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#117

――沙織さんの中にも、ビアンカさんの記憶が残っていることは分かりました。……もしかすると、これから先に何か新しい記憶が戻ってくるかもしれませんね。


 それは彩音にとって必ずしも歓迎すべきものではないかもしれません。ソフィア処刑に関してビアンカが主犯ではないと考えている根拠は、今のところ彩音の『勘』でしかないのです。


――私たちに本当の記憶が戻った時、お友達のままでいられるのでしょうか?


 現在の関係が気に入っていても、記憶の内容次第でお互いに影を落とすこともあり得ます。


「いつか、ちゃんとお話していただけますか?」


 沙織が帰る直前、彩音に聞いてきました。ちゃんと話が出来るほどに記憶が戻るかも分かりませんでしたが、


「はい。」


 彩音は沙織の目を見て、しっかりと答えます。

 前世で何が起こったのかは分かっていませんでしたが、いつか笑って話せることが出来ることを期待するしかありませんでした。

         ・

         ・

         ・


「……『男の子の思春期は、発情期と同じ』だと本で読んだことがありますわ。」


 学園で楓が高校へ行くための意欲を出させる話をしていると悠花が言いました。


「あのぅ、悠花さんは、どのような本をお読みになっているのですか?」


 千和が心配そうに悠花に質問します。沙織も渉美も、同じように心配そうに見ていましたが、悠花は自信たっぷりで彩音に話をします。


「あら、一般的な恋愛小説には必ず書いてありますよ。」


「……一般的な恋愛小説?」


「はい。ですから、楓さんにも女性に対する関心を高めてもらえれば、高校へ行きたいと思うはずです。」


「恋愛をしたくなるように……、ということですか?」


「恋愛ではありませんが、楓さんご自身が、彩音さんと同じ高校に行きたいと思わせることが重要なんです。」


「えっ!?……楓さんが私と同じ高校に行きたいと思わせる?」


 彩音は照れてしまい、少しだけ挙動がおかしくなります。

 ここに来て、新たに『恋愛』というワードが出てきてしまったことに動揺していました。オロオロしている彩音の代わりに澪が質問をします。


「あのぅ、悠花さん?……具体的に何か方法があるのですか?」


「はい。『制服』です。」


「……『制服』……、ですか?」


 その場の全員が意味が分からなくなっていました。


「はい。『制服』には不思議な魔力があるとも本に書いてありました。それに世の中には『セーラー服派』と『ブレザー派』での対立まであるそうなんです。」


 彩音と澪は一生懸命に話を聞いていましたが、千和と渉美と沙織は普段の悠花が『どんな本』から知識を得ているのか不安になっています。


「……楓さんは、どっち『派』なんでしょうか?」


「それは分かりません。……ですから、一度調べてみませんか?」


「調べる方法があるんですか?」


 彩音と澪は興味津々で悠花の話に参加していましたが、残りの三人は嫌な予感がしています。

 そして、悠花はカバンの中から一冊のカタログを取り出しました。


「私たちが実際に『セーラー服』と『ブレザー』を着てみるんです。私たち6人が『セーラー服』組と『ブレザー』組に分かれて、楓さんの視線をカウントするんです。」


 どうやら嫌な予感は当たりそうな方向で話は進んでいきました。

 悠花は楓のことを理由にしていましたが、本で読んだ情報を試してみたい気持ちがあっただけかもしれません。


「……ですが、それだと高校を決める基準が『制服』になってしまいませんか?」


 沙織が慌てて彩音に声をかけました。


「いいえ、それでも参考にはなるかもしれませんわ。」


 その言葉で彩音が関心を示してしまっていることを感じ取り、この場の全員は一旦諦めることになります。

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