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#127

「あのぅ、おはようございます。」


「おはようございます。渉美さんもお二人をご覧になって驚かれたんではありませんか?」


「はい。……えっと、そうですね。……驚きました。」


 実際には、あまり驚いてはいない様子でした。それよりも渉美は悠花と澪をチラチラと確認しています。

 渉美には活発な少女を演出するために『ぼくっ子』要素を与えられていましたが、渉美はしばらく使うつもりはありませんでした。


 前世との関りを考えていく上で、この3人が容姿やキャラクターを変えたりする必要は全くありませんでした。単に悠花と澪の趣味の世界になります。


 本当の狙いは彩音の髪型を変えることでしかありません。

 ソフィアが魔法学校に通っている時の髪型はハーフアップでした。髪色は違っていますが、悠花と澪は雰囲気だけでも近づけようと考えています。


「せっかくですから、彩音さんも髪型を変えてみませんか?」


 悠花が彩音に提案しました。

 この提案を聞いていた千和・沙織・渉美は心の中で『彩音さんに、それを伝えるだけで済んだのでは?』と訴えます。渉美に至っては外見に全く関係のないことでイメージチェンジを要請されてしまっていました。


「えっ?……私も、ですか?」


「はい。少し変えてみるだけでも印象は変わると思います。」


「それでしたら、悠花さんや澪さんも……。」


「私たちも探してはみたのですが、ありませんでした。私たちは以前のままで、変わっておりませんので必要ありませんわ。」


 悠花と澪が拒否する理由に、皆は『?』となります。悠花と澪はお互いの記憶にある前世の外見的な特徴と比較しましたが、現在と変わっていませんでした。



 少し悩んでいる彩音を置き去りにして、学園が終わり次第で彩音の屋敷に集合となります。それでも、彩音にとっては平和な日々が続いていました。

 理事長が学園に顔を出すこともなく、生徒会は沙織が会長として順調に運営が進んでいます。それ以外に彩音たちの障害になるような出来事もありません。


――髪型を変えたりすることを楽しめているのは、嬉しいことかもしれませんね。


 これで聖ユトゥルナ女学園から離れることになれば状況は大きく変わることになります。


――前世で私が処刑された原因は思い出せていませんが、これだけ状況が変わっていれば平気なはずですわ。


 そもそも『処刑』という事態が再現される危険性など最初から考える必要はなかったかのように毎日が過ぎ去っていきました。


「前世の記憶があったとしても、同じことが繰り返されるなんてあり得なかったのかもしれませんね。……少し深刻に考え過ぎてしまったのかしら?」


 着替えを済ませた彩音に、楓が浩太郎の用事で来ていることをタエから知らされました。

 彩音は応接室に行きましたが、そこには誰の姿もなく楓の通学鞄だけが置かれています。


「……お父様のお部屋でしょうか?」


 ソファーの上に置かれた楓の通学鞄はチャックが開いており、中が見えてしまいした。そこには分厚い本があり、


「『社会的な抹殺』……?」


 タイトルに不穏な文字が配列されており緊張しましたが、楓がこんな本を読んでいることにも驚かされました。


「あっ、帰ってたんだ。」


 突然、背後から声をかけられてしまい再び驚かされます。彩音が振り返ると、開いたままのドアから楓の姿が見えます。


「えっと……、はい。……楓さんがいらっしゃっているとお聞きしまして。」


「社長が用事があるって連絡してきたんだ。学校まで迎えが来た時は、さすがにビックリしたよ。」


 そこで楓は鞄が開いていることに気付いて、僅かに『しまった』という表情を見せました。それでも不自然に慌てた感じを出すことなく鞄を閉じます。


「あのぅ、父とはどんなお話を?」


「ん?……あぁ、よく分からないけど、これから来客があるみたいで、俺にも同席しろってことらしいんだ。」


「そう、なんですか。」


 彩音の頭の中にはタイトルの文字が残っていましたが、そのことには触れないようにして楓との会話を進めました。おそらく楓に質問しても納得のいく答えは返ってこないと考えています。

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