も耳打ちされなければ、聖ユトゥルナ女学園の生徒として認識されていなかったかもしれません。もしかすると、彩音の顔も今日まで知らなかった可能性がありました。訪問する前に慌てて調べただけかもしれないのです。


 彩音たちは理事長の言葉全てを白々しく感じるようになっており、真面目に対応することは意味のないことと思い始めていました。そして、楓の言葉にムキになっている姿に理事長としての威厳は全くありません。


 敬意を持って見られなくなった理事長は、増々語気を強めて言ってしまいました。


「まぁ、あなたのように()()()()()()()()が、当校と関りがある生徒でないことは分かっていました。それでも声をかけてあげたのですから感謝してほしいくらいなのに、失礼なっ!!」


「……みすぼらしい人間って、ひどくありませんか!?」


 彩音は怒りと同時に悲しい気持ちになって、珍しく強い口調で反論しました。

 それは、悠花と澪も同じでした。体調を心配して来てくれた人を卑下する言葉を、自分たちの通う学園の理事長が口にしているのです。挑発したのは楓かもしれませんが、楓が挑発するような態度を取った理由も二人には分かっていました。

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