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#018

 彩音の狙いは単純でありながら、非常に難しい内容でした。

 楓の説明を聞いていた時、三人だけで解決策を考えることの大きな問題点を発見してしまっていたのです。


「前世でも一緒だった三人だけで相談していても、結末を変えることは難しいのではないかと思ったのです。」


「……別の目線で、物事を考える必要があるということでしょうか?」


 悠花が即座に反応しました。おそらくは同じことを考えていたのだと思います。


「前世で何がいけなかったのかを、正確に理解できていな私たちだけで話し合っても、違う結果を得ることができるのか迷っております。」


 彩音が遠回しに言っているのは、楓の存在でした。

 本当は、楓をアドバイザーに加えたいと言い出したかったのですが、直接的な表現を選ぶことができません。


「そうですわね。……楓さんのお話しを聞いていて、すごく納得させられてしまいましたから。」


 澪が彩音の求める答えに近付いてくれました。


「……ですが、少々言葉遣いが乱暴な感じで、『アンタら』なんて呼ばれたのは初めての経験で驚いてしまいました。」


 悠花的には反対意見を述べたい様子でした。


「そうですわね。……もっと酷い言われ方をされるかもしれないと思うと、少し怖いかもしれません。」


 彩音の意見が却下されそうな雰囲気が漂い始めます。それでも、彩音が一押しすれば二人は認めてくれるのですが、強く推すことを躊躇ってしまいます。


「た、確かに、そうかもしれませんが……、物知りなご様子でしたし、私たちにも分かり易いように説明してくださったので……。で、すが、お二人のご意見の通りだとも思いますし……。」


 珍しく歯切れの悪い彩音の口調を二人は不思議に感じています。ただ、これ以上は楓たちを待たせておくことも出来ないと判断して部屋に戻ることになりました。


「あのぅ、大変お待たせしてしまいました。」


 楓と紅葉に謝罪をして、三人は元の場所に座りました。

 そこで、楓の分として出したあったケーキが紅葉の前に置かれていることに気付きます。


――やっぱり、妹さんを溺愛しているんですわね。


 そんなことを考えて、彩音からは思わず笑みが漏れてしまいました。


「……さっきの話しなんだけど、マリー・アントワネットが本当に悪人だったのかは分からないんだ。」


 楓が、先ほどの話の続きを始めました。


「えっ?……ですが、悪役とされていた方ではなかったのですか?」


「金持ちが贅沢な暮らしをしただけでは悪役にはならない。……周りの人間が悪役になる誰かを欲しただけだ。」


「……周りの人たちが、誰かを悪役にしたかった?」


 楓はコクリと頷きました。それがフランス革命の中ではマリー・アントワネットだっただけということかもしれません。

 ただ、そうなると、前世でのソフィアが本当に悪役だったのか、悪役にされてしまっただけなのかの疑問に戻ってしまいます。


「だから、アンタらが理解出来ないことだって言って悪かった。」


 楓なりに気を使ってくれていたらしいです。

 庶民の気持ちを理解出来ないマリー・アントワネットと三人を同じにして話をしたことを謝罪してくれました。

 事実、三人にも理解できていなかったことなので謝罪は必要なかったかもしれませんが、無神経な言い方だと思っていました。


「……ありがとうございます。」


 楓をアドバイザーに加える案を却下された後でしたが、楓の気遣いに彩音は穏やかな笑顔を見せます。

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