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115/134

#115

「処刑される直前、ということですわね。」


「……はい。そんな感じではありました。」


「私は、私に似た方は一人だったのでしょうか?」


「えっ?……あっ、たぶん男の人が一緒だったと思います。」


「……男の人ですか……。」


 彩音の記憶にあったのは『革命の女神』であり、観衆に語りかけていた声も女の人のモノで間違いありませんでした。


――ビアンカさんが『革命の女神』である可能性も?……いいえ、それはないですわね。


 彩音が、そう考えることには何の根拠もありませんでした。声が違うこともありましたが、声が一致していないことが別人の証拠にはなりません。


――沙織さんとお話した時、私に恐怖心はありませんでした。


 漠然とした感覚だけ。それでも、彩音はその感覚を大切にしています。


「……私が見た夢の話を、真剣に聞いてくださるのですね?」


「えっ?」


「それに、夢の中で一緒に誰かいなかったかを質問するなんて、おかしくありませんか?」


「そ、そうでしょうか?……何となく、気になってしまっただけなんですが。」


 今度は沙織が彩音の目をジッと見ていました。彩音は沙織の夢の話を聞かされることに全く疑問を持っていないのです。


「……やっぱり、この夢には意味があったんですね?」


 沙織も、この夢が単なる夢だとは思っていませんでした。彩音の態度で、それが間違いないことを直感していましたが、詳細は語られませんでした。


「いえ、ただ、私に似ている方というので気になってしまっただけですわ。……夢の意味なんて、あまり深くお考えにならない方が良いかもしれませんね。」


「私には、お話しいただけないようなことなんでしょうか?」


「そんなことはありませんよ。……本当に何もありませんわ。」


 彩音が誤魔化そうとしていることは沙織も気が付いていました。

 夢の中の沙織は笑っていながらも、心の中で『本当にこれで良かったの?』と自問していました。妙にリアリティのある夢で、忘れることの出来ないものだったのです。


 しばらく二人の間に沈黙の時間が流れました。


「……それでも、私とお友達でいてくださいますか?今日は、それをお聞きしたかったんです。」


「もちろんですわ。……ずっと、お友達です。」


 沙織としては今の彩音たちとの関係性を気に入っています。

 この夢が指し示している真実が良くないことは沙織も分かっていましたが、話しておくべきことだと感じていました。その上で、友達でい続けてくれるかを確認しておきたかったのです。


 また少しの沈黙の後で、


「私も、彩音さんたちと同じ高校を受験します。」


 沙織が宣言しました。


「えっ!?……沙織さん!?」


「そうしたいんです。ご一緒させてください。」


「ですが、そんな大切なことを、この場で決めてしまっては……。」


「いいえ、この場の勢いだけではありません。もう、両親の許可をもらっております。あとは、彩音さんからの許可をいただければ問題ありませんわ。」


「そんな、私の許可なんて……。沙織さんの受験に私の許可が必要になることなんてありません。」


「では、良いのですね?」


 夢の話だったはずが急に状況が変わってしまい、彩音は困惑していました。これは予定外の展開になっていました。

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