表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/134

#119

 そして、『セーラー服』対『ブレザー』について、悠花から説明がありました。


「初回のセーラー服組は、彩音さんと澪さんと渉美さんにしましょうか。」


 ここで千和たちは不吉な言葉に気付きます。


「……あのぅ、悠花さん?……『初回』ということは?」


「ちゃんと、セーラー服とブレザーを替えて平等にカウントしないと意味がありませんわ。」


「では、2回目もあるということですね?」


「もちろんです。」


 反論の余地は残されていませんでした。ここまでくると、真剣に取り組んでしまった方が気が楽になります。

 両方を着て比較されるということになれば、『どちらが似合っているか?』を知る機会になるかもしれません。そう考えると少し興味も湧いてきました。


 次の週末、勉強会として楓を悠花の屋敷に招待することになります。

 普段、女子校に通っているので男子の視線を意識することはありませんでしたが、自分を見られている回数を調べられることに緊張感が生れました。

         ・

         ・

         ・

「……スカート、短くありませんか?……それに、制服にしては身体のラインが出過ぎているような気がするんですが、大丈夫でしょうか?」


 楓が到着する前に集合して、着替えが済まされます。

 彩音がセーラー服を着ている姿を悠花と澪が撮影していましたが、彩音は真っ赤になっていました。


「実際の制服よりも、少しだけ女性らしさを強調して作らせております。今回は、楓さんの男性としての関心を呼び起こして、進学意欲を高めることも目的ですから。」


「……楓さんの好みを確認することが目的では?……男性としての関心って?」


「同じことですわ。」


「同じではないと思うのですが……。それに、みなさんの制服は普通に見えますよ。」


「それは、楓さんに進学してほしい気持ちを伝えるためには、彩音さんが頑張らないといけないと思うんです。そのお姿を見れば、楓さんにも伝わるはずです。」


 それぞれに着ている制服はデザインを変えてありましたが、彩音の物は少し女性らしさを強調した前衛的な物でした。


「そうですわ。そのお姿を見れば、楓さんの気持ちにも必ず変化が生れるはずです。」


 悠花と澪が必死に彩音を納得させようとしていました。

 その場で一緒に聞いている千和たちは、『無茶苦茶な理屈』であることを感じ取っています。悠花が自宅を指定したことも確信犯的であり、図書館では彩音が恥ずかしがってしまうことを予想していたからです。


「こんな彩音さんを毎日見られることが分かれば、楓さんの決心も揺らぐはずです。」


「えっ!?……私、高校にこんな格好で毎日通うことになるのですか?」


「こちらの高校に通う時は、ここまで過激な制服は刺激が強すぎます。これは今日だけの物になりますわ。」


「……実際に高校に通うことになった時に見られる制服でないと意味がないのではありませんか?」


「そんなことはありません。『思春期男子の妄想力は甘く見てはいけない』らしいので、期待させることは重要なんです。」


 千和と、渉美は少しだけ怖さを感じています。

 ただ彩音の制服姿を観察したかっただけの悠花と澪は、手段を選ぶことなく彩音を丸め込もうとしていました。この時点で、楓を高校に通わせる目的とは全く別の目的で制服を着させられていると感じていました。


 ただ、沙織は彩音の制服姿を見ていると複雑な心境になっていきます。悠花と澪が、彩音にこの制服を着せたかったのは間違いありませんが、何か別の意図も感じていました。


「彩音さんの制服は、どこの高校を参考にしてあるのですか?」


 満足気に彩音の制服姿を眺めている悠花に沙織は質問してみました。


「どこの高校でもありませんわ。……ですが、もし楓さんが彩音さんの思うような方であれば、必ず何かを感じてくれるはずなんです。」


「こちらでは少し過激かもしれませんけど、こんな感じだったと思うんです。」


 悠花と澪から返ってきた答えは、意味深です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ